16,039
回編集
細編集の要約なし |
細 (→両眼対応問題) |
||
79行目: | 79行目: | ||
両眼視差の正しい算出には、右目に映る像のどの部分が左目に映る像のどの部分に対応するのかを決める必要がある(両眼対応問題;<ref name=Julesz1960 /><ref name=Marr1979 />Julesz, 1960; Marr & Poggio, 1976)。私たちをとりまく世界は似た視覚特徴を数多く含むことから、これは容易な問題ではない。両目における像の間で無数に可能な局所的な対応の中から、視野全体にわたる首尾一貫した対応(大域対応)を見出し、両眼視差の分布を正しく推定することが、視覚系には求められている。この計算過程は、V1野細胞の両眼相関に対する反応のうち、偽の両眼対応を伝える反応を排除し、真に両眼対応に対する反応のみを残すことで行われる<ref name=Doi2014><pubmed>25360107</pubmed></ref><ref name=Fujita2016><pubmed>27269600</pubmed></ref>(Doi, & Fujita, 2014; Fujita, & Doi, 2016)。 | 両眼視差の正しい算出には、右目に映る像のどの部分が左目に映る像のどの部分に対応するのかを決める必要がある(両眼対応問題;<ref name=Julesz1960 /><ref name=Marr1979 />Julesz, 1960; Marr & Poggio, 1976)。私たちをとりまく世界は似た視覚特徴を数多く含むことから、これは容易な問題ではない。両目における像の間で無数に可能な局所的な対応の中から、視野全体にわたる首尾一貫した対応(大域対応)を見出し、両眼視差の分布を正しく推定することが、視覚系には求められている。この計算過程は、V1野細胞の両眼相関に対する反応のうち、偽の両眼対応を伝える反応を排除し、真に両眼対応に対する反応のみを残すことで行われる<ref name=Doi2014><pubmed>25360107</pubmed></ref><ref name=Fujita2016><pubmed>27269600</pubmed></ref>(Doi, & Fujita, 2014; Fujita, & Doi, 2016)。 | ||
この両眼相関表現から両眼対応表現への変換は、腹側視覚経路のV2野またはV4野でなされている<ref name=Tanabe2004><pubmed>15371518</pubmed></ref><ref name= | この両眼相関表現から両眼対応表現への変換は、腹側視覚経路のV2野またはV4野でなされている<ref name=Tanabe2004><pubmed>15371518</pubmed></ref><ref name=Abdolrahmaniا2016><pubmed>26843595</pubmed></ref><ref name=Chen2017><pubmed>29180437</pubmed></ref>(Tanabe, Umeda, & Fujita, 2004; Abdolrahmani, Doi, Shiozaki, & Fujita, 2016; Chen, Lu, Tanigawa, & Roe, 2017)。一方、背側視覚経路のMT野やMST野では、両眼対応問題の解決は進んでおらず、両眼相関と両眼対応の中間の表現になっている<ref name=Takemura2001><pubmed>11353039</pubmed></ref><ref name=Krug2004><pubmed>15102899</pubmed></ref><ref name=Yoshioka2021><pubmed>33625356</pubmed></ref>(Takemura, Inoue, Kawano, Quaia, & Miles, 2001; Krug, Cumming, & Parker, 2004; Yoshioka, Doi, Abdolrahmani, & Fujita, 2021)。高次視覚領野では、腹側経路のIT野でも背側経路のAIP野でも、単一細胞レベルで、両眼対応問題を解決した情報を伝える<ref name=Janssen2003><pubmed>12597865</pubmed></ref><ref name=Theys2012><pubmed>22090458</pubmed></ref>(Janssen, Vogels, Liu, & Orban, 2003; Theys, Srivastava, van Loon, Goffin, & Janssen, 2012)('''図6''')。 | ||
=== ヒトにおける両眼立体視の神経機構 === | === ヒトにおける両眼立体視の神経機構 === |