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古典的シグナル伝達経路は細胞内シグナル分子であるSMADタンパク質を介したシグナル伝達経路で、最終的に遺伝子の新規発現につながる<ref name=Derynck2003><pubmed>14534577</pubmed></ref><ref name=Konig2005><pubmed>15781474</pubmed></ref>。哺乳類ではSMADは8種類あることが知られている。これらのSMADはreceptor-regulated SMAD (R- SMAD)}{common-regulated SMAD (Co- SMAD), inhibitory SMAD (I- SMAD)の3タイプに分けられる。R- SMADはTGF-β受容体によるリン酸化を受けるSMADであり、このタイプにはSMAD 1、2、3、5あるいは8(9とも呼ばれる)が含まれる。TGF-βの受容体はセリン/スレオニンキナーゼファミリーの受容体に属するI型受容体とII型受容体のサブユニットで構成されている。Ⅰ型およびⅡ型受容体はそれぞれ二量体を形成する。TGF-βがⅡ型の受容体に結合すると、Ⅰ型受容体と会合して四量体を形成し、Ⅱ型受容体がⅠ型受容体のセリン残基をリン酸化することでⅠ型受容体が活性化し、R- SMADのリン酸化を引き起こす。TGF-βスーパーファミリータンパク質の受容体として、7種類のI型受容体と5種類のII型受容体がこれまでに同定されているが、そのうち、TGF-β RI/アクチビン様キナーゼ受容体5 (ALK 5)とアクチビン様キナーゼ受容体1 (ALK 1)がI型受容体として、TβRIIがII型受容体としてそれぞれ機能している。神経系におけるほとんどの細胞では、TGF-βはALK 5を介してシグナルを細胞内に伝達するが、ニューロンでは、ALK1を介してシグナルを細胞内に伝達することもある。Co- SMADはリン酸化されたR- SMADと複合体を形成し、R- SMADとともに核内に移行して転写制御因子として働く。Smad4はCo-SMADに分類される。また、I- SMADはR- SMADのI型受容体やCo- SMADへの結合の阻害やI型受容体のダウンレギュレーションなどを介してTGF-βシグナルの伝達を阻害する役割を持つ。I- SMADにはSMAD 6とSMAD 7が含まれる。一般に、核内に移行したR- SMADとCo- SMADの複合体はSMAD binding elements (SBEs)と呼ばれる遺伝子DNA上の塩基配列(5’-AGAC-3’)に結合して、その下流に位置する遺伝子のmRNAへの転写を促進する。 | 古典的シグナル伝達経路は細胞内シグナル分子であるSMADタンパク質を介したシグナル伝達経路で、最終的に遺伝子の新規発現につながる<ref name=Derynck2003><pubmed>14534577</pubmed></ref><ref name=Konig2005><pubmed>15781474</pubmed></ref>。哺乳類ではSMADは8種類あることが知られている。これらのSMADはreceptor-regulated SMAD (R- SMAD)}{common-regulated SMAD (Co- SMAD), inhibitory SMAD (I- SMAD)の3タイプに分けられる。R- SMADはTGF-β受容体によるリン酸化を受けるSMADであり、このタイプにはSMAD 1、2、3、5あるいは8(9とも呼ばれる)が含まれる。TGF-βの受容体はセリン/スレオニンキナーゼファミリーの受容体に属するI型受容体とII型受容体のサブユニットで構成されている。Ⅰ型およびⅡ型受容体はそれぞれ二量体を形成する。TGF-βがⅡ型の受容体に結合すると、Ⅰ型受容体と会合して四量体を形成し、Ⅱ型受容体がⅠ型受容体のセリン残基をリン酸化することでⅠ型受容体が活性化し、R- SMADのリン酸化を引き起こす。TGF-βスーパーファミリータンパク質の受容体として、7種類のI型受容体と5種類のII型受容体がこれまでに同定されているが、そのうち、TGF-β RI/アクチビン様キナーゼ受容体5 (ALK 5)とアクチビン様キナーゼ受容体1 (ALK 1)がI型受容体として、TβRIIがII型受容体としてそれぞれ機能している。神経系におけるほとんどの細胞では、TGF-βはALK 5を介してシグナルを細胞内に伝達するが、ニューロンでは、ALK1を介してシグナルを細胞内に伝達することもある。Co- SMADはリン酸化されたR- SMADと複合体を形成し、R- SMADとともに核内に移行して転写制御因子として働く。Smad4はCo-SMADに分類される。また、I- SMADはR- SMADのI型受容体やCo- SMADへの結合の阻害やI型受容体のダウンレギュレーションなどを介してTGF-βシグナルの伝達を阻害する役割を持つ。I- SMADにはSMAD 6とSMAD 7が含まれる。一般に、核内に移行したR- SMADとCo- SMADの複合体はSMAD binding elements (SBEs)と呼ばれる遺伝子DNA上の塩基配列(5’-AGAC-3’)に結合して、その下流に位置する遺伝子のmRNAへの転写を促進する。 | ||
非古典的シグナル伝達経路はSMAD非依存的シグナル伝達経路である。TGF-βはextracellular signal-regulated kinase (Erk) 1/2、c-Jun N-terminal kinase (JNK)、p38 MAPKを含むmitogen-activated protein kinases (MAPKs)、nuclear factor-kappa B (NF-κB)、Rho-like GTPases、phosphatidylinositol-3-kinase (PI3K)/AKTも活性化させる | 非古典的シグナル伝達経路はSMAD非依存的シグナル伝達経路である。TGF-βはextracellular signal-regulated kinase (Erk) 1/2、c-Jun N-terminal kinase (JNK)、p38 MAPKを含むmitogen-activated protein kinases (MAPKs)、nuclear factor-kappa B (NF-κB)、Rho-like GTPases、phosphatidylinositol-3-kinase (PI3K)/AKTも活性化させる<ref name=Mu2012><pubmed>21701805</pubmed></ref><ref name=Choi2012><pubmed>22835455</pubmed></ref><ref name=Freudlsperger2013><pubmed>22641218</pubmed></ref>。これらのシグナル伝達分子のうち、JNKとp38 MAPKはセリン/スレオニンキナーゼであるTGF-β-activated kinase1 (TAK1) 活性の経路によって活性化される。TAK1はTAK1-binding protein (TAB) 2およびUbiquitin ligase tumor necrosis factor receptor associated factor (TRAF) 6との複合体を形成することでTβRIと結合しているが、TGF-β1の受容体への結合によってTAK1はTβRIから遊離される。遊離したTAK1はTAB1と相互作用することで自己リン酸化を引き起こし、活性状態となる。活性化したTAK1はMKK3-p38やMKK4-JNKカスケードなどの下流のシグナル伝達経路を活性化することで、細胞内にTGF-βの刺激を伝達する<ref name=Mu2012><pubmed>21701805</pubmed></ref>。このように、TAK1の活性を起点とするMAPKs経路の活性化はSMAD依存経路とは異なり、TGF-β受容体であるTβRIキナーゼ活性に依存せずに生じる。TGF-βによるTAK1の活性はIκB kinase (IKK)を介してNF-κBシグナル伝達を活性化し、IκBαのリン酸化、NF-κBサブユニットp65の核移行およびリン酸化、ならびにNF-κB下流標的の活性化をもたらす<ref name=Freudlsperger2013><pubmed>22641218</pubmed></ref>。 | ||
=== 神経細胞での機能 === | === 神経細胞での機能 === | ||