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スフィンゴミエリンの代謝酵素とこれら生理活性脂質が[[うつ病]]・[[統合失調症]]や[[アルツハイマー病]]など様々な精神・神経疾患に関与することが報告されている<ref name=Choi2024><pubmed>38337058</pubmed></ref><ref name=Zhuo2022><pubmed>35739089</pubmed></ref>。 | スフィンゴミエリンの代謝酵素とこれら生理活性脂質が[[うつ病]]・[[統合失調症]]や[[アルツハイマー病]]など様々な精神・神経疾患に関与することが報告されている<ref name=Choi2024><pubmed>38337058</pubmed></ref><ref name=Zhuo2022><pubmed>35739089</pubmed></ref>。 | ||
[[ファイル:Kobayashi_Sphingomyelin_Fig1.png|thumb|'''図1. スフィンゴミエリンとホスファチジルコリンの化学構造'''<br> | |||
左から、d18:1/16:0 スフィンゴミエリン、d18:1/24:0 スフィンゴミエリン、16:0/18:1 PCの構造。赤、青、緑網掛けは、それぞれ、ホスホコリン極性頭部、スフィンゴシン、アシル鎖部分を示す。赤、青矢印は、それぞれ水素結合受容基、供与基を示す。]] | |||
== 基本骨格 == | == 基本骨格 == | ||
スフィンゴミエリンの構造は1927年にN-acyl-sphingosine-1-phosphorylcholine (ceramide-1-phosphorylcholine)であることが報告された<ref>'''Pick, L., and Bielschowsky, M. (1927).'''<br>über lipoidzellige Splenomegalie (Typus Niemann-Pick) und amaurotische Idiotie. Klin. Wschr. 6: 1631-1632. </ref> | スフィンゴミエリンの構造は1927年にN-acyl-sphingosine-1-phosphorylcholine (ceramide-1-phosphorylcholine)であることが報告された<ref>'''Pick, L., and Bielschowsky, M. (1927).'''<br>über lipoidzellige Splenomegalie (Typus Niemann-Pick) und amaurotische Idiotie. Klin. Wschr. 6: 1631-1632. </ref>。すなわち、極性頭部である[[ホスホコリン]]が、[[リン酸ジエステル結合]]によって[[セラミド]]の[[水酸基]]と縮合した構造をとる('''図1''')。セラミド部分は、長鎖塩基の[[アミド基]]に様々な鎖長の[[脂肪酸]]が[[アミド結合]]した構造([[N-アシル鎖]])をとり、長鎖塩基は鎖長C18で、4位と5位の間にトランス二重結合をもつ、スフィンゴシン(sphingosine; 1,3-dihydroxy-2-amino-4-octadecene, d18:1)であることが多い。二重結合の飽和した[[ジヒドロスフィンゴシン]]([[dihydrosphingosine]]/[[sphinganine]], d18:0)もまた少量であるが存在する。 | ||
また、天然のスフィンゴミエリンの立体配置は、<small>D</small>-erythroであり、炭素骨格2位と3位の炭素に付加したアミド基と水酸基がそれぞれ2S、3Rの配置をとる<ref name=Shapiro>'''Shapiro, D., Flowers, H.M. (1962).'''<br>Studies on Sphingolipids. VII. Synthesis and Configuration of Natural Sphingomyelins. J. Am. Chem. Soc., 84(6), 1047–50. [https://doi.org/10.1021/ja00865a036 [DOI<nowiki>]</nowiki>]</pubmed></ref>。N-アシル鎖の主要構成種は、飽和直鎖状の長鎖脂肪酸である[[パルミチン酸]]([[palmitic acid]], C16:0)、[[ステアリン酸]]([[stearic acid]], C18:0)や[[極長鎖脂肪酸]]である[[リグノセリン酸]]([[lignoceric acid]], C24:0)の他、一価不飽和の[[ネルボン酸]]([[nervonic acid]], C24:1∆15c)も一般的である<ref name=Lorent2020><pubmed>32367017</pubmed></ref><ref name=Valsecchi2007><pubmed>17093290</pubmed></ref>が、4位の炭素に水酸基が付加したものや、トランス二重結合が完全に飽和した[[ジヒドロスフィンゴミエリン]]も存在する。[[表皮]][[角化]]細胞や男性[[生殖細胞]]では、極長鎖よりも長い(C26-C36)[[超長鎖脂肪酸]]をもつものが存在する<ref name=Sandhoff2010><pubmed>20035755</pubmed></ref>。 | |||
同じ極性頭部、ホスホコリンを持つグリセロリン脂質、[[ホスファチジルコリン]](PC)と異なり、スフィンゴミエリンは水素結合供与基(2位のアミノ基と3位の水酸基)を有しており('''図1''')、分子内、分子間で水素結合ネットワークを形成しうる<ref name=Murata2022><pubmed>35791389</pubmed></ref><ref name=Slotte2016><pubmed>26656158</pubmed></ref>。この性質が以下に述べるコレステロールとの相互作用による秩序液体(liquid-ordered (Lo))ドメインの形成において重要である。 | |||
== 生合成と代謝 == | == 生合成と代謝 == | ||