22
回編集
Seiyamiyamoto (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
Seiyamiyamoto (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
||
27行目: | 27行目: | ||
=== 共通の作用機序 === | === 共通の作用機序 === | ||
Dopamine神経系は、中脳辺縁系、中脳皮質系、黒質線条体系、下垂体漏斗系の4つの回路がある。Dopamine受容体はD<sub>1</sub>からD<sub>5</sub>まで5種類のsubtypeが存在し、脳内分布も異なる。また存在する場所によっては、シナプス前部位受容体(自己受容体)やシナプス後部位受容体に分けられる。幻覚や妄想などの精神病症状は、中脳辺縁系においてdopamine神経の過活動が生じて神経終末からのdopamine放出が増加し、シナプス後部のD<sub>2</sub>受容体が過剰に刺激されて生じると推定されている。現在使用可能なすべての抗精神病薬は、程度の差はあるがシナプス後部位D<sub>2</sub>受容体に対して遮断作用を有し、中脳辺縁系のdopamineの過剰な伝達を阻害して精神病症状を緩和すると推定されている<ref name="ref2"><pubmed> 15289815 </pubmed></ref>。 前述したように''in vitro''では、抗精神病薬の臨床用量とD<sub>2</sub>受容体阻害能は正の相関を示すが、D<sub>2</sub>受容体阻害作用が強ければ強いほど抗精神病効果が高まるわけではない。抗精神病薬の用量を上げてD<sub>2</sub>受容体の阻害がある一定のレベルを超えると、臨床効果は頭打ちとなり、EPSや過鎮静などの副作用の発現頻度が増加する。 抗精神病薬がヒト脳内のD<sub>2</sub>受容体とどのような結合状態にあるかに関して、1990年代後半からPositron Emission Tomography (PET)やSingle Photon Emission Computed Tomography (SPECT)を用いた脳画像研究が盛んに行われ、患者の脳内 (''in vivo'')での挙動が視覚的に把握できるようになり、新しい知見が得られた。すなわち、抗精神病薬投与による抗精神病効果の出現には、65~70% 以上の線条体でのD<sub>2</sub>受容体の占拠率が必要であるが、80%以上占拠するとEPSの頻度が有意に増加する。したがって、治療効果を最大にしてEPSを最小限にするための至適な線条体D<sub>2</sub> 受容体の占拠率は、65~80%であることが判明した。しかし、多数のPETやSPECT研究結果を分析したStoneら <ref><pubmed> 18303092 </pubmed></ref>のメタ解析では、線条体のD<sub>2</sub>受容体阻害は治療効果よりもEPSの発現に関与し、抗精神病効果に関係するのは側頭葉皮質のD<sub>2</sub>受容体であると主張している。しかし、側頭葉皮質以外のD<sub>2</sub>受容体も抗精神病効果に関与する可能性は十分あり、今後真の標的部位を探求する脳画像研究が必要である。 | Dopamine神経系は、中脳辺縁系、中脳皮質系、黒質線条体系、下垂体漏斗系の4つの回路がある。Dopamine受容体はD<sub>1</sub>からD<sub>5</sub>まで5種類のsubtypeが存在し、脳内分布も異なる。また存在する場所によっては、シナプス前部位受容体(自己受容体)やシナプス後部位受容体に分けられる。幻覚や妄想などの精神病症状は、中脳辺縁系においてdopamine神経の過活動が生じて神経終末からのdopamine放出が増加し、シナプス後部のD<sub>2</sub>受容体が過剰に刺激されて生じると推定されている。現在使用可能なすべての抗精神病薬は、程度の差はあるがシナプス後部位D<sub>2</sub>受容体に対して遮断作用を有し、中脳辺縁系のdopamineの過剰な伝達を阻害して精神病症状を緩和すると推定されている<ref name="ref2"><pubmed> 15289815 </pubmed></ref>。 前述したように''in vitro''では、抗精神病薬の臨床用量とD<sub>2</sub>受容体阻害能は正の相関を示すが、D<sub>2</sub>受容体阻害作用が強ければ強いほど抗精神病効果が高まるわけではない。抗精神病薬の用量を上げてD<sub>2</sub>受容体の阻害がある一定のレベルを超えると、臨床効果は頭打ちとなり、EPSや過鎮静などの副作用の発現頻度が増加する。 | ||
抗精神病薬がヒト脳内のD<sub>2</sub>受容体とどのような結合状態にあるかに関して、1990年代後半からPositron Emission Tomography (PET)やSingle Photon Emission Computed Tomography (SPECT)を用いた脳画像研究が盛んに行われ、患者の脳内 (''in vivo'')での挙動が視覚的に把握できるようになり、新しい知見が得られた。すなわち、抗精神病薬投与による抗精神病効果の出現には、65~70% 以上の線条体でのD<sub>2</sub>受容体の占拠率が必要であるが、80%以上占拠するとEPSの頻度が有意に増加する。したがって、治療効果を最大にしてEPSを最小限にするための至適な線条体D<sub>2</sub> 受容体の占拠率は、65~80%であることが判明した。しかし、多数のPETやSPECT研究結果を分析したStoneら <ref><pubmed> 18303092 </pubmed></ref>のメタ解析では、線条体のD<sub>2</sub>受容体阻害は治療効果よりもEPSの発現に関与し、抗精神病効果に関係するのは側頭葉皮質のD<sub>2</sub>受容体であると主張している。しかし、側頭葉皮質以外のD<sub>2</sub>受容体も抗精神病効果に関与する可能性は十分あり、今後真の標的部位を探求する脳画像研究が必要である。 | |||
=== 第2世代抗精神病薬の薬理学的特徴 === | === 第2世代抗精神病薬の薬理学的特徴 === |
回編集