「LIMドメイン含有キナーゼ」の版間の差分

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== 疾患との関わり ==
== 疾患との関わり ==
=== 精神・神経疾患 ===
=== 精神・神経疾患 ===
 アルツハイマー病、パーキンソン病、統合失調症、自閉症スペクトラムといった、発達異常に関連があることが示唆されている<ref name=Villalonga2023><pubmed>36899941</pubmed></ref><ref name=BenZablah2021><pubmed>34440848</pubmed></ref>。これらの疾患の症状は、LIMK1の単独の機能欠損に依存するというよりも、Rho経路等のLIMK1の上流因子の異常とともにLIMK1を介したコフィリンのリン酸化レベルの調節が不全となり、アクチン動態と細胞形態・機能の異常を引き起こすことが神経機能の低下の一因として働いていると考えられる。パーキンソン病については、LIMK1とユビキチンリガーゼであるパーキンが相互作用し、お互いに働きを抑制することが示されている<ref name=Lim2007><pubmed>17512523</pubmed></ref>。しかし、LIMK1の欠損によるスパイン形成異常とパーキンソン病との関係は不明である。では、limk1遺伝子単独の半接合体欠損の家系の解析から、LIMK1が空間認知機能に関与することが報告された<ref name=Frangiskakis1996><pubmed>8689688</pubmed></ref>。その後の解析では、空間認知機能におけるLIMK1の関与を示唆する報告と否定的な報告がある<ref name=Smith2009><pubmed>19662944</pubmed></ref><ref name=Gregory2019><pubmed>31687737</pubmed></ref>。
 アルツハイマー病、パーキンソン病、統合失調症、自閉症スペクトラムといった精神・神経疾患、発達異常に関連があることが示唆されている<ref name=Villalonga2023><pubmed>36899941</pubmed></ref><ref name=BenZablah2021><pubmed>34440848</pubmed></ref>。これらの疾患の症状は、LIMK1の単独の機能欠損に依存するというよりも、Rho経路等のLIMK1の上流因子の異常とともにLIMK1を介したコフィリンのリン酸化レベルの調節が不全となり、アクチン動態と細胞形態・機能の異常を引き起こすことが神経機能の低下の一因として働いていると考えられる。パーキンソン病については、LIMK1とユビキチンリガーゼであるパーキンが相互作用し、お互いに働きを抑制することが示されている<ref name=Lim2007><pubmed>17512523</pubmed></ref>。しかし、LIMK1の欠損によるスパイン形成異常とパーキンソン病との関係は不明である。先天的な染色体欠失による発達障害であるウィリアムズ・ボーレン症候群では、limk1遺伝子単独の半接合体欠損の家系の解析から、LIMK1が空間認知機能に関与することが報告された<ref name=Frangiskakis1996><pubmed>8689688</pubmed></ref>。その後の解析では、空間認知機能におけるLIMK1の関与を示唆する報告と否定的な報告がある<ref name=Smith2009><pubmed>19662944</pubmed></ref><ref name=Gregory2019><pubmed>31687737</pubmed></ref>。
 
=== 癌 ===
=== 癌 ===
 癌細胞におけるLIMK1とLIMK2の発現の上昇は、増殖、運動能や浸潤性を亢進し、癌の悪性化に寄与することが報告されている<ref name=Villalonga2023><pubmed>36899941</pubmed></ref>。培養細胞では、LIMK1の過剰発現によってコフィリンが過剰にリン酸化されると細胞の運動性は極端に低下し増殖できなくなることから、癌細胞ではLIMKの適度な発現量の増加が運動能、増殖能の亢進に寄与しているものと考えられる。LIMK2については、乳癌などいくつかのモデルにおいて関与が示されている。LIMK2は、前述のようにAurora-Aによるリン酸化によって活性化し乳癌の悪性化に働く。また、LIMK2はTWIST1, PTEN, NKX-3.1, SPOPをリン酸化し、分解を促進して癌の悪性化に関与する<ref name=Villalonga2023><pubmed>36899941</pubmed></ref>。
 癌細胞におけるLIMK1とLIMK2の発現の上昇は、増殖、運動能や浸潤性を亢進し、癌の悪性化に寄与することが報告されている<ref name=Villalonga2023><pubmed>36899941</pubmed></ref>。培養細胞では、LIMK1の過剰発現によってコフィリンが過剰にリン酸化されると細胞の運動性は極端に低下し増殖できなくなることから、癌細胞ではLIMKの適度な発現量の増加が運動能、増殖能の亢進に寄与しているものと考えられる。LIMK2については、乳癌などいくつかのモデルにおいて関与が示されている。LIMK2は、前述のようにAurora-Aによるリン酸化によって活性化し乳癌の悪性化に働く。また、LIMK2はTWIST1, PTEN, NKX-3.1, SPOPをリン酸化し、分解を促進して癌の悪性化に関与する<ref name=Villalonga2023><pubmed>36899941</pubmed></ref>。