「LIMドメイン含有キナーゼ」の版間の差分

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=== アクチン骨格再構築における機能とRho経路による活性制御 ===
=== アクチン骨格再構築における機能とRho経路による活性制御 ===
 主な働きは、アクチン切断・脱重合因子であるコフィリンの3番目のセリン残基をリン酸化することで不活性化し、アクチン線維の切断・脱重合を抑制してアクチン骨格構造を安定化し、アクチン重合を促進することである(図1)<ref name=Arber1998><pubmed>9655397</pubmed></ref><ref name=Yang1998><pubmed>9655398</pubmed></ref>。アクチン骨格構造の動態制御は多くの細胞活動の基盤であり、LIMKは様々な細胞機能において重要な制御機能を担っている。LIMKは複数のシグナル経路で活性が制御されることが明らかにされている<ref name=Mizuno2013><pubmed>23153585</pubmed></ref><ref name=Ohashi2015><pubmed>25864508</pubmed></ref><ref name=Villalonga2023><pubmed>36899941</pubmed></ref>。最も主要な経路として、LIMKは低分子量Gタンパク質Rhoファミリーの下流で活性化される。LIMKはRhoAの下流因子であるROCK、RacとCdc42の下流因子であるPAK、Cdc42の下流因子であるMRCKαによってキナーゼドメイン内の活性化ループの508番目のスレオニン(LIMK2では505番目)がリン酸化され活性化される<ref name=Edwards1999><pubmed>10559936</pubmed></ref><ref name=Maekawa1999><pubmed>10436159</pubmed></ref><ref name=Ohashi2000><pubmed>10652353</pubmed></ref><ref name=Sumi2001><pubmed>11340065</pubmed></ref>。RhoA-ROCK経路によるLIMKの活性化は収縮性のアクトミオシンであるストレスファイバーの形成を促進し、Rac1やCdc42の下流でPAKによって活性化される場合には、細胞の辺縁で突出するひだ状のアクチン構造であるラメリポディア(葉状仮足)の形成に寄与する。このように、LIMKはRhoファミリーの下流で他のシグナルの分子群と共役して、様々なアクチン骨格構造の形成に関与する<ref name=Mizuno2013><pubmed>23153585</pubmed></ref><ref name=Ohashi2015><pubmed>25864508</pubmed></ref><ref name=Villalonga2023><pubmed>36899941</pubmed></ref>。一方、Rho経路を介さずにLIMKの活性を制御するタンパク質や、LIMKの発現や分解を制御する多くの因子が見出されている(表2)<ref name=Mizuno2013><pubmed>23153585</pubmed></ref><ref name=Ohashi2015><pubmed>25864508</pubmed></ref><ref name=Villalonga2023><pubmed>36899941</pubmed></ref><ref name=BenZablah2021><pubmed>34440848</pubmed></ref>。
 主な働きは、アクチン切断・脱重合因子であるコフィリンの3番目のセリン残基をリン酸化することで不活性化し、アクチン線維の切断・脱重合を抑制してアクチン骨格構造を安定化し、アクチン重合を促進することである(図1)<ref name=Arber1998><pubmed>9655397</pubmed></ref><ref name=Yang1998><pubmed>9655398</pubmed></ref>。アクチン骨格構造の動態制御は多くの細胞活動の基盤であり、LIMKは様々な細胞機能において重要な制御機能を担っている。LIMKは複数のシグナル経路で活性が制御されることが明らかにされている<ref name=Mizuno2013><pubmed>23153585</pubmed></ref><ref name=Ohashi2015><pubmed>25864508</pubmed></ref><ref name=Villalonga2023><pubmed>36899941</pubmed></ref>。最も主要な経路として、LIMKは低分子量Gタンパク質Rhoファミリーの下流で活性化される。LIMKはRhoAの下流因子であるROCK、RacとCdc42の下流因子であるPAK、Cdc42の下流因子であるMRCKαによってキナーゼドメイン内の活性化ループの508番目のスレオニン(LIMK2では505番目)がリン酸化され活性化される<ref name=Edwards1999><pubmed>10559936</pubmed></ref><ref name=Maekawa1999><pubmed>10436159</pubmed></ref><ref name=Ohashi2000><pubmed>10652353</pubmed></ref><ref name=Sumi2001><pubmed>11340065</pubmed></ref>。RhoA-ROCK経路によるLIMKの活性化は収縮性のアクトミオシンであるストレスファイバーの形成を促進し、Rac1やCdc42の下流でPAKによって活性化される場合には、細胞の辺縁で突出するひだ状のアクチン構造であるラメリポディア(葉状仮足)の形成に寄与する。このように、LIMKはRhoファミリーの下流で他のシグナルの分子群と共役して、様々なアクチン骨格構造の形成に関与する<ref name=Mizuno2013><pubmed>23153585</pubmed></ref><ref name=Ohashi2015><pubmed>25864508</pubmed></ref><ref name=Villalonga2023><pubmed>36899941</pubmed></ref>。一方、Rho経路を介さずにLIMKの活性を制御するタンパク質や、LIMKの発現や分解を制御する多くの因子が見出されている(表2)<ref name=Mizuno2013><pubmed>23153585</pubmed></ref><ref name=Ohashi2015><pubmed>25864508</pubmed></ref><ref name=Villalonga2023><pubmed>36899941</pubmed></ref><ref name=BenZablah2021><pubmed>34440848</pubmed></ref>。
{| class="wikitable"
|+表2. LIMKの制御因子
! 活性化因子 !! 作用 !! 機能
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| rowspan="2"|Aurora A || リン酸化 (LIMK1: Ser-307, Thr-508) || 紡錘体形成
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| リン酸化 (LIMK2: Ser-283, Thr-494, Thr-505)|| 乳癌細胞の悪性化(キナーゼ活性の活性化、ユビキチン化の阻害による分解の抑制)
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| CaMKII || リン酸化 (LIMK1: Thr-508) || 皮質神経細胞の神経突起伸展
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| CaMKIV || リン酸化 (LIMK1: Thr-508) || Ca2+シグナルによる神経突起形成
|-
| MAPKAPK2(MK2) || リン酸化 (LIMK1: Ser-323) || 血管内皮細胞の移動、管腔形成
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| PAK || リン酸化 (LIMK1: Thr-508) || アクチン重合の促進、葉状仮足形成促進
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| MRCKα || リン酸化 (LIMK1: Thr-508) <br>リン酸化 (LIMK2: Thr-505)|| 未解析
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| Protein kinase A (PKA) || リン酸化 (LIMK1: Ser-323, Ser-596) || 線維芽細胞の移動
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| ROCK || リン酸化 (LIMK1: Thr-508)<br>リン酸化 (LIMK2: Thr-505)  || アクチン重合の促進、ストレスファイバー形成促進
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| BMPRII || 結合 (LIMK1) || 神経細胞の樹状突起形成
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| p57<sup>Kip2</sup> || 結合 (LIMK1) || ストレスファイバー形成促進、細胞移動の抑制
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| Caspase 3 || 限定分解 (LIMK1: Asp-240) || アポトーシスの進行
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! 不活性化因子 !! 作用 !! 機能
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| Slingshot1 || 脱リン酸化 (LIMK1: Thr-508) || アクチン重合促進に対するフィードバック阻害
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| β-Arrestin || 結合による活性抑制 (LIMK1) || ラメリポディア形成の促進
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| BMPRII || 結合による活性抑制 (LIMK1) || アクチン重合の抑制
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| LATS1 || 結合による活性抑制 (LIMK1) || 収縮環の収縮の抑制
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| Nischarin || 結合による活性抑制 (LIMK1) || 細胞運動の抑制
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| Par3 || 結合による活性抑制 (LIMK2) || タイトジャンクション形成の促進
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| p57Kip2 || 結合による核内移行 (LIMK1) || アクチン重合の抑制
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| Parkin || ユビキチン化(分解の促進) (LIMK1) || アクチン重合の抑制
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| RNF6 || ユビキチン化(分解の促進) (LIMK1) || 海馬神経細胞の軸索伸展の調節
|-
| miR-134 || 翻訳の抑制 (LIMK1) || 神経樹状突起スパインの発達
|}
注)LIMK2に対して解析されていないものを含む。


=== 神経細胞における機能 ===
=== 神経細胞における機能 ===

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