17,548
回編集
細編集の要約なし |
細 (→構造) |
||
| 8行目: | 8行目: | ||
== 構造 == | == 構造 == | ||
ERMタンパク質はN末端およびC末端領域で高いアミノ酸配列相同性を示す。N末端には約300アミノ酸残基から構成されるFERMドメインをもち、3つのサブドメイン (F1, F2, F3) からなる<ref name=Edwards2001><pubmed>11401550</pubmed></ref><ref name=Smith2003><pubmed>12429733</pubmed></ref> [6][7]。FERMドメインは、膜タンパク質<ref name=Kawaguchi2017><pubmed>28381792</pubmed></ref>[8]や足場タンパク質<ref name=Reczek1997><pubmed>9314537</pubmed></ref><ref name=Takeda2003><pubmed>14712354</pubmed></ref>[9][10]、Rho-GTPase調節に関わるタンパク質<ref name=Takahashi1997><pubmed>9287351</pubmed></ref><ref name=Takahashi1998><pubmed>9681826</pubmed></ref> [11][12] や、膜リン脂質に含まれるホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸 (PIP2) <ref name=Niggli1995><pubmed>7498535</pubmed></ref><ref name=Barret2000><pubmed>11086008</pubmed></ref>[13][14] などと結合する。一方、Ezrin, Radixin, Moesin | ERMタンパク質はN末端およびC末端領域で高いアミノ酸配列相同性を示す。N末端には約300アミノ酸残基から構成されるFERMドメインをもち、3つのサブドメイン (F1, F2, F3) からなる<ref name=Edwards2001><pubmed>11401550</pubmed></ref><ref name=Smith2003><pubmed>12429733</pubmed></ref> [6][7]。FERMドメインは、膜タンパク質<ref name=Kawaguchi2017><pubmed>28381792</pubmed></ref>[8]や足場タンパク質<ref name=Reczek1997><pubmed>9314537</pubmed></ref><ref name=Takeda2003><pubmed>14712354</pubmed></ref>[9][10]、Rho-GTPase調節に関わるタンパク質<ref name=Takahashi1997><pubmed>9287351</pubmed></ref><ref name=Takahashi1998><pubmed>9681826</pubmed></ref>[11][12] や、膜リン脂質に含まれるホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸 (PIP2) <ref name=Niggli1995><pubmed>7498535</pubmed></ref><ref name=Barret2000><pubmed>11086008</pubmed></ref>[13][14] などと結合する。一方、Ezrin, Radixin, Moesin のC末端領域では、特に34アミノ酸残基がファミリー間で高度に保存されており、アクチン細胞骨格と結合する。Merlinではこの部分での相同性が低い<ref name=Turunen1994><pubmed>8089177</pubmed></ref>[15]。これらN末端とC末端のドメインはαヘリックス構造によって接続されている<ref name=Kawaguchi2022><pubmed>35328667</pubmed></ref> [16] (図1)。 | ||
ERMタンパク質はおもにC末端ドメインのリン酸化によって活性が制御される。脱リン酸化状態では、N末端のFERMドメインとC末端ドメインとが相互作用し、C末端ドメインに存在するアクチン結合部位がマスクされ、アクチン線維と結合できない「閉じた」不活性型となる[8]。FERMドメインにPIP2が結合し<ref name=Barret2000 /> [14]、続いてC末端ドメインに存在するトレオニン (セリン) 残基 (マウスEzrinのThr567, RadixinのThr564, MoesinのThr558、MerlinのSer518) がLymphocyte-Oriented Kinase (LOK) やPKC、STE20様プロテインキナーゼ (SLK)、Rhoキナーゼによってリン酸化されることでFERMドメインとC末端ドメインの間の結合が解離し、「開かれた」活性型構造となる<ref name=Kawaguchi2017 /><ref name=Hirao1996><pubmed>8858161</pubmed></ref><ref name=Viswanatha2012><pubmed>23209304</pubmed></ref> <ref name=Zaman2021><pubmed>33836044</pubmed></ref>[8][17][18][19] (図2)。後述するように、ERMタンパク質には、これ以外にも多数のリン酸化部位が存在し、リン酸化を受けてシグナル伝達などにかかわる。 | ERMタンパク質はおもにC末端ドメインのリン酸化によって活性が制御される。脱リン酸化状態では、N末端のFERMドメインとC末端ドメインとが相互作用し、C末端ドメインに存在するアクチン結合部位がマスクされ、アクチン線維と結合できない「閉じた」不活性型となる[8]。FERMドメインにPIP2が結合し<ref name=Barret2000 /> [14]、続いてC末端ドメインに存在するトレオニン (セリン) 残基 (マウスEzrinのThr567, RadixinのThr564, MoesinのThr558、MerlinのSer518) がLymphocyte-Oriented Kinase (LOK) やPKC、STE20様プロテインキナーゼ (SLK)、Rhoキナーゼによってリン酸化されることでFERMドメインとC末端ドメインの間の結合が解離し、「開かれた」活性型構造となる<ref name=Kawaguchi2017 /><ref name=Hirao1996><pubmed>8858161</pubmed></ref><ref name=Viswanatha2012><pubmed>23209304</pubmed></ref> <ref name=Zaman2021><pubmed>33836044</pubmed></ref>[8][17][18][19] (図2)。後述するように、ERMタンパク質には、これ以外にも多数のリン酸化部位が存在し、リン酸化を受けてシグナル伝達などにかかわる。 | ||
<ref name=Reczek1997b><pubmed>9314537</pubmed></ref> | |||
== 発現分布 == | == 発現分布 == | ||