「ERMタンパク質」の版間の差分

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 また、Ezrinは、足場タンパク質を介して膜輸送体や受容体と間接的に複合体を形成する。足場タンパク質である Na+/H+交換輸送体制御因子 (NHERF) 1および2は、2つのPDZ (PSD-95、Discs-large、ZO-1) ドメインをもつ一方、C末端でERMタンパク質のFERMドメインに結合する<ref name=Reczek1997 ./><ref name=Takeda2003 /> [9][10]。NHERF1のPDZドメインは、クロライドチャネルである嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子 (CFTR)、Na+/H+交換輸送体3 (NHE3) 、Na+/リン酸共輸送体2a (Npt2a)、グルタミン酸輸送体GLASTなどの膜輸送体のほか、β2アドレナリン受容体(β2AR)のC末端に存在する PDZ 結合モチーフと結合する。その結果、膜輸送体や受容体がアクチン細胞骨格に結合して細胞膜で安定に発現する<ref name=Hatano2013 /><ref name=Short1998><pubmed>9677412</pubmed></ref><ref name=Lamprecht1998><pubmed>9792717</pubmed></ref><ref name=Lee2007><pubmed>17048262</pubmed></ref><ref name=Kawaguchi2022b><pubmed>35132996</pubmed></ref>[23][46][47][48][49] (図2)。
 また、Ezrinは、足場タンパク質を介して膜輸送体や受容体と間接的に複合体を形成する。足場タンパク質である Na+/H+交換輸送体制御因子 (NHERF) 1および2は、2つのPDZ (PSD-95、Discs-large、ZO-1) ドメインをもつ一方、C末端でERMタンパク質のFERMドメインに結合する<ref name=Reczek1997 ./><ref name=Takeda2003 /> [9][10]。NHERF1のPDZドメインは、クロライドチャネルである嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子 (CFTR)、Na+/H+交換輸送体3 (NHE3) 、Na+/リン酸共輸送体2a (Npt2a)、グルタミン酸輸送体GLASTなどの膜輸送体のほか、β2アドレナリン受容体(β2AR)のC末端に存在する PDZ 結合モチーフと結合する。その結果、膜輸送体や受容体がアクチン細胞骨格に結合して細胞膜で安定に発現する<ref name=Hatano2013 /><ref name=Short1998><pubmed>9677412</pubmed></ref><ref name=Lamprecht1998><pubmed>9792717</pubmed></ref><ref name=Lee2007><pubmed>17048262</pubmed></ref><ref name=Kawaguchi2022b><pubmed>35132996</pubmed></ref>[23][46][47][48][49] (図2)。


==== Rho-GTPaseの調節 ====
=== Rho-GTPaseの調節 ===
 Ezrinは、細胞骨格のダイナミクスを制御するRho-GTPaseの上流および下流のエフェクターとして機能する<ref name=Ivetic2004><pubmed>15147559</pubmed></ref>[50]。Rho-GTPaseは皮質アクチンの再構築を誘導し、フィロポディア、ラメリポディアといった細胞の形態変化や、遊走などの細胞運動を引き起こす。EzrinはRho関連タンパク質などに結合してRho-GTPase活性を制御する一方、Rhoキナーゼによるリン酸化によって活性化される。
 Ezrinは、細胞骨格のダイナミクスを制御するRho-GTPaseの上流および下流のエフェクターとして機能する<ref name=Ivetic2004><pubmed>15147559</pubmed></ref>[50]。Rho-GTPaseは皮質アクチンの再構築を誘導し、フィロポディア、ラメリポディアといった細胞の形態変化や、遊走などの細胞運動を引き起こす。EzrinはRho関連タンパク質などに結合してRho-GTPase活性を制御する一方、Rhoキナーゼによるリン酸化によって活性化される。
 Ezrinは胃壁細胞の管腔側膜に発現する。胃壁細胞をヒスタミン処理すると、cAMP依存性プロテインキナーゼ (PKA) によってEzrinのN末端側のSer66がリン酸化を受ける。この際にEzrinはARF6 GTPaseおよびARF GTPase活性化タンパク質であるACAP4と結合し、胃酸分泌細胞内のプロトンポンプを含む細管小胞と管腔側膜との融合を促して酸分泌を開始する<ref name=Ding2010><pubmed>20360010</pubmed></ref> [51]。実際にEzrinをノックダウンしたマウスでは、細管小胞と管腔側膜との融合はおこらず、胃酸の分泌が傷害される<ref name=Tamura2005><pubmed>15809309</pubmed></ref>  [52]。
 Ezrinは胃壁細胞の管腔側膜に発現する。胃壁細胞をヒスタミン処理すると、cAMP依存性プロテインキナーゼ (PKA) によってEzrinのN末端側のSer66がリン酸化を受ける。この際にEzrinはARF6 GTPaseおよびARF GTPase活性化タンパク質であるACAP4と結合し、胃酸分泌細胞内のプロトンポンプを含む細管小胞と管腔側膜との融合を促して酸分泌を開始する<ref name=Ding2010><pubmed>20360010</pubmed></ref> [51]。実際にEzrinをノックダウンしたマウスでは、細管小胞と管腔側膜との融合はおこらず、胃酸の分泌が傷害される<ref name=Tamura2005><pubmed>15809309</pubmed></ref>  [52]。

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