17,548
回編集
細 (→生合成) |
|||
| 53行目: | 53行目: | ||
=== NMDA受容体リガンド === | === NMDA受容体リガンド === | ||
==== GluN1/GluN2型NMDA受容体 ==== | ==== GluN1/GluN2型NMDA受容体 ==== | ||
GluN1/GluN2A~ GluN2D型NMDA受容体においては、<small>D</small>-セリンがGluN1サブユニットのグリシン調節部位に結合し(図2:GLY)、同時にGluN2サブユニットにグルタミン酸が結合することによって(図2:GLU)初めてNMDA受容体チャネルが開口することから、<small>D</small>-セリンはNMDA受容体のコアゴニストであることが、in vitro<ref name=Henneberger2010 /><ref name=Matsui1995 /><ref name=Mothet2008><pubmed>10781100</pubmed></ref> [22,27,38]およびin vivo[25,39]の実験系で示されている。グリシンもNMDA受容体のコアゴニストとして機能するが、大脳新皮質、海馬などの前脳部では、 | GluN1/GluN2A~ GluN2D型NMDA受容体においては、<small>D</small>-セリンがGluN1サブユニットのグリシン調節部位に結合し(図2:GLY)、同時にGluN2サブユニットにグルタミン酸が結合することによって(図2:GLU)初めてNMDA受容体チャネルが開口することから、<small>D</small>-セリンはNMDA受容体のコアゴニストであることが、in vitro<ref name=Henneberger2010 /><ref name=Matsui1995 /><ref name=Mothet2008><pubmed>10781100</pubmed></ref> [22,27,38]およびin vivo[25,39]の実験系で示されている。グリシンもNMDA受容体のコアゴニストとして機能するが、大脳新皮質、海馬などの前脳部では、 | ||
セリンラセマーゼを欠損し<small>D</small>-セリンが著明に減少しているマウスの海馬では、NMDA受容体刺激による、 | #D-アミノ酸酸化酵素<ref name=Henneberger2010 /><ref name=Mothet2008 /> [22,38] | ||
#セリンラセマーゼ欠損<ref name=Ishiwata2015><pubmed>25782690</pubmed></ref> [39] | |||
#GABAA受容体遮断<ref name=Umino2017 /> [25] | |||
等の方法で細胞外<small>D</small>-セリンを選択的に除去または減少させると、グリシン濃度が正常であってもNMDA受容体機能が低下することより、<small>D</small>-セリンが内在性コアゴニストと考えられている。<small>D</small>-セリンの代謝過程(「代謝」の項)の特徴が古典的な神経伝達物質と大きく異なるのは、神経伝達物質がニューロンの電気活動に即応して急速に細胞外に放出され、速やかに除去されるのに対し、<small>D</small>-セリンはシナプス間隙において一定レベルの濃度が維持されることでコアゴニストとして機能する点にある。 | |||
セリンラセマーゼを欠損し<small>D</small>-セリンが著明に減少しているマウスの海馬では、NMDA受容体刺激による、 | |||
#興奮性シナプス後電流(EPSC)、 | |||
#シナプスの可塑性と関係する長期増強(LTP) | |||
#興奮性毒性による神経傷害(過剰刺激時)等が抑制される<ref name=Basu2009><pubmed>19065142</pubmed></ref> <ref name=Labrie2009><pubmed>19483194</pubmed></ref> <ref name=Inoue2008><pubmed>19118183</pubmed></ref> [11,13, 40] | |||
<small>D</small>-セリンの欠損マウスでは、記憶、学習、注意、遂行機能等の認知機能が障害される<ref name=Basu2009><pubmed>19065142</pubmed></ref> <ref name=Labrie2009><pubmed>19483194</pubmed></ref> [11,13]。 | |||
グリシンと<small>D</small>-セリンのNMDA受容体に対する生理的役割の違いについての結論は得られていないが、電気生理学的な研究から、<small>D</small>-セリンはシナプスのNMDA受容体に、グリシンはシナプス外NMDA受容体に作用することが示唆されている<ref name=Papouin2012><pubmed>22863013</pubmed></ref> [41]。 | グリシンと<small>D</small>-セリンのNMDA受容体に対する生理的役割の違いについての結論は得られていないが、電気生理学的な研究から、<small>D</small>-セリンはシナプスのNMDA受容体に、グリシンはシナプス外NMDA受容体に作用することが示唆されている<ref name=Papouin2012><pubmed>22863013</pubmed></ref> [41]。 | ||