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D-セリン
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 <small>D</small>-セリンは、in vivo[[脳内微小透析法]]([[microdialysis]])で自由運動下の[[齧歯類]]の脳組織から回収した透析液中に検出され<ref name=Hashimoto1995b><pubmed>7644027</pubmed></ref>、細胞外に放出されていると考えられている。[[前頭前野]]および線条体における細胞外液中濃度は6-7 µM程度で、[[神経伝達物質]]の[[ドーパミン]]と比較すると、前者では約20,000倍、後者では約500倍程度高い。成熟した齧歯類の脳における細胞外液中濃度の部位差は、組織中濃度と相関し前脳部で高く小脳で低い<ref name=Hashimoto1995b />。
 <small>D</small>-セリンは、in vivo[[脳内微小透析法]]([[microdialysis]])で自由運動下の[[齧歯類]]の脳組織から回収した透析液中に検出され<ref name=Hashimoto1995b><pubmed>7644027</pubmed></ref>、細胞外に放出されていると考えられている。[[前頭前野]]および線条体における細胞外液中濃度は6-7 µM程度で、[[神経伝達物質]]の[[ドーパミン]]と比較すると、前者では約20,000倍、後者では約500倍程度高い。成熟した齧歯類の脳における細胞外液中濃度の部位差は、組織中濃度と相関し前脳部で高く小脳で低い<ref name=Hashimoto1995b />。


 細胞外<small>D</small>-セリンの放出の分子細胞機構については結論が得られていないが、神経活動に応じた[[シナプス小胞]]の開口によって放出される神経伝達物質とは異なると推測されている。すなわち、in vivoの実験系では、細胞外液中<small>D</small>-セリン濃度は、[[脱分極]]刺激により低下し、神経伝導遮断や細胞外[[カルシウム]]の除去を行っても減少しない<ref name=Hashimoto1995b />。さらに、in vitroの条件下ではシナプス小胞に含まれる物質の放出阻害薬の影響を受けない<ref name=Kartvelishvily2006 />。これらに対して、グリアの活動を抑制する薬剤で減少する<ref name=Kanematsu2006><pubmed>16736231</pubmed></ref><ref name=Henneberger2010><pubmed>20075918</pubmed></ref>。これらの所見は、細胞外の<small>D</small>-セリンの放出にはニューロンおよびグリアの双方の活動が影響することを示唆しているが、放出細胞は未同定である。
 細胞外<small>D</small>-セリンの放出の分子細胞機構については結論が得られていないが、神経活動に応じた[[シナプス小胞]]の開口によって放出される神経伝達物質とは異なると推測されている。すなわち、in vivoの実験系では、細胞外液中<small>D</small>-セリン濃度は、[[脱分極]]刺激により低下し、神経伝導遮断や細胞外[[カルシウム]]の除去を行っても減少しない<ref name=Hashimoto1995b />。さらに、in vitroの条件下では<small>D</small>-セリンのシナプス小胞に含まれる物質の放出阻害薬の影響を受けない<ref name=Kartvelishvily2006 />。これらに対して、グリアの活動を抑制する薬剤で減少する<ref name=Kanematsu2006><pubmed>16736231</pubmed></ref><ref name=Henneberger2010><pubmed>20075918</pubmed></ref>。これらの所見は、細胞外の<small>D</small>-セリンの放出にはニューロンおよびグリアの双方の活動が影響することを示唆しているが、放出細胞は未同定である。


 細胞外液中の<small>D</small>-セリン濃度の調節については、[[AMPA型グルタミン酸受容体]]<ref name=Ishiwata2008><pubmed>23298512</pubmed></ref>、[[P2X受容体#P2X7受容体|P2X7プリン受容体]]―[[パネキシン]]複合体<ref name=Pan2015><pubmed>25630251</pubmed></ref>、[[GABAA受容体|GABA<sub>A</sub>受容体]]<ref name=Umino2017><pubmed>28824371</pubmed></ref>等の関与が報告されている。
 細胞外液中の<small>D</small>-セリン濃度の調節については、[[AMPA型グルタミン酸受容体]]<ref name=Ishiwata2008><pubmed>23298512</pubmed></ref>、[[P2X7プリン受容体]]―[[パネキシン]]複合体<ref name=Pan2015><pubmed>25630251</pubmed></ref>、[[GABAA受容体|GABA<sub>A</sub>受容体]]<ref name=Umino2017><pubmed>28824371</pubmed></ref>等の関与が報告されている。
[[ファイル:Nishikawa D-Ser Fig2.png|サムネイル|'''図2. GluN1/GluN2型NMDA受容体'''<br>Gly:グリシン調節部位、Glu:グルタミン酸結合部位、SR:セリンラセマーゼ、DAO:<small>D</small>-アミノ酸酸化酵素、Poly:ポリアミン結合部位、PCP:フェンサイクリジン]]
[[ファイル:Nishikawa D-Ser Fig2.png|サムネイル|'''図2. GluN1/GluN2型NMDA受容体'''<br>Gly:グリシン調節部位、Glu:グルタミン酸結合部位、SR:セリンラセマーゼ、DAO:<small>D</small>-アミノ酸酸化酵素、Poly:ポリアミン結合部位、PCP:フェンサイクリジン]]
=== 受容体結合 ===
=== 受容体結合 ===
 グルタミン酸受容体のうち、NMDA受容体([[GluN1]]/[[GluN2]]型('''図2''')およびGluN1/[[GluN3]]型)に結合する<ref name=Danysz1998><pubmed>9860805</pubmed></ref><ref name=Matsui1995><pubmed>7790891</pubmed></ref><ref name=Chatterton2002><pubmed>11823786</pubmed></ref>、また[[δ受容体]][[GluD1]]および[[GluD2]]にも結合する<ref name=Naur2007><pubmed>17715062</pubmed></ref>(生理機能参照)。
 グルタミン酸受容体のうち、NMDA受容体([[GluN1]]/[[GluN2]]型('''図2''')およびGluN1/[[GluN3]]型)に結合する<ref name=Danysz1998><pubmed>9860805</pubmed></ref><ref name=Matsui1995><pubmed>7790891</pubmed></ref><ref name=Chatterton2002><pubmed>11823786</pubmed></ref>、また[[δ受容体]][[GluD1]]および[[GluD2]]にも結合する<ref name=Naur2007><pubmed>17715062</pubmed></ref>(生理機能参照)。