「アデノシン」の版間の差分

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== 受容体 ==
== 受容体 ==
 アデノシンは、A1、A2A、A2B、A3の4種類のGタンパク質共役型受容体を介して作用を発揮する。それぞれの受容体は異なる組織分布とシグナル伝達機構を持ち、多様な生理作用を担っている。
 アデノシンは、A<sub>1</sub>、A<sub>2A</sub>、A<sub>2B</sub>、A<sub>3</sub>の4種類のGタンパク質共役型受容体を介して作用を発揮する。それぞれの受容体は異なる組織分布とシグナル伝達機構を持ち、多様な生理作用を担っている。


 ''詳細は[[P1受容体]]を参照''
 ''詳細は[[P1受容体]]を参照''
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=== 睡眠・覚醒の調節 ===
=== 睡眠・覚醒の調節 ===
 アデノシンは睡眠覚醒の制御においても重要な役割を果たす。覚醒状態が持続すると、特に前脳基底部において細胞外アデノシン濃度が上昇する<ref name=PorkkaHeiskanen1997><pubmed>9157887</pubmed></ref><ref name=Peng2020><pubmed>32883833</pubmed></ref> [14][15]。睡眠物質としてのアデノシンの供給源は明確ではないが、神経やアストロサイトの活動により細胞外アデノシンが増加する<ref name=Roy2024><pubmed>38688901</pubmed></ref> [16]。また、アデノシンはプロスタグランジンD2による睡眠誘導経路の下流でも機能する<ref name=Mizoguchi2001><pubmed>11562489</pubmed></ref><ref name=Satoh1996><pubmed>8650205</pubmed></ref> [17][18]。アデノシンはA1受容体もしくはA2A受容体を介して睡眠を促進する<ref name=Satoh1996><pubmed>8650205</pubmed></ref><ref name=Oishi2008><pubmed>19066225</pubmed></ref> [18][19]。特に、側坐核に局在するA2A受容体は、モチベーションによる睡眠覚醒調節やカフェインによる覚醒亢進において重要な役割を担うと考えられている<ref name=Roy2024><pubmed>38688901</pubmed></ref><ref name=Oishi2017><pubmed>28963505</pubmed></ref><ref name=Lazarus2011><pubmed>21734299</pubmed></ref> [16][20][21]。
 アデノシンは睡眠覚醒の制御においても重要な役割を果たす。覚醒状態が持続すると、特に前脳基底部において細胞外アデノシン濃度が上昇する<ref name=PorkkaHeiskanen1997><pubmed>9157887</pubmed></ref><ref name=Peng2020><pubmed>32883833</pubmed></ref> [14][15]。睡眠物質としてのアデノシンの供給源は明確ではないが、神経やアストロサイトの活動により細胞外アデノシンが増加する<ref name=Roy2024><pubmed>38688901</pubmed></ref> [16]。また、アデノシンはプロスタグランジンD<sub>2</sub>による睡眠誘導経路の下流でも機能する<ref name=Mizoguchi2001><pubmed>11562489</pubmed></ref><ref name=Satoh1996><pubmed>8650205</pubmed></ref> [17][18]。アデノシンはA<sub>1</sub>受容体もしくはA<sub>2A</sub>受容体を介して睡眠を促進する<ref name=Satoh1996><pubmed>8650205</pubmed></ref><ref name=Oishi2008><pubmed>19066225</pubmed></ref> [18][19]。特に、側坐核に局在するA<sub>2A</sub>受容体は、モチベーションによる睡眠覚醒調節やカフェインによる覚醒亢進において重要な役割を担うと考えられている<ref name=Roy2024><pubmed>38688901</pubmed></ref><ref name=Oishi2017><pubmed>28963505</pubmed></ref><ref name=Lazarus2011><pubmed>21734299</pubmed></ref> [16][20][21]。


=== カフェインとの関係 ===
=== カフェインとの関係 ===
 カフェインはアデノシン受容体の拮抗薬として作用し、特に側坐核のA2A受容体に競合的に結合することで、アデノシンの睡眠促進作用を阻害し、一時的な覚醒効果をもたらす<ref name=Lazarus2011><pubmed>21734299</pubmed></ref><ref name=Fredholm1979>'''Fredholm, B.B. (1979).'''<br>Are methylxanthine effects due to antagonism of endogenous adenosine? Trends in pharmacological sciences (Regular ed.) 1 (1), 129-132. https://doi.org/10.1016/0165-6147(79)90046-4</ref><ref name=Huang2005><pubmed>15965471</pubmed></ref> [21][22][23]。このため、カフェインは日常的に覚醒促進や集中力向上を目的として摂取されている。
 カフェインはアデノシン受容体の拮抗薬として作用し、特に側坐核のA<sub>2A</sub>受容体に競合的に結合することで、アデノシンの睡眠促進作用を阻害し、一時的な覚醒効果をもたらす<ref name=Lazarus2011><pubmed>21734299</pubmed></ref><ref name=Fredholm1979>'''Fredholm, B.B. (1979).'''<br>Are methylxanthine effects due to antagonism of endogenous adenosine? Trends in pharmacological sciences (Regular ed.) 1 (1), 129-132. https://doi.org/10.1016/0165-6147(79)90046-4</ref><ref name=Huang2005><pubmed>15965471</pubmed></ref> [21][22][23]。このため、カフェインは日常的に覚醒促進や集中力向上を目的として摂取されている。


 また、カフェイン摂取がパーキンソン病の罹患リスクを低下させるという疫学的報告もあり<ref name=Ross2000><pubmed>10819950</pubmed></ref><ref name=Ascherio2001><pubmed>11456310</pubmed></ref><ref name=Ascherio2004><pubmed>15522854</pubmed></ref><ref name=Hu2007><pubmed>17712848</pubmed></ref> [24][25][26][27]、これを背景にA2A受容体拮抗薬「イストラデフィリン」が開発された。同薬は、協和キリン株式会社により製品化され、2013年に「ノウリアスト」として承認・実用化されている<ref name=Saki2013><pubmed>23812646</pubmed></ref> [28]。
 また、カフェイン摂取がパーキンソン病の罹患リスクを低下させるという疫学的報告もあり<ref name=Ross2000><pubmed>10819950</pubmed></ref><ref name=Ascherio2001><pubmed>11456310</pubmed></ref><ref name=Ascherio2004><pubmed>15522854</pubmed></ref><ref name=Hu2007><pubmed>17712848</pubmed></ref> [24][25][26][27]、これを背景にA2A受容体拮抗薬「イストラデフィリン」が開発された。同薬は、協和キリン株式会社により製品化され、2013年に「ノウリアスト」として承認・実用化されている<ref name=Saki2013><pubmed>23812646</pubmed></ref> [28]。

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