「MAGUKS with Inverted domain structureファミリー」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
43行目: 43行目:
 MAGIの上皮系細胞における[[細胞間接着]]の役割は、[[糸球体上皮細胞]]([[ポドサイト]])において、良く研究されている。糸球体上皮細胞は、毛細血管壁の[[基底膜]]に[[足突起]]を伸ばし、隣接する細胞の足突起と指を組み合うようにはまり込み、隙間無く毛細血管を取り巻く。足突起同士は、タイトジャンクションによって結合しており、血液からのタンパク質の漏出を防いでいる。MAGI1は、このタイトジャンクションにおいて、PDZ4ドメインを介して接着分子の[[JAM-4]]と、またPDZ3ドメインを介して別の接着分子の[[ネフリン]]と結合する。この接着複合体は、さらに[[ZO-1]]や[[オクルーディン]]をその場にリクルートし、強固なバリア機能を実現している<ref name=Hirabayashi2003><pubmed>12773569</pubmed></ref><ref name=Ni2016><pubmed>27707879</pubmed></ref><ref name=Weng2018><pubmed>30006415</pubmed></ref>。
 MAGIの上皮系細胞における[[細胞間接着]]の役割は、[[糸球体上皮細胞]]([[ポドサイト]])において、良く研究されている。糸球体上皮細胞は、毛細血管壁の[[基底膜]]に[[足突起]]を伸ばし、隣接する細胞の足突起と指を組み合うようにはまり込み、隙間無く毛細血管を取り巻く。足突起同士は、タイトジャンクションによって結合しており、血液からのタンパク質の漏出を防いでいる。MAGI1は、このタイトジャンクションにおいて、PDZ4ドメインを介して接着分子の[[JAM-4]]と、またPDZ3ドメインを介して別の接着分子の[[ネフリン]]と結合する。この接着複合体は、さらに[[ZO-1]]や[[オクルーディン]]をその場にリクルートし、強固なバリア機能を実現している<ref name=Hirabayashi2003><pubmed>12773569</pubmed></ref><ref name=Ni2016><pubmed>27707879</pubmed></ref><ref name=Weng2018><pubmed>30006415</pubmed></ref>。


 さらにMAGI1は、WW2ドメイン、およびPDZ5ドメインを介して[[アクチン]]結合タンパク質である[[シナプトポディン]]、および[[𝛼-アクチニン-4]]とそれぞれ結合し、これらをタイトジャンクションに局在させる<ref name=Patrie2002><pubmed>12042308</pubmed></ref>。これらは糸球体上皮細胞の極性や複雑な足突起形成に働くとされている。MAGI2のノックアウト(KO)マウスは糸球体症を発症する。またMAGI1のKOマウスはそれだけでは腎機能に変化が無いが、さらにネフリンnull遺伝子座がヘテロで加わると糸球体症を発症する<ref name=Balbas2014><pubmed>25271328</pubmed></ref><ref name=Ihara2014><pubmed>25108225</pubmed></ref>。
 さらにMAGI1は、WW2ドメイン、およびPDZ5ドメインを介して[[アクチン]]結合タンパク質である[[シナプトポディン]]、および[[Αアクチニン|𝛼-アクチニン-4]]とそれぞれ結合し、これらをタイトジャンクションに局在させる<ref name=Patrie2002><pubmed>12042308</pubmed></ref>。これらは糸球体上皮細胞の極性や複雑な足突起形成に働くとされている。MAGI2のノックアウト(KO)マウスは糸球体症を発症する。またMAGI1のKOマウスはそれだけでは腎機能に変化が無いが、さらにネフリンnull遺伝子座がヘテロで加わると糸球体症を発症する<ref name=Balbas2014><pubmed>25271328</pubmed></ref><ref name=Ihara2014><pubmed>25108225</pubmed></ref>。
 
=== 癌抑制遺伝子 ===
=== 癌抑制遺伝子 ===
 様々な[[癌]]においてMAGI1-3の発現が低下していることが観察されている<ref name=Kotelevets2021><pubmed>34503076</pubmed></ref><ref name=Wörthmüller2021><pubmed>34198584</pubmed></ref>。MAGIはアドへレンスジャンクションの安定化に寄与しており、これが低下することで、癌の増殖や浸潤性が亢進される。アドヘレンスジャンクションにおいて、MAGIはそのPDZ5ドメインを介して[[E-カドヘリン]]を中心とした接着複合体の[[β-カテニン]]に結合し、細胞間接着を安定化させる。MAGIは同時にPDZ2ドメインを介してPTENをその場にリクルートし、PTENの[[脱リン酸化]]活性により[[AKT]]や[[GEF]]を不活性化し、細胞の浸潤性を抑制する<ref name=Ma2015><pubmed> 26248734 </pubmed></ref><ref name=Hu2007><pubmed>17880912</pubmed></ref><ref name=Kotelevets2005><pubmed>15629897</pubmed></ref>。このような生化学的機能は、MAGI1-3に共通して見られる。逆にMAGIの低下は、[[Wnt]]/β-カテニンシグナルを増強し、腫瘍化を促進する。
 様々な[[癌]]においてMAGI1-3の発現が低下していることが観察されている<ref name=Kotelevets2021><pubmed>34503076</pubmed></ref><ref name=Wörthmüller2021><pubmed>34198584</pubmed></ref>。MAGIはアドへレンスジャンクションの安定化に寄与しており、これが低下することで、癌の増殖や浸潤性が亢進される。アドヘレンスジャンクションにおいて、MAGIはそのPDZ5ドメインを介して[[E-カドヘリン]]を中心とした接着複合体の[[β-カテニン]]に結合し、細胞間接着を安定化させる。MAGIは同時にPDZ2ドメインを介してPTENをその場にリクルートし、PTENの[[脱リン酸化]]活性により[[AKT]]や[[GEF]]を不活性化し、細胞の浸潤性を抑制する<ref name=Ma2015><pubmed> 26248734 </pubmed></ref><ref name=Hu2007><pubmed>17880912</pubmed></ref><ref name=Kotelevets2005><pubmed>15629897</pubmed></ref>。このような生化学的機能は、MAGI1-3に共通して見られる。逆にMAGIの低下は、[[Wnt]]/β-カテニンシグナルを増強し、腫瘍化を促進する。

ナビゲーション メニュー