「Engrailed」の版間の差分

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 EH4はホメオドメインであり、DNAへの結合に関わる<ref name=Kissinger1990><pubmed>1977522</pubmed></ref>[30]。ホメオドメインを構成する3本のαヘリックスのうち第3ヘリックスと、ホメオドメインのN末端のヘリックスを構成しない数アミノ酸がDNAに結合する<ref name=Kissinger1990><pubmed>1977522</pubmed></ref>[30]。SAAB法によるとEngrailed単独で最も高い親和性を示すDNA配列はTAATTAである<ref name=Ades1994><pubmed>8049221</pubmed></ref>[31]。また、Exdとのヘテロ二量体化により、EnのDNA結合特異性が変化する<ref name=vanDijk1994><pubmed>7915200</pubmed></ref>[32]。ショウジョウバエ胚におけるChIP解析によるとEnのコンセンサス結合配列はYAATYANBである<ref name=Solano2003><pubmed>12588842</pubmed></ref>[33]。Enの結合親和性は、認識部位に隣接する、認識配列に類似した繰り返し配列を伴うDNA領域により増強される<ref name=Castellanos2020><pubmed>31992709</pubmed></ref>[34]。
 EH4はホメオドメインであり、DNAへの結合に関わる<ref name=Kissinger1990><pubmed>1977522</pubmed></ref>[30]。ホメオドメインを構成する3本のαヘリックスのうち第3ヘリックスと、ホメオドメインのN末端のヘリックスを構成しない数アミノ酸がDNAに結合する<ref name=Kissinger1990><pubmed>1977522</pubmed></ref>[30]。SAAB法によるとEngrailed単独で最も高い親和性を示すDNA配列はTAATTAである<ref name=Ades1994><pubmed>8049221</pubmed></ref>[31]。また、Exdとのヘテロ二量体化により、EnのDNA結合特異性が変化する<ref name=vanDijk1994><pubmed>7915200</pubmed></ref>[32]。ショウジョウバエ胚におけるChIP解析によるとEnのコンセンサス結合配列はYAATYANBである<ref name=Solano2003><pubmed>12588842</pubmed></ref>[33]。Enの結合親和性は、認識部位に隣接する、認識配列に類似した繰り返し配列を伴うDNA領域により増強される<ref name=Castellanos2020><pubmed>31992709</pubmed></ref>[34]。


 EH3の大部分とホメオドメインのN末端の一部を含む領域は、細胞表面のグリコサミノグリカン(GAG)との相互作用を通じて、Enの細胞外から細胞内への移行を制御する<ref name=Cardon2023><pubmed>37032404</pubmed></ref>[28]。ホメオドメインのC末端側には、核外への移行シグナル配列(NES)/細胞外への分泌シグナルと、細胞外から細胞内への移行シグナル(膜透過ペプチド配列penetratin)が存在する<ref name=Joliot1998><pubmed>9705930</pubmed></ref>[35]<ref name=Maizel1999><pubmed>10375508</pubmed></ref>[36]<ref name=Dupont2007><pubmed>17242404</pubmed></ref>[37]。細胞外から細胞内への移行はエンドサイトーシスと、エンドサイトーシスを介さない直接的移行の2つの様式により起こる<ref name=Dupont2007><pubmed>17242404</pubmed></ref>[37]<ref name=Jiao2009><pubmed>19833724</pubmed></ref>[38]。Enの細胞内外への出入りには、ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸(PIP2)とコレステロールが必要である<ref name=Amblard2020b><pubmed>32434869</pubmed></ref>[39]。EnのEH2ドメインのN末端側には高セリン領域が存在する。CK2によるこの領域のリン酸化は、EnホメオドメインのDNAへの結合を増強する一方<ref name=Bourbon1995><pubmed>7744743</pubmed></ref>[40]、Enの細胞外分泌を阻害する<ref name=Maizel2002><pubmed>12117805</pubmed></ref>[41]。また、Enは他のいくつかのホメオドメインタンパク質(Bicoid, Emx2, HoxA9, Prhなど)と同様に、真核生物翻訳開始因子4E (eIF4E)と結合するが<ref name=Nedelec2004><pubmed>15247416</pubmed></ref>[42]、それらのホメオドメインタンパク質とは異なり<ref name=Topisirovic2005>NoPMID</ref>[43]、EH1ドメインがeIF4E結合部位を兼ねることが推定されている(<ref name=Rhoads2009><pubmed>19237539</pubmed></ref>[44]、Alain Prochiantz、私信)。これとは別に、マウスのEn1のホメオドメインN末端に位置するリジンに点突然変異K313Eを導入すると、eIF4Eに結合しなくなる<ref name=Stettler2012><pubmed>22147955</pubmed></ref>[45]。Foxa2との相互作用には高セリン領域からホメオドメインにかけての領域が関与する<ref name=Foucher2003><pubmed>12642491</pubmed></ref>[46]。
 EH3の大部分とホメオドメインのN末端の一部を含む領域は、細胞表面のグリコサミノグリカン(GAG)との相互作用を通じて、Enの細胞外から細胞内への移行を制御する<ref name=Cardon2023><pubmed>37032404</pubmed></ref>[28]。ホメオドメインのC末端側には、核外への移行シグナル配列(NES)/細胞外への分泌シグナルと、細胞外から細胞内への移行シグナル(膜透過ペプチド配列penetratin)が存在する<ref name=Joliot1998><pubmed>9705930</pubmed></ref>[35]<ref name=Maizel1999><pubmed>10375508</pubmed></ref>[36]<ref name=Dupont2007><pubmed>17242404</pubmed></ref>[37]。細胞外から細胞内への移行はエンドサイトーシスと、エンドサイトーシスを介さない直接的移行の2つの様式により起こる<ref name=Dupont2007><pubmed>17242404</pubmed></ref>[37]<ref name=Jiao2009><pubmed>19833724</pubmed></ref>[38]。Enの細胞内外への出入りには、ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸(PIP2)とコレステロールが必要である<ref name=Amblard2020b><pubmed>32434869</pubmed></ref>[39]。EnのEH2ドメインのN末端側には高セリン領域が存在する。CK2によるこの領域のリン酸化は、EnホメオドメインのDNAへの結合を増強する一方<ref name=Bourbon1995><pubmed>7744743</pubmed></ref>[40]、Enの細胞外分泌を阻害する<ref name=Maizel2002><pubmed>12117805</pubmed></ref>[41]。また、Enは他のいくつかのホメオドメインタンパク質(Bicoid, Emx2, HoxA9, Prhなど)と同様に、真核生物翻訳開始因子4E (eIF4E)と結合するが<ref name=Nedelec2004><pubmed>15247416</pubmed></ref>[42]、それらのホメオドメインタンパク質とは異なり<ref name=Topisirovic2005><pubmed>16136508</pubmed></ref>[43]、EH1ドメインがeIF4E結合部位を兼ねることが推定されている(<ref name=Rhoads2009><pubmed>19237539</pubmed></ref>[44]、Alain Prochiantz、私信)。これとは別に、マウスのEn1のホメオドメインN末端に位置するリジンに点突然変異K313Eを導入すると、eIF4Eに結合しなくなる<ref name=Stettler2012><pubmed>22147955</pubmed></ref>[45]。Foxa2との相互作用には高セリン領域からホメオドメインにかけての領域が関与する<ref name=Foucher2003><pubmed>12642491</pubmed></ref>[46]。


== 発現 ==
== 発現 ==