「受容野」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
461 バイト除去 、 2012年4月15日 (日)
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
61行目: 61行目:
=== 単純型細胞の時空間受容野構造と運動方向選択性、両眼受容野構造  ===
=== 単純型細胞の時空間受容野構造と運動方向選択性、両眼受容野構造  ===


 単純型細胞の大半は物体の動きを検出するのに適した受容野構造をもつ。図5はそのような例(模式図)である(元来時空間受容野構造は空間2次元+時間1次元の合計3次元の構造であるが、紙面で表すために、細胞の最適方位に沿って空間受容野を1次元につぶし横軸にとり、時空間の2次元で表している)。現在に向かって(図では下方に向かって)、実線で表すON領域、点線が表すOFF領域ともに左へとずれている。このような受容野構造は、線分状の刺激がその軸と直交する軸上で左へ動くとき多くの入力信号を受けることができ細胞を興奮させるが、右向きに動くときや、止まっているときにはあまり信号を受け取ることはできない。一方、このようなON領域、OFF領域の動きがみられない受容野構造も存在し、そのような細胞は方向選択性をもたない。運動方向選択性のある時空間受容野は、それをもたない受容野を適当に足し合わせることで作り出せることが知られている。 [16]
 運動方向選択性をもつ単純型細胞の時空間受容野構造は、ON領域とOFF領域が伸びる方位と直交する軸のいずれかの向きに「動く」構造をもち(図5) <ref name=ref5 />。一方、このような動きがみられない受容野構造をもつ細胞も存在し、それらは運動方向選択性をもたない。運動方向選択性をもつ受容野構造は、運動方向選択性のない2つの受容野構造を線形に足し合わせることで生じることが知られている<ref name=ref16><pubmed> 3973764 </pubmed></ref>。


 第一次視覚野細胞では視覚伝導路において左右両眼からの情報がはじめて収斂するため、多くの細胞が両眼に受容野をもつ。単純型細胞の左右眼の受容野構造は、向きや空間周波数は同じであるが、位相あるいは位置が異なる場合が多い。この位相あるいは位置のずれかたは細胞により様々である。単純型細胞は、このずれにより、奥行き知覚の手がかりとなる網膜上の両眼視差(binocular disparity)に感受性をもつことが知られており、この知覚に重要な役割を担っている。[17]
 第一次視覚野細胞では視覚伝導路において左右両眼からの情報がはじめて収斂するため、多くの細胞が両眼に受容野をもつ。単純型細胞の左右眼の受容野構造は、向きや空間周波数は同じであるが、位相あるいは位置が異なる場合が多い。この位相あるいは位置のずれかたは細胞により様々である。単純型細胞は、このずれにより、奥行き知覚の手がかりとなる網膜上の両眼視差(binocular disparity)に感受性をもつことが知られており、この知覚に重要な役割を担っている <ref name=ref17><pubmed>2067576</pubmed></ref>。


=== 複雑型細胞の受容野構造  ===
=== 複雑型細胞の受容野構造  ===


 複雑型細胞も単純型細胞と同様に、サイン波刺激にたいして、強い方位、空間周波数、運動方向の選択性をもっている。しかしながら、ON、OFF領域はオーバーラッップしておりその構造からこれらの選択性を予測することはできない。また単純型細胞と異なり位相に選択性は示さない。これらの選択性は、同じ方位や、空間周波数選択性をもち、受容野位相だけが異なる単純型細胞からの入力が収斂することでできあがっていると考えられている。これを最も単純化したモデルが図6に示すエネルギーモデル(energy model)で、このモデルでは90度位相の異なる2つの単純型細胞の出力が2乗されることで複雑型細胞の受容野構造をつくっている。2つの単純型細胞のON,OFF領域が、同じ時間受容野をもつときに、複雑型細胞の同じ特性の時間受容野をもつことになり、その運動方向選択性が説明される。時空間受容野も含めたエネルギーモデルは運動エネルギーモデル(motion energy model)と呼ばれている。
 複雑型細胞も単純型細胞と同様に、サイン波刺激にたいして、強い方位、空間周波数、運動方向の選択性をもっている。しかしながら、ON、OFF領域はオーバーラッップしておりその構造からこれらの選択性を予測することはできない。また単純型細胞と異なり位相に選択性は示さない。これらの選択性は、同じ方位や、空間周波数選択性をもち、受容野位相だけが異なる単純型細胞からの入力が収斂することでできあがっていると考えられている。これを最も単純化したモデルが図6に示すエネルギーモデル(energy model)で、このモデルでは90度位相の異なる2つの単純型細胞の出力が2乗されることで複雑型細胞の受容野構造をつくっている。2つの単純型細胞のON,OFF領域が、同じ時間受容野をもつときに、複雑型細胞の同じ特性の時間受容野をもつことになり、その運動方向選択性が説明される。時空間受容野も含めたエネルギーモデルは運動エネルギーモデル(motion energy model)と呼ばれている <ref name=ref18><pubmed> 3973764 </pubmed></ref>。


 複雑型細胞の多くはまた、刺激の位置や明暗のコントラスに影響されることのなく両眼視差を検出できることが知られている。この両眼視差検出器としての望ましい性質は、似た両眼視差にチューンした単純型細胞からの出力を集めることでできると考えられている。このような複雑型細胞のモデルは両眼視差エネルギーモデル(disparity energy model)と呼ばれている。
 複雑型細胞の多くはまた、刺激の位置や明暗のコントラスに影響されることのなく両眼視差を検出できることが知られている。この両眼視差検出器としての望ましい性質は、似た両眼視差にチューンした単純型細胞からの出力を集めることでできると考えられている。このような複雑型細胞のモデルは両眼視差エネルギーモデル(disparity energy model)と呼ばれている<ref name= ref19><pubmed> 2396096 </pubmed></ref>。


=== 非古典的受容野  ===
=== 非古典的受容野  ===
197

回編集

案内メニュー