「グルココルチコイド」の版間の差分

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 GRは脳内の幅広い領域に分布するが、特に多く認められる部位は以下の通りである<ref name=ref7><pubmed>9121734</pubmed></ref>。大脳皮質のII/III層やIV層、とくに頭頂葉や側頭葉の連合野と視覚野においてはIV層、前嗅核、嗅結節の錐体細胞、梨状葉の錐体細胞、嗅内核、海馬のCA1とCA2の錐体細胞、歯状回の顆粒細胞、扁桃体の中心核、分界条床核、視床の外側背側核、後外側核、内側膝状体、外側膝状体、視床下部では内側視索前野、前腹側室周囲核、室傍核小細胞性領域、弓状核、腹内側核、背内側核、腹前乳頭体核、脳幹では台形体核、青斑核、背側縫線核、小脳の顆粒細胞層である。これらの領域では免疫組織化学法とin situ hybridization法の所見が一致している。両者の方法で分布の異なる部位は小脳プルキンエ細胞層や海馬CA3などが挙げられる。分布の異なる理由として、部位間の受容体タンパクとmRNAの合成、代謝回転の差などが類推されるが、明確な論拠は未だ示されていない。これに対し、MRは脳内のかなり限られた領域にのみ分布する。MRの存在する部位としては、海馬、特にCA1、CA2、外側中隔野、内側・中心扁桃体、大脳皮質II層、小脳、脳幹の一部の神経細胞が挙げられる。
 GRは脳内の幅広い領域に分布するが、特に多く認められる部位は以下の通りである<ref name=ref7><pubmed>9121734</pubmed></ref>。大脳皮質のII/III層やIV層、とくに頭頂葉や側頭葉の連合野と視覚野においてはIV層、前嗅核、嗅結節の錐体細胞、梨状葉の錐体細胞、嗅内核、海馬のCA1とCA2の錐体細胞、歯状回の顆粒細胞、扁桃体の中心核、分界条床核、視床の外側背側核、後外側核、内側膝状体、外側膝状体、視床下部では内側視索前野、前腹側室周囲核、室傍核小細胞性領域、弓状核、腹内側核、背内側核、腹前乳頭体核、脳幹では台形体核、青斑核、背側縫線核、小脳の顆粒細胞層である。これらの領域では免疫組織化学法とin situ hybridization法の所見が一致している。両者の方法で分布の異なる部位は小脳プルキンエ細胞層や海馬CA3などが挙げられる。分布の異なる理由として、部位間の受容体タンパクとmRNAの合成、代謝回転の差などが類推されるが、明確な論拠は未だ示されていない。これに対し、MRは脳内のかなり限られた領域にのみ分布する。MRの存在する部位としては、海馬、特にCA1、CA2、外側中隔野、内側・中心扁桃体、大脳皮質II層、小脳、脳幹の一部の神経細胞が挙げられる。


 GRおよびMRの細胞内局在に関しては、免疫組織化学法を用いた実験により、両受容体とも正常ラットでは主として核内に分布すると考えられているが、大脳皮質の錐体細胞や海馬においては、細胞質にもその分布が報告されている<ref name=ref8><pubmed>1770174</pubmed></ref>。また、両側副腎を摘出(ADX)して血中コルチコステロンを除去すると、GRの核内免疫活性が消失することが示されている<ref name=ref9><pubmed></pubmed>9151715</ref>。近年green fluorescent protein (GFP)を受容体のtag分子として用いる方法が開発され、細胞を固定・透過化することなく、生きている細胞内で受容体の局在を解析することが可能となった。その結果、培養神経細胞および非神経細胞の両者においてGRはリガンドの非存在下では主として細胞質に分布し、リガンドの添加により速やかに核内へ移行することが明らかとなった<ref name=ref10><pubmed>16514009</pubmed></ref>。
 GRおよびMRの細胞内局在に関しては、免疫組織化学法を用いた実験により、両受容体とも正常ラットでは主として核内に分布すると考えられているが、大脳皮質の錐体細胞や海馬においては、細胞質にもその分布が報告されている<ref name=ref8><pubmed>1770174</pubmed></ref>。また、両側副腎を摘出(ADX)して血中コルチコステロンを除去すると、GRの核内免疫活性が消失することが示されている<ref name=ref9><pubmed>9151715</pubmed></ref>。近年green fluorescent protein (GFP)を受容体のtag分子として用いる方法が開発され、細胞を固定・透過化することなく、生きている細胞内で受容体の局在を解析することが可能となった。その結果、培養神経細胞および非神経細胞の両者においてGRはリガンドの非存在下では主として細胞質に分布し、リガンドの添加により速やかに核内へ移行することが明らかとなった<ref name=ref10><pubmed>16514009</pubmed></ref>。


 一方、近年の研究から従来の核内での転写因子としての作用に加えて、グルココルチコイドは急性作用にも関与することが報告されており、従来のGRが膜に存在して作用するのか、新たなGタンパク共役受容体が存在するのかが議論されている。こうしたグルココルチコイドの急性作用には、エンドカンナビノイド、NMDA受容体、GABA受容体等を介した作用も報告されている<ref name=ref11><pubmed>22201787</pubmed></ref>。
 一方、近年の研究から従来の核内での転写因子としての作用に加えて、グルココルチコイドは急性作用にも関与することが報告されており、従来のGRが膜に存在して作用するのか、新たなGタンパク共役受容体が存在するのかが議論されている。こうしたグルココルチコイドの急性作用には、エンドカンナビノイド、NMDA受容体、GABA受容体等を介した作用も報告されている<ref name=ref11><pubmed>22201787</pubmed></ref>。

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