「受容野」の版間の差分

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=== 高次視覚野における受容野構造  ===
=== 高次視覚野における受容野構造  ===


 霊長類視覚系には30以上もの領域があり、これらの領野はV1野、V2野を経て側頭連合野(temporal lobe)へと至る腹側経路(ventral pathway)と頭頂連合野(parietal lobe)へと至る背側経路(dorsal pathway)の2つの経路として構成されている。多くの領野では受容野構造の詳細はわかっていないが、細胞が伝達する視覚特徴については、適切な刺激セットのなかでの細胞の適刺激を同定するという方法で数多くの知見が得られている。これらの知見および脳破壊実験等から腹側経路は主に物体形状の分析に、背側経路は空間位置情報の伝達に関与していると考えられている <ref><pubmed> 1822724 </pubmed></ref> <ref name="ref17"><pubmed> 8043270 </pubmed> </ref><ref>'''M. Mishkin, L. G. Ungerleider and K. A. Macko '''<br>Object vision and spatial vision:two cortical pathways. <br>''Trends Neurosci.'': 1983, 6; 414-417.</ref>。  
 V1以外にも霊長類視覚系には30以上もの領域があり、これらの領野はV1野、V2野を経て側頭連合野(temporal lobe)へと至る腹側経路(ventral pathway)と頭頂連合野(parietal lobe)へと至る背側経路(dorsal pathway)の2つの経路として構成されている。腹側経路は主に物体形状の分析に、背側経路は運動や空間位置情報の伝達に関与していると考えられている <ref><pubmed> 1822724 </pubmed></ref> <ref name="ref17"><pubmed> 8043270 </pubmed> </ref><ref>'''M. Mishkin, L. G. Ungerleider and K. A. Macko '''<br>Object vision and spatial vision:two cortical pathways. <br>''Trends Neurosci.'': 1983, 6; 414-417.</ref>。  


 細胞の受容野のサイズは高次の領域に向かうにつれて大きくなる。霊長類V1野で中心視野に受容野をもつ細胞の受容野は0.1~1度程度であるが、視覚経路の最終段階に位置するTE野では10度以上にもなる。ただし受容野サイズは偏心度にも依存し、中心視野では小さく、周辺視野ほど大きくなる。例えばV1野の周辺視野の受容野サイズは5度から10度程度である。またV1細胞の受容野位置は対側視野に限られるものが大部分であるが、視覚経路に沿って受容野サイズが大きくなるにつれて、同側視野も含むものが序々に増してくる。TE野では多くの細胞が同側視野を受容野に含む<ref><pubmed> 6470767 </pubmed></ref>。  
 細胞の受容野のサイズは高次の領域に向かうにつれて大きくなる。霊長類V1野で中心視野に受容野をもつ細胞の受容野は0.1~1度程度であるが、視覚経路の最終段階に位置するTE野では10度以上にもなる。ただし受容野サイズは偏心度にも依存し、中心視野では小さく、周辺視野ほど大きくなる。例えばV1野の周辺視野の受容野サイズは5度から10度程度である。またV1細胞の受容野位置は対側視野に限られるものが大部分であるが、視覚経路に沿って受容野サイズが大きくなるにつれて、同側視野も含むものが序々に増してくる。TE野では多くの細胞が同側視野を受容野に含む<ref><pubmed> 6470767 </pubmed></ref>。  


 高次の段階に向かうにつれて、複雑な刺激特徴を適刺激とするような受容野が増してくる。たとえばV2野-&gt;V4野-&gt;TEO野-&gt;TE野と向かう腹側経路では、V2野に折れ線に反応する細胞<ref><pubmed> 15056711 </pubmed></ref> 、V4野にテクスチャー、パターン、曲率や凹凸の情報を伝える細胞<ref><pubmed> 8418487 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10561421 </pubmed></ref>TEO野には物体の部分的特徴、TE野に至っては顔などの極めて複雑な特徴の情報を伝える細胞が存在する<ref><pubmed> 6470767 </pubmed></ref><ref><pubmed> 1448150 </pubmed></ref>。さらに、これらの細胞の多くは、受容野内部で刺激の位置、向き、あるいは形を定義する手がかり(明るさの違いや色の違いなど)を変えても特徴選択性を維持する<ref><pubmed> 8493538 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11160508 </pubmed></ref><ref><pubmed> 8833438 </pubmed> </ref>。  
 背側経路のV3A野やLIP野には、受容野内部での刺激応答性が視線方向によって変化する細胞が存在する。さらにPO野には受容野の位置そのものが視線に依存して変化し、受容野位置が網膜上の部位として固定されるのではなく、身体にたいする位置関係で固定された受容野をもつ細胞が現れる。さらに、運動に関連の深いMT野から入力を受けるVIP野は、体性感覚入力も受け、体の一部に受容野をもち、そこへの皮膚刺激とその場所へ向かってくる視覚刺激の両方に応答するような細胞が知られている。
 背側経路の多くの細胞は両眼に受容野をもち、両眼視差に感受性をもつ。これらは物体の奥行き位置、運動や3次元形状の表現に関与していると考えられている。
 
 腹側経路では、高次の段階に向かうにつれて、複雑な物体特徴を適刺激とするような受容野が増してくる。V2野-&gt;V4野-&gt;TEO野-&gt;TE野と向かう腹側経路では、V2野に折れ線に反応する細胞<ref><pubmed> 15056711 </pubmed></ref> 、V4野にテクスチャー、パターン、曲率や凹凸の情報を伝える細胞<ref><pubmed> 8418487 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10561421 </pubmed></ref>TEO野には物体の部分的特徴、TE野に至っては顔などの極めて複雑な特徴の情報を伝える細胞が存在する<ref><pubmed> 6470767 </pubmed></ref><ref><pubmed> 1448150 </pubmed></ref>。さらに、これらの細胞の多くは、受容野内部で刺激の位置、向き、あるいは形を定義する手がかり(明るさの違いや色の違いなど)を変えても特徴選択性を維持する<ref><pubmed> 8493538 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11160508 </pubmed></ref><ref><pubmed> 8833438 </pubmed> </ref>。 腹側経路でも、大部分の細胞は両眼に受容野をもち、両眼視差に感受性をもつことから、奥行き知覚にも関与していると考えられている。
 


== 体性感覚系の受容野  ==
== 体性感覚系の受容野  ==
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