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 リソソームは細胞内の分解装置としてだけでなく、他にも様々な機能を有している。リソソームのエキソサイト―シスは、損傷した細胞膜の修復、細胞外マトリクスの分解、骨融解などに関与する。またリソソーム膜の透過性亢進と細胞死との関連も報告されている。
 リソソームは細胞内の分解装置としてだけでなく、他にも様々な機能を有している。リソソームのエキソサイト―シスは、損傷した細胞膜の修復、細胞外マトリクスの分解、骨融解などに関与する。またリソソーム膜の透過性亢進と細胞死との関連も報告されている。


 リソソームは細胞内の栄養状態(アミノ酸など)を感知する場としても重要である。mTORC1複合体は細胞内のアミノ酸濃度を感知して、細胞成長・代謝・タンパク質合成などの様々な細胞機能を制御する重要なシグナル因子であるが、その活性化はリソソーム膜上で起こる<ref name="ref8"><pubmed> 20381137 </pubmed></ref>。mTORC1複合体は低栄養条件下では不活性型として細胞質に存在するが、細胞内のアミノ酸濃度が上昇すると、リソソーム膜上の活性型Rag複合体(GTP型RagA/B、GDP型RagC/D)と結合することでリソソームへ移行し、活性化される。Rag複合体はRagulatorと呼ばれるリソソーム膜タンパク質を含む複合体(p14、MP1、p18)を介してリソソーム膜上に恒常的に局在している<ref name="ref8">。
 リソソームは細胞内の栄養状態(アミノ酸など)を感知する場としても重要である。mTORC1複合体は細胞内のアミノ酸濃度を感知して、細胞成長・代謝・タンパク質合成などの様々な細胞機能を制御する重要なシグナル因子であるが、その活性化はリソソーム膜上で起こる<ref name="ref8"><pubmed> 20381137 </pubmed></ref>。mTORC1複合体は低栄養条件下では不活性型として細胞質に存在するが、細胞内のアミノ酸濃度が上昇すると、リソソーム膜上の活性型Rag複合体(GTP型RagA/B、GDP型RagC/D)と結合することでリソソームへ移行し、活性化される。Rag複合体はRagulatorと呼ばれるリソソーム膜タンパク質を含む複合体(p14、MP1、p18)を介してリソソーム膜上に恒常的に局在している<ref name="ref8" />。


 さらに細胞内のアミノ酸濃度を感知するセンサータンパク質の多くもリソソーム膜上に局在する。最近、ロイシルtRNA合成酵素が細胞内のロイシン濃度を感知してリソソームに移行し、Rag複合体を活性化することが報告された<ref name="ref9"><pubmed> 22424946 </pubmed></ref>。ロイシルtRNA合成酵素は、細胞内ロイシン濃度が上昇するとRag複合体と結合し、細胞質からリソソーム膜上へ移行する。さらにRagDのGAPとして機能することでRag複合体を活性型に変換し、mTORC1複合体をリソソームへ移行させると考えられている。ロイシルtRNA合成酵素は酵母でも保存されており、液胞膜上でのロイシン依存的なTOR活性化に必要である。一方、リソソーム内腔のアミノ酸がV-APTaseの構造変化を介してRag複合体やmTOR複合体の活性を制御するという報告もあり<ref name="ref10"><pubmed> 22053050 </pubmed></ref>、リソソーム自体が積極的に細胞機能を制御している可能性も示唆されている。
 さらに細胞内のアミノ酸濃度を感知するセンサータンパク質の多くもリソソーム膜上に局在する。最近、ロイシルtRNA合成酵素が細胞内のロイシン濃度を感知してリソソームに移行し、Rag複合体を活性化することが報告された<ref name="ref9"><pubmed> 22424946 </pubmed></ref>。ロイシルtRNA合成酵素は、細胞内ロイシン濃度が上昇するとRag複合体と結合し、細胞質からリソソーム膜上へ移行する。さらにRagDのGAPとして機能することでRag複合体を活性型に変換し、mTORC1複合体をリソソームへ移行させると考えられている。ロイシルtRNA合成酵素は酵母でも保存されており、液胞膜上でのロイシン依存的なTOR活性化に必要である。一方、リソソーム内腔のアミノ酸がV-APTaseの構造変化を介してRag複合体やmTOR複合体の活性を制御するという報告もあり<ref name="ref10"><pubmed> 22053050 </pubmed></ref>、リソソーム自体が積極的に細胞機能を制御している可能性も示唆されている。
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==リソソーム関連オルガネラ==
==リソソーム関連オルガネラ==


 リソソーム関連オルガネラ(Lysosome-related organelle)は、リソソームの性質の一部を保持しながらも、細胞特異的に特殊な機能を担うようになったオルガネラである<ref name="ref13"><pubmed> 10877819 </pubmed></ref>。リソソーム関連オルガネラの機能は主に生理活性物質の貯蓄、活性化、分泌である。制御性分泌を担うリソソーム関連オルガネラは分泌型リソソーム(secretory lysosome)とも呼ばれる。チェディアック・東症候群(Chédiak-Higashi syndrome)やヘルマンスキー・パドラック症候群(Hermansky-Pudlak syndrome)などの疾患では、リソソームだけでなくリソソーム関連オルガネラの一部も機能障害を来たすことが報告されている<ref name="ref13">。以下、代表的なリソソーム関連オルガネラの例を挙げる。
 リソソーム関連オルガネラ(Lysosome-related organelle)は、リソソームの性質の一部を保持しながらも、細胞特異的に特殊な機能を担うようになったオルガネラである<ref name="ref13"><pubmed> 10877819 </pubmed></ref>。リソソーム関連オルガネラの機能は主に生理活性物質の貯蓄、活性化、分泌である。制御性分泌を担うリソソーム関連オルガネラは分泌型リソソーム(secretory lysosome)とも呼ばれる。チェディアック・東症候群(Chédiak-Higashi syndrome)やヘルマンスキー・パドラック症候群(Hermansky-Pudlak syndrome)などの疾患では、リソソームだけでなくリソソーム関連オルガネラの一部も機能障害を来たすことが報告されている<ref name="ref13" />。以下、代表的なリソソーム関連オルガネラの例を挙げる。


===メラノソーム===
===メラノソーム===


 メラノソーム(Melanosome)はメラノサイト、虹彩色素上皮細胞、網膜色素上皮細胞に存在する。内腔はpH5前後に酸性化されており、加水分解酵素やLAMP-1/2などを有する<ref name="ref13">。メラノソームにはメラニン色素が蓄積されており、エキソサイト―シスによって細胞外に放出される。放出された色素は皮膚では角化細胞に取り込まれる。
 メラノソーム(Melanosome)はメラノサイト、虹彩色素上皮細胞、網膜色素上皮細胞に存在する。内腔はpH5前後に酸性化されており、加水分解酵素やLAMP-1/2などを有する<ref name="ref13" />。メラノソームにはメラニン色素が蓄積されており、エキソサイト―シスによって細胞外に放出される。放出された色素は皮膚では角化細胞に取り込まれる。


===溶菌性顆粒===
===溶菌性顆粒===
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