「リソソーム」の版間の差分

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 リソソームは1955年にド・デューブ(Christian de Duve)によって細胞分画法・生化学的手法を用いて発見された<ref name="ref1"><pubmed> 13249955 </pubmed></ref>。ド・デューブはラット肝臓へのインスリンの作用を解析する過程で、肝細胞内の加水分解酵素を含む顆粒が膜に包まれていることを偶然発見し、それらの顆粒をギリシア語の”lyso”(分解する)+”soma”(小体)を語源としてlysosomeと名付けた。さらに電子顕微鏡を用いてリソソームが実際に細胞小器官であることを1956年に報告した<ref name="ref2"><pubmed> 13357540 </pubmed></ref>。ド・デューブは「細胞の構造と機能に関する諸発見」によってクロード(Albert Claude)、パラーデ(George E. Palade)と共に1974年にノーベル医学生理学賞を受賞した。
 リソソームは1955年にド・デューブ(Christian de Duve)によって細胞分画法・生化学的手法を用いて発見された<ref name="ref1"><pubmed> 13249955 </pubmed></ref>。ド・デューブはラット肝臓へのインスリンの作用を解析する過程で、肝細胞内の加水分解酵素を含む顆粒が膜に包まれていることを偶然発見し、それらの顆粒をギリシア語の”lyso”(分解する)+”soma”(小体)を語源としてlysosomeと名付けた。さらに電子顕微鏡を用いてリソソームが実際に細胞小器官であることを1956年に報告した<ref name="ref2"><pubmed> 13357540 </pubmed></ref>。ド・デューブは「細胞の構造と機能に関する諸発見」によってクロード(Albert Claude)、パラーデ(George E. Palade)と共に1974年にノーベル医学生理学賞を受賞した。
[[Image:FigLysosome.jpg|thumb|500px|'''図 リソソームへの経路と機能'''<br>リソソームは細胞内外成分の分解機能を担い、エンドサイトーシス経路(ピノサイト―シス、ファゴサイトーシス)やオートファジー経路(マクロ、シャペロン介在性、ミクロ)を経由して運ばれてきた基質を分解する。細胞外成分、EGF・EGF受容体、病原体などはエンドサイトーシス経路でリソソームへ輸送される。サイトゾル成分や細胞内小器官などはオートファジー経路でリソソームへ輸送される。リソソーム膜上にはV-ATPaseが存在し、内腔を酸性化する。リソソーム内には各種加水分解酵素が存在し、基質をアミノ酸、脂質、糖などにまで分解する。リソソームはエキソサイト―シスされることもある。リソソーム構成タンパク質の多くは、トランスゴルジ網から生合成経路を通り、後期エンドソームに運ばれた後、リソソームに到達する。膜タンパク質の一部は、構成性分泌経路で細胞膜に出た後、エンドサイトーシス経路でリソソームに運ばれる。]]
[[Image:FigLysosome.jpg|thumb|500px|'''図 リソソームへの経路と機能'''<br>リソソームは細胞内外成分の分解機能を担い、エンドサイトーシス経路(ピノサイト―シス、ファゴサイトーシス)やオートファジー経路(マクロ、シャペロン介在性、ミクロ)から輸送されてきた基質を分解する。細胞外成分、EGF・EGF受容体、病原体などはエンドサイトーシス経路でリソソームへ輸送される。サイトゾル成分や細胞内小器官などはオートファジー経路でリソソームへ輸送される。リソソーム膜上にはV-ATPaseが存在し、内腔を酸性化する。リソソーム内には各種加水分解酵素が存在し、基質をアミノ酸、脂質、糖などにまで分解する。リソソームはエキソサイト―シスされることもある。リソソーム構成タンパク質の多くは、トランスゴルジ網から生合成経路を通り、後期エンドソームに運ばれた後、リソソームに到達する。膜タンパク質の一部は、構成性分泌経路で細胞膜に出た後、エンドサイトーシス経路でリソソームに到達する。]]


==種類と構造==
==種類と構造==
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===エンドサイトーシス経路===
===エンドサイトーシス経路===


 細胞外成分や細胞膜成分などは、エンドサイトーシスの飲作用(ピノサイト―シス)によって取り込まれ、初期エンドソーム、後期エンドソームを経て、リソソームで分解される。細胞外病原体、異物、アポトーシス細胞などは、エンドサイトーシスの食作用(ファゴサイトーシス)によってファゴソームに取り込まれ、リソソームと融合し、ファゴリソソーム内で分解される。
 エンドサイトーシスの飲作用(ピノサイト―シス)は細胞外成分や細胞膜成分を取り込み、初期エンドソーム、後期エンドソームを経由してリソソームへ輸送する。エンドサイトーシスの食作用(ファゴサイトーシス)は細胞外病原体、異物、アポトーシス細胞などをファゴソームに取り込み、リソソームへ輸送し、ファゴリソソームを形成する。


===オートファジー経路===
===オートファジー経路===


 サイトゾル成分、細胞小器官(ミトコンドリア、ペルオキシソームなど)、細胞内病原体などは、マクロオートファジーによってオートファゴソームに取り込まれ、リソソームと融合し、オートファゴリソソーム内で分解される。
 マクロオートファジーは細胞内のサイトゾル成分、細胞小器官(ミトコンドリア、ペルオキシソームなど)、細胞内病原体などを取り込み、後期エンドソーム、リソソームと融合し、オートファゴリソソームを形成する。


 シャペロン介在性オートファジーは、可溶性サイトゾルタンパク質がリソソーム膜を直接透過して内腔へ輸送される経路であり、哺乳類細胞で報告されている。この経路では、KFEQRモチーフを持つ基質タンパク質(GAPDHなど)が細胞質に局在するシャペロン(Hsc70など)によって特異的に認識され、LAMP-2A(LAMP-2のスプライシングバリアントの一つ)を介してリソソーム内腔へ輸送される。
 シャペロン介在性オートファジーは、可溶性サイトゾルタンパク質がリソソーム膜を直接透過して内腔へ輸送される経路であり、哺乳類細胞で報告されている。この経路では、KFEQRモチーフを持つ基質タンパク質(GAPDHなど)が細胞質に局在するシャペロン(Hsc70など)によって特異的に認識され、LAMP-2A(LAMP-2のスプライシングバリアントの一つ)を介してリソソーム内腔へ輸送される。
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