「血清応答因子」の版間の差分

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== 脳内発現 ==
== 脳内発現 ==


 SRFは、あらゆる組織で発現が認められている。中枢神経系においては、梨状皮質、大脳皮質、線条体、海馬、扁桃体に比較的強い発現が認められており、特に梨状皮質、海馬歯状回、CA1で強く発現する<ref name=ref30><pubmed>12234660</pubmed></ref>。一方、淡蒼球でほとんど認められず<ref name=ref30><pubmed>12234660</pubmed></ref><ref name=ref31><pubmed>9300412</pubmed></ref> 、中脳、視床下部では、弱いかほとんど認められない<ref name=ref30><pubmed>12234660</pubmed></ref><ref name=ref31><pubmed>9300412</pubmed></ref>。小脳においても顆粒細胞やプルキンエ細胞にも発現している<ref name=ref30><pubmed>12234660</pubmed></ref><ref name=ref31><pubmed>9300412</pubmed></ref>。また、発達過程に伴って発現変化し、大脳皮質、海馬歯状回とCA1においては生後28日までに発現量が上昇し、大脳皮質では成体時まで発現が維持される<ref name=ref30><pubmed>12234660</pubmed></ref>。また、末梢神経系においては、後根神経節での発現が報告されている<ref name=ref14><pubmed>18498735</pubmed></ref>。  
 SRFは、あらゆる組織で発現が認められている。中枢神経系においては、[[梨状皮質]]、[[大脳皮質]]、[[線条体]]、海馬、[[扁桃体]]に比較的強い発現が認められており、特に梨状皮質、海馬[[歯状回]]、[[CA1]]で強く発現する<ref name=ref30><pubmed>12234660</pubmed></ref>。一方、[[淡蒼球]]でほとんど認められず<ref name=ref30><pubmed>12234660</pubmed></ref><ref name=ref31><pubmed>9300412</pubmed></ref> 、[[中脳]]、[[視床下部]]では、弱いかほとんど認められない<ref name=ref30><pubmed>12234660</pubmed></ref><ref name=ref31><pubmed>9300412</pubmed></ref>。[[小脳]]においても[[顆粒細胞]]や[[プルキンエ細胞]]にも発現している<ref name=ref30><pubmed>12234660</pubmed></ref><ref name=ref31><pubmed>9300412</pubmed></ref>。また、発達過程に伴って発現変化し、大脳皮質、海馬歯状回とCA1においては生後28日までに発現量が上昇し、大脳皮質では成体時まで発現が維持される<ref name=ref30><pubmed>12234660</pubmed></ref>。また、末梢神経系においては、後根神経節での発現が報告されている<ref name=ref14><pubmed>18498735</pubmed></ref>。  


== 生理機能 ==
== 生理機能 ==
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 中枢神経系を標的としたSRFKOマウスは、これまでに少なくとも6系統が報告されている。
 中枢神経系を標的としたSRFKOマウスは、これまでに少なくとも6系統が報告されている。


 CaMKIIαプロモーターでCreレコンビナーゼを発現させ、前脳特異的にSRFをKOしたマウスが3系統あるが<ref name=ref5><pubmed>15880109</pubmed></ref><ref name=ref9><pubmed>16415869</pubmed></ref><ref name=ref10><pubmed>20123976</pubmed></ref><ref name=ref12><pubmed>16600861</pubmed></ref><ref name=ref13><pubmed>15837932</pubmed></ref>、それぞれCreレコンビナーゼの発現時期が異なるため、表現型は異なっている。周産期や出生前においてSRFをKOさせたマウス系統の解析では、脳室下帯から嗅球への細胞移動<ref name=ref13><pubmed>15837932</pubmed></ref>、海馬層形成と樹状突起形態<ref name=ref10><pubmed>20123976</pubmed></ref>、海馬における軸索ガイダンス<ref name=ref9><pubmed>16415869</pubmed></ref>への重要性が示されている。また、神経細胞におけるSRF依存性遺伝子発現が細胞非自律的なオリゴデンドロサイトの分化に重要であるとの指摘がある<ref name=ref33><pubmed>19270689</pubmed></ref>。また、生後8週目からSRFがKOされるマウス系統の解析では、海馬依存性即時記憶や長期抑圧現象への重要性が指摘されている<ref name=ref12><pubmed>16600861</pubmed></ref>。一方、生後数ヶ月でSRFがKOされるマウス系統では、脳の構造上の変化や細胞移動、致死性はなく、β-アクチンやc''-fos'', ''egr''-1, Arc遺伝子というSRF標的遺伝子の神経活動依存的発現に重要であること、それは豊富環境下(enriched environment, EE)でも認められることが示された<ref name=ref5><pubmed>15880109</pubmed></ref>。さらに長期増強現象への重要性も指摘されている<ref name=ref5><pubmed>15880109</pubmed></ref>。
 [[CaMKIIα]][[プロモーター]]で[[Creレコンビナーゼ]]を発現させ、前脳特異的にSRFをKOしたマウスが3系統あるが<ref name=ref5><pubmed>15880109</pubmed></ref><ref name=ref9><pubmed>16415869</pubmed></ref><ref name=ref10><pubmed>20123976</pubmed></ref><ref name=ref12><pubmed>16600861</pubmed></ref><ref name=ref13><pubmed>15837932</pubmed></ref>、それぞれCreレコンビナーゼの発現時期が異なるため、表現型は異なっている。[[wikidepia:JA:周産期|周産期]]や出生前においてSRFをKOさせたマウス系統の解析では、[[脳室下帯]]から[[嗅球]]への細胞移動<ref name=ref13><pubmed>15837932</pubmed></ref>、海馬層形成と樹状突起形態<ref name=ref10><pubmed>20123976</pubmed></ref>、海馬における軸索ガイダンス<ref name=ref9><pubmed>16415869</pubmed></ref>への重要性が示されている。また、神経細胞におけるSRF依存性遺伝子発現が細胞非自律的な[[オリゴデンドロサイト]]の分化に重要であるとの指摘がある<ref name=ref33><pubmed>19270689</pubmed></ref>。また、生後8週目からSRFがKOされるマウス系統の解析では、海馬依存性[[即時記憶]]や[[長期抑圧現象]]への重要性が指摘されている<ref name=ref12><pubmed>16600861</pubmed></ref>。一方、生後数ヶ月でSRFがKOされるマウス系統では、脳の構造上の変化や細胞移動、致死性はなく、β-アクチンやc''-fos'', ''egr''-1, Arc遺伝子というSRF標的遺伝子の神経活動依存的発現に重要であること、それは豊富環境下(enriched environment, EE)でも認められることが示された<ref name=ref5><pubmed>15880109</pubmed></ref>。さらに長期増強現象への重要性も指摘されている<ref name=ref5><pubmed>15880109</pubmed></ref>。


 また、シナプシンI(synapsin I)プロモーターでCreレコンビナーゼを発現させ、SRFをKOしたマウス系統もあり、CaMKIIプロモーターの系統と行動学的な違いを比較検討している<ref name=ref34><pubmed>21329726</pubmed></ref>。
 また、[[シナプシンI]](synapsin I)プロモーターでCreレコンビナーゼを発現させ、SRFをKOしたマウス系統もあり、CaMKIIプロモーターの系統と行動学的な違いを比較検討している<ref name=ref34><pubmed>21329726</pubmed></ref>。


 近年、ネスチン(nestin)プロモーターでCreレコンビナーゼを発現させた神経前駆細胞特異的SRFKOマウスとneuronal helix-loop-helix protein-1 (NEX) プロモーターを用いた大脳皮質と海馬のグルタミン酸作動性神経特異的SRFKOマウスが報告され、皮質軸索投射へのSRFの関与が指摘された<ref name=ref35><pubmed>22090492</pubmed></ref>。
 近年、[[ネスチン]](nestin)プロモーターでCreレコンビナーゼを発現させた[[神経前駆細胞]]特異的SRFKOマウスと[[neuronal helix-loop-helix protein-1]] (NEX) プロモーターを用いた大脳皮質と海馬の[[グルタミン酸]]作動性神経特異的SRFKOマウスが報告され、皮質軸索投射へのSRFの関与が指摘された<ref name=ref35><pubmed>22090492</pubmed></ref>。


 末梢神経系においては、Wnt1プロモーターでCreレコンビナーゼを発現させた後根神経節特異的SRFKOマウスの解析で軸索投射への重要性が指摘された<ref name=ref14><pubmed>18498735</pubmed></ref>。  
 末梢神経系においては、[[Wnt1]]プロモーターでCreレコンビナーゼを発現させた後根神経節特異的SRFKOマウスの解析で軸索投射への重要性が指摘された<ref name=ref14><pubmed>18498735</pubmed></ref>。  


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==

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