「空間的注意」の版間の差分

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空間的注意の測定方法<br>  
空間的注意の測定方法<br>  


[[Image:Posner.jpg|thumb|right|300px|図1. Posner課題]]<br>&nbsp;注意をある位置や色などに向けると、その属性をもつ対象の検出や弁別が素早く、正確になる。19世紀、Helmholtzは電気スパークによる一瞬の光で、暗い部屋の壁に掲げた文字列の一部を読ませる実験を行い、前もって注意を向けていた位置に書かれた文字は読めるが、他の文字はまったく判読できないことを示した<ref>von Helmholtz, H.<br>Helmholtz's treatise on physiological optics<br>Dover(New York):1962</ref>。こうした注意の効果を定量化する方法として、現在もっとも有名で広く利用されているのがPosner課題(<ref>Posner, M.I.<br>Orienting of attention.<br>Q J Exp Psychol 32, 3-25:1980</ref>、図1)である。試行中、被験者はスクリーン中央の固視点を見続けるように指示され、左右に提示されたボックスのいずれかの中心にターゲットが現れると、できるだけ素早く手元のボタンを押すことになっている(単純反応時間課題)。ターゲットに先立って、その位置を知らせる手がかりが固視点に呈示される。左または右向きの矢印が現れた場合、80%の試行ではそれと同じ側にターゲットを提示し(一致条件)、20%の試行では反対側に提示する(不一致条件)。矢印の代わりにプラス記号が現れた試行では、50%の確率で右または左にターゲットを提示し、対照条件(注意を向けない)とする。このとき、一致条件では対照条件に比べて反応時間が短縮し、不一致条件では対照条件に比べて反応時間が延長する。一般に、注意を向けたことによる反応時間の短縮をbenefitと呼び、注意を他に向けたことによる反応時間の延長をcostと呼び、costの方がbenefitよりも大きいことが多い。画面中央の矢印に従って注意を配分するように、被験者が意図的に制御する注意誘導を、内発的(endogenous)注意と呼ぶ。内発的注意は、目的指向性(goal-directed,goal-oriented)、またはトップダウン(top-down)注意とよばれることもある。<br>&nbsp;また、同様の結果は、ターゲットの位置を前もって知らせる手がかりとして左右のボックスのいずれかをフラッシュさせても得ることができる。フラッシュのように顕著な刺激に対し強制的に注意が向けられることを、外発的(exogenous)注意と呼び、刺激駆動性(stimulus-driven)またはボトムアップ(bottom-up)注意とよばれることもある。しかし、ターゲットがフラッシュ直後に呈示されず、数百ミリ秒後が経過した後に呈示された場合は結果が異なってくる。つまり、手がかりが出た位置に現れたターゲットへの反応時間は、その他の位置に出た場合比べて却って遅くなる。これは復帰抑制(inhibition of return; IOR)とよばれる現象で、視野内のまだ注意していない位置に注意を向けやすくする働きがあると考えられている<ref>Posner, M.I., and Cohen, Y. <br>Components of visual orienting. In Attention and performance X. pp. 531-556<br>Erlbaum(London):1984</ref><ref name="ref2"><pubmed> 3405288</pubmed></ref>。  
[[Image:Posner.jpg|thumb|right|300px|図1. Posner課題]]<br>&nbsp;注意をある位置や色などに向けると、その属性をもつ対象の検出や弁別が素早く、正確になる。19世紀、Helmholtzは電気スパークによる一瞬の光で、暗い部屋の壁に掲げた文字列の一部を読ませる実験を行い、前もって注意を向けていた位置に書かれた文字は読めるが、他の文字はまったく判読できないことを示した<ref>von Helmholtz, H.<br>Helmholtz's treatise on physiological optics<br>Dover(New York):1962</ref>。こうした注意の効果を定量化する方法として、現在もっとも有名で広く利用されているのがPosner課題(<ref>Posner, M.I.<br>Orienting of attention.<br>Q J Exp Psychol 32, 3-25:1980</ref>、図1)である。試行中、被験者はスクリーン中央の固視点を見続けるように指示され、左右に提示されたボックスのいずれかの中心にターゲットが現れると、できるだけ素早く手元のボタンを押すことになっている(単純反応時間課題)。ターゲットに先立って、その位置を知らせる手がかりが固視点に呈示される。左または右向きの矢印が現れた場合、80%の試行ではそれと同じ側にターゲットを提示し(一致条件)、20%の試行では反対側に提示する(不一致条件)。矢印の代わりにプラス記号が現れた試行では、50%の確率で右または左にターゲットを提示し、対照条件(注意を向けない)とする。このとき、一致条件では対照条件に比べて[[反応時間]]が短縮し、不一致条件では対照条件に比べて反応時間が延長する。一般に、注意を向けたことによる反応時間の短縮をbenefitと呼び、注意を他に向けたことによる反応時間の延長をcostと呼び、costの方がbenefitよりも大きいことが多い。画面中央の矢印に従って注意を配分するように、被験者が意図的に制御する注意誘導を、内発的(endogenous)注意と呼ぶ。内発的注意は、目的指向性(goal-directed,goal-oriented)、またはトップダウン(top-down)注意とよばれることもある。<br>&nbsp;また、同様の結果は、ターゲットの位置を前もって知らせる手がかりとして左右のボックスのいずれかをフラッシュさせても得ることができる。フラッシュのように顕著な刺激に対し強制的に注意が向けられることを、外発的(exogenous)注意と呼び、刺激駆動性(stimulus-driven)またはボトムアップ(bottom-up)注意とよばれることもある。しかし、ターゲットがフラッシュ直後に呈示されず、数百ミリ秒後が経過した後に呈示された場合は結果が異なってくる。つまり、手がかりが出た位置に現れたターゲットへの反応時間は、その他の位置に出た場合比べて却って遅くなる。これは復帰抑制(inhibition of return; IOR)とよばれる現象で、視野内のまだ注意していない位置に注意を向けやすくする働きがあると考えられている<ref>Posner, M.I., and Cohen, Y. <br>Components of visual orienting. In Attention and performance X. pp. 531-556<br>Erlbaum(London):1984</ref><ref name="ref2"><pubmed> 3405288</pubmed></ref>。  


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