「フグ毒」の版間の差分

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英:tetrodotoxin、英略語:TTX、独:Tetrodotoxin、仏:tétrodotoxine
英:tetrodotoxin、英略語:TTX、独:Tetrodotoxin、仏:tétrodotoxine


 フグ毒tetrodotoxin (TTX) は1960年の初めに、[[wikipedia:jp:神経|神経]]、[[wikipedia:jp:筋肉|筋肉]]の興奮をつかさどる[[電位依存性ナトリウムチャネル]](Na<sup>+</sup>チャネル)を低濃度でしかも選択的に阻害することが証明されて以来、[[チャネル]]の実験に欠かせないchemical toolとして世界中で広く使われてきている。TTXがきっかけとなって他の毒物や治療薬のチャネルに対する作用機構の研究が重要視され、channelopathyは医学生物学のホットなトピックになった。現在ではTTX抵抗性Na<sup>+</sup>チャネルの存在も知られている。TTXは[[wikipedia:jp:フグ|フグ]]が作るのではなく、海産の[[wikipedia:jp:細菌|細菌]]によって作られ、[[wikipedia:jp:食物連鎖|食物連鎖]]を経てフグの主に[[wikipedia:jp:卵巣|卵巣]]や[[wikipedia:jp:肝臓|肝臓]]に蓄えられる。フグの種類によってはほとんどTTXを持たないものもある。この様な機構を反映して、TTXはフグ以外の[[wikipedia:jp:海産動物|海産動物]]、例外的には[[wikipedia:jp:陸生動物|陸生動物]]にも見出されている。TTXをもった動物はTTX に対する[[wikipedia:jp:LD50|LD50]]が非常に高い。フグ中毒は主に神経、筋肉系の麻痺によるものであるが、[[wikipedia:jp:解毒剤|解毒剤]]は見つかっておらず、[[wikipedia:jp:人工呼吸|人工呼吸]]が対症療法的に有効である。臨床へのTTXの利用もいろいろ試みられているが、まだ試験段階である。
 フグ毒tetrodotoxin (TTX) は1960年の初めに、[[wikipedia:jp:神経|神経]]、[[wikipedia:jp:筋肉|筋肉]]の興奮をつかさどる[[電位依存性ナトリウムチャネル]](Na<sup>+</sup>チャネル)を低濃度でしかも選択的に阻害することが証明されて以来、[[チャネル]]の実験に欠かせないchemical toolとして世界中で広く使われてきている。TTXがきっかけとなって他の毒物や治療薬のチャネルに対する作用機構の研究が重要視され、channelopathyは医学生物学のホットなトピックになった。現在ではTTX抵抗性Na<sup>+</sup>チャネルの存在も知られている。TTXは[[wikipedia:jp:フグ|フグ]]が作るのではなく、海産の[[wikipedia:jp:細菌|細菌]]によって作られ、[[wikipedia:jp:食物連鎖|食物連鎖]]を経てフグの主に[[wikipedia:jp:卵巣|卵巣]]や[[wikipedia:jp:肝臓|肝臓]]に蓄えられる。フグの種類によってはほとんどTTXを持たないものもある。この様な機構を反映して、TTXはフグ以外の[[wikipedia:jp:海産動物|海産動物]]、例外的には[[wikipedia:jp:陸生動物|陸生動物]]にも見出されている。TTXをもった動物はTTX に対する[[wikipedia:jp:LD50|LD50]]が非常に高い。フグ中毒は主に神経、筋肉系の麻痺によるものであるが、[[wikipedia:jp:解毒剤|解毒剤]]は見つかっておらず、[[wikipedia:jp:人工呼吸|人工呼吸]]が対症療法的に有効である。臨床へのTTXの利用もいろいろ試みられているが、まだ試験段階である。


== 歴史的背景  ==
== 歴史的背景  ==
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 フグには強力な毒があるということは5000年も前から[[wikipedia:jp:エジプト|エジプト]]その他で知られていた。特に日本ではフグは最もおいしい[[wikipedia:jp:魚|魚]]として長い間賞玩されてきた。しかしその毒のために中毒死が絶えず、薬理学的な対象として広く研究されてきたとはいえ、以前は[[wikipedia:Kymograph|キモグラフ]]を使うような非常に古典的な手法によっていたので、[[wikipedia:jp:神経毒|神経毒]]であるこことは知られていても詳しい作用機構はわからなかった。1960年の初めにTTXの[[wikipedia:jp:化学構造|化学構造]]が決定され、また神経、筋肉などで興奮をつかさどるNa<sup>+</sup>チャネルを低濃度でしかも選択的に阻害することが証明されて以来、実験室でのchemical tool として世界中で広く使われ、一躍神経生理、薬理のチャンピオンとしてデビューするようになった。これをきっかけにして、いろいろな化合物がchemical tool として使われるれる様になり、またさまざまな治療薬のチャネルに対する影響の研究が盛んになり、channelopathy が重要な医学生物学の分野として発展するようになった。
 フグには強力な毒があるということは5000年も前から[[wikipedia:jp:エジプト|エジプト]]その他で知られていた。特に日本ではフグは最もおいしい[[wikipedia:jp:魚|魚]]として長い間賞玩されてきた。しかしその毒のために中毒死が絶えず、薬理学的な対象として広く研究されてきたとはいえ、以前は[[wikipedia:Kymograph|キモグラフ]]を使うような非常に古典的な手法によっていたので、[[wikipedia:jp:神経毒|神経毒]]であるこことは知られていても詳しい作用機構はわからなかった。1960年の初めにTTXの[[wikipedia:jp:化学構造|化学構造]]が決定され、また神経、筋肉などで興奮をつかさどるNa<sup>+</sup>チャネルを低濃度でしかも選択的に阻害することが証明されて以来、実験室でのchemical tool として世界中で広く使われ、一躍神経生理、薬理のチャンピオンとしてデビューするようになった。これをきっかけにして、いろいろな化合物がchemical tool として使われるれる様になり、またさまざまな治療薬のチャネルに対する影響の研究が盛んになり、channelopathy が重要な医学生物学の分野として発展するようになった。
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== 参考文献  ==
== 参考文献  ==
<references />
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Hwang, D.-F. and Noguchi, T. (2007). Tetrodoxin poisoning. Advances in Food and Nutrition Research 52, 141-236.  
Hwang, D.-F. and Noguchi, T. (2007). Tetrodoxin poisoning. Advances in Food and Nutrition Research 52, 141-236.  

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