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(ページの作成:「フグ毒 英:tetrodotoxin、英略語:TTX、独:Tetrodotoxin、仏:tétrodotoxine  フグ毒tetrodotoxin (TTX) は1960年の初めに、神経、筋肉の興奮...」)
 
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イオンチャネルに対する作用機構
イオンチャネルに対する作用機構
 TTXが神経や筋肉を麻痺させることは、特に日本では長い間薬理学者の間で知られていたが、1960年になって細胞内微小電極法をカエルの筋肉に適用した実験から、TTXがNa+チャネルを選択的に阻害して麻痺をもたらすという仮説が発表された(Narahashi et al., American Journal of Physiology, 198, 934-938, 1960)。この仮説は4年後にエビの巨大神経線維に電位固定法を適用した実験で確実に証明された(Narahashi et al., Journal of General Physiology, 47, 965-974, 1964)。当時としては毒物をchemical tool として使うということは全く考えられなかった上、また特定のチャネル特にNa+チャネルを選択的に阻害する化合物はまったく知られていなかったので、TTXは一躍ユニークなchemical tool として世界中で広く使われるようになった。
 TTXが神経や筋肉を麻痺させることは、特に日本では長い間薬理学者の間で知られていたが、1960年になって細胞内微小電極法をカエルの筋肉に適用した実験から、TTXがNa+チャネルを選択的に阻害して麻痺をもたらすという仮説が発表された(Narahashi et al., American Journal of Physiology, 198, 934-938, 1960)。この仮説は4年後にエビの巨大神経線維に電位固定法を適用した実験で確実に証明された(Narahashi et al., Journal of General Physiology, 47, 965-974, 1964)。当時としては毒物をchemical tool として使うということは全く考えられなかった上、また特定のチャネル特にNa+チャネルを選択的に阻害する化合物はまったく知られていなかったので、TTXは一躍ユニークなchemical tool として世界中で広く使われるようになった。
 TTXのNa+ チャネル阻害作用はいろいろな面でユニークである。まず第一にTTXは細胞の外から当てたときにのみ有効で、細胞内に直接与えても阻害しない。大部分の非選択的Na+チャネル阻害剤は、外から有効であっても実際は膜を通過してチャネルの内側から働いていることが知られている(たとえば局所麻酔薬)。第二にTTX 分子のグアニジウム基 はNa+チャネルを通れる大きさを持っているが、他の部分は大きすぎて通れない。つまりTTX がチャネルを外から塞いで阻害する訳である。第三にTTXがチャネルを阻害しても、チャネルのゲート機構は刺激によって正常に開閉する。このようなユニークな機構を反映して、個々のNa+チャネルはTTXによってall-or-noneにまた濃度依存的に阻害される。
 TTXのNa+ チャネル阻害作用はいろいろな面でユニークである。まず第一にTTXは細胞の外から与えたときにのみ有効で、細胞内に直接与えても阻害しない。大部分の非選択的Na+チャネル阻害剤は、外から有効であっても実際は膜を通過してチャネルの内側から働いていることが知られている(たとえば局所麻酔薬)。第二にTTX 分子のグアニジウム基 はNa+チャネルを通れる大きさを持っているが、他の部分は大きすぎて通れない。つまりTTX がチャネルを外から塞いで阻害する訳である。第三にTTXがチャネルを阻害しても、チャネルのゲート機構は刺激によって正常に開閉する。このようなユニークな機構を反映して、個々のNa+チャネルはTTXによってall-or-noneに阻害される。
 Na+チャネルは260 kDaのα サブユニットとβ1 (36 kDa) あよびβ2 (33 kDa) サブユニットから構成されている。α サブユニット が主要な部分で、それだけでもチャネルとして働くがkineticsがおそい。β サブユニットを加えるとkineticsが正常に戻る。各々のα サブユニットは4つの相同ドメイン(I-IV)を含み、各々のドメインは6つの膜貫通領域 (S1-S6)からなっている。各ドメインのS5とS6 をつなぐループにTTX が結合してNa+チャネルを阻害すると考えられている。
 Na+チャネルは260 kDaのα サブユニットとβ1 (36 kDa) あよびβ2 (33 kDa) サブユニットから構成されている。α サブユニット が主要な部分で、それだけでもチャネルとして働くがkineticsがおそい。β サブユニットを加えるとkineticsが正常に戻る。各々のα サブユニットは4つの相同ドメイン(I-IV)を含み、各々のドメインは6つの膜貫通領域 (S1-S6)からなっている。各ドメインのS5とS6 をつなぐループにTTX が結合してNa+チャネルを阻害すると考えられている。
Chemical toolとしての利用
Chemical toolとしての利用
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フグ毒の分布
フグ毒の分布
 TTXはフグに含まれていることは昔から知られていたが、現在では種々な動物(主に海産動物)に発見されている。たとえばヒモムシLineus fuscoviridis、軟体動物Charonia lampus sauliae、Nassarius (Zeuxis) siquijorensis、Niotha lineate、イモリTaricha spp.およびカエルAtelopus spp.などである。TTXはフグによって生産されるのではなく、海産の細菌Vibrio alginolyticusおよびその他のVibrio spp.によって作られ、食物連鎖を経てフグに達することが証明された。ゆえにフグをそれらの細菌のない条件下で養殖すれば、TTXを持たないフグが出来るはずである。実際にこれが可能であることが証明された。TTXは主にフグの肝臓や卵巣に含まれているが、フグの種類によっては皮膚や腸にも含まれている。これらの臓器に含まれているTTXの量はフグの種類によって非常に異なり、ほとんどTTXを持たないフグも知られている。
 TTXはフグに含まれていることは昔から知られていたが、現在では種々な動物(主に海産動物)に発見されている。たとえばヒモムシLineus fuscoviridis、軟体動物Charonia lampus sauliae、Nassarius (Zeuxis) siquijorensis、Niotha lineate、イモリTaricha spp.およびカエルAtelopus spp.などである。TTXはフグによって生産されるのではなく、海産の細菌Vibrio alginolyticusおよびその他のVibrio spp.によって作られ、食物連鎖を経てフグに達することが証明された。ゆえにフグをそれらの細菌のない条件下で養殖すれば、TTXを持たないフグが出来るはずである。実際にこれが可能であることが証明された。TTXは主にフグの肝臓や卵巣に含まれているが、フグの種類によっては皮膚や腸にも含まれている。これらの臓器に含まれているTTXの量はフグの種類によって非常に異なり、ほとんどTTXを持たないフグも知られている。
 TTXを持っている動物はTTXに対して著しい抵抗性を持っている。たとえばオウギガニ、ある種の熱帯魚、および日本産サンショウウオのTTXに対するLD50はそれぞれ1000、>300、>10000 mouse unit (MU) と測定されている。1 MUは体重20 gのマウスを30分で殺すTTXの量である。TTXを持った3種類のフグでのTTX LD50 は700-750、500-550、300-500 MU であった。一方、TTXを持たない4種類のフグでは、LD50は15-18、19-20、13-15、0.9-1.3 と測定された。
 TTXを持っている動物はTTXに対して著しい抵抗性を持っている。たとえばオウギガニ、ある種の熱帯魚、およびある種のサンショウウオのTTXに対するLD50はそれぞれ1000、>300、>10000 mouse unit (MU) と測定されている。1 MUは体重20 gのマウスを30分で殺すTTXの量である。TTXを持った3種類のフグでのTTX LD50 は700-750、500-550、300-500 MU であった。一方、TTXを持たない4種類のフグでは、LD50は15-18、19-20、13-15、0.9-1.3 と測定された。
TTXによる中毒
TTXによる中毒
 TTX LD50はマウスでは10 ng/g、ヒトでは2 mg/human といわれている。中毒の第1期は神経筋で起こり、唇や舌の痺れ、流涎や腹痛からなる。第2期には痺れが広がり手足(extremity)の麻痺が起こる。第3期には麻痺が神経筋肉系および呼吸器系にひろがって、構音障害(dysarthria)、筋線維性攣縮、低血圧 (hypotension)、血管運動ブロック、不整脈 を伴う。第4期の末期には呼吸麻痺、極度の低血圧、痙攣、脊髄反射の消失を経て死にいたる。
 TTX LD50はマウスでは10 ng/g、ヒトでは2 mg/human といわれている。中毒の第1期は神経筋で起こり、唇や舌の痺れ、流涎や腹痛からなる。第2期には痺れが広がり手足(extremity)の麻痺が起こる。第3期には麻痺が神経筋肉系および呼吸器系にひろがって、構音障害(dysarthria)、筋線維性攣縮、低血圧 (hypotension)、血管運動ブロック、不整脈 を伴う。第4期の末期には呼吸麻痺、極度の低血圧、痙攣、脊髄反射の消失を経て死にいたる。
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臨床への応用
臨床への応用
 TTXを臨床に応用すべく、いろいろ試みられているが、まだ試験段階で臨床に使われるまでには至っていない。大部分の試みはTTXの強力かつ選択的なNa+チャネル阻害作用を利用するものである。ひとつの大きな障害は副作用、特に低血圧である。臨床への応用の数例を次に述べる。
 TTXを臨床に応用すべく、いろいろ試みられているが、まだ試験段階で臨床に使われるまでには至っていない。大部分の試みはTTXの強力かつ選択的なNa+チャネル阻害作用を利用するものである。ひとつの大きな障害は副作用、特に低血圧である。臨床への応用の数例を次に述べる。
 TTX抵抗性Na+チャネルは痛みを中枢に伝えるC繊維に分布しているので、TTX抵抗性Na+を阻害してTTX感受性Na+チャネルを阻害しない化合物が見つかれば、副作用を伴わずに痛みを抑制することが出来ると考えられる。In vitroの実験では見つかっているものもあるが、まだ臨床的には成功していない。脳梗塞に伴う虚血にも神経保護薬として試みられている。TTXが神経末端を阻害して虚血に伴うグルタミン酸の神経末端からの放出を抑制するというのがそのアイデアである。TTXに対するモノクローナル抗体の作成も試みられて、ある程度の成功が報告されている。癌に伴う痛みに対して、非常な低濃度のTTXの筋肉内注射が長い間有効であるという報告もある。
 TTX抵抗性Na+チャネルは痛みを中枢に伝えるC繊維に分布しているので、TTX抵抗性Na+チャネルを阻害してTTX感受性Na+チャネルを阻害しない化合物が見つかれば、副作用を伴わずに痛みを抑制することが出来ると考えられる。In vitroの実験では見つかっているものもあるが、まだ臨床的には成功していない。脳梗塞に伴う虚血にも神経保護薬として試みられている。TTXが神経末端を阻害して虚血に伴うグルタミン酸の神経末端からの放出を抑制するというのがそのアイデアである。TTXに対するモノクローナル抗体の作成も試みられて、ある程度の成功が報告されている。癌に伴う痛みに対して、非常な低濃度のTTXの筋肉内注射が長い間有効であるという報告もある。
参考文献
参考文献
Hwang, D.-F. and Noguchi, T. (2007). Tetrodoxin poisoning. Advances in Food and Nutrition Research 52, 141-236.
Hwang, D.-F. and Noguchi, T. (2007). Tetrodoxin poisoning. Advances in Food and Nutrition Research 52, 141-236.

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