「アドレナリン」の版間の差分

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脳の一部の神経細胞、および副腎髄質中にあるクロム親和性細胞において合成される(図2)。他に、も合成されている。生合成に関わる酵素は以下の通り。 <br>  
脳の一部の神経細胞、および副腎髄質中にあるクロム親和性細胞において合成される(図2)。他に、も合成されている。生合成に関わる酵素は以下の通り。 <br>  


*'''チロシン水酸化酵素 tyrosine hydroxylase (TH):'''EC 1.14.16.2。チロシンよりL-DOPA (L-3,4-dihydroxyphenylalanine)を合成する<ref name="ref5"><pubmed> 15569247 </pubmed></ref> <ref name="ref6"><pubmed> 21176768 </pubmed></ref> <ref name="ref7"><pubmed> 2575455</pubmed></ref>。反応には、Tetrahydrobiopterin, O2, Fe2+が必要。カテコールアミン合成において、律速段階の酵素であると考えられている。その活性制御は、主にタンパク質の量と、リン酸化による。全てのカテコールアミン産生細胞に存在する。  補因子であるTetrahydrobiopterinはGTPより合成される。律速酵素はGTP cyclohydrolase Iである<ref name="ref8"><pubmed> 21867484 </pubmed></ref>。  
*'''チロシン水酸化酵素 tyrosine hydroxylase (TH):'''EC 1.14.16.2。チロシンよりL-DOPA (L-3,4-dihydroxyphenylalanine)を合成する<ref name="ref5"><pubmed> 2575455 </pubmed></ref> <ref name="ref6"><pubmed> 15569247  </pubmed></ref> <ref name="ref7"><pubmed> 21176768 </pubmed></ref>。反応には、Tetrahydrobiopterin, O<sub>2</sub>, Fe<sup>2+</sup>が必要。カテコールアミン合成において、律速段階の酵素であると考えられている。その活性制御は、主にタンパク質の量と、リン酸化による。全てのカテコールアミン産生細胞に存在する。  補因子であるTetrahydrobiopterinはGTPより合成される。律速酵素はGTP cyclohydrolase Iである<ref name="ref8"><pubmed> 21867484 </pubmed></ref>。  
*'''芳香族アミノ酸脱炭酸酵素 aromatic L-amino acid decarboxylase (AADC):'''EC 4.1.1.28。L-DOPAよりドーパミンを合成する。他に、この酵素は5-hydroxytryptophanからセロトニン(5-hydroxytryptamine, 5-HT)を合成する反応も触媒する。Pyridoxal phosphateが必要。全てのカテコールアミン産生細胞に存在する<ref name="ref9"><pubmed> 8897471</pubmed></ref>。  
*'''芳香族アミノ酸脱炭酸酵素 aromatic L-amino acid decarboxylase (AADC):'''EC 4.1.1.28。L-DOPAよりドーパミンを合成する。他に、この酵素は5-hydroxytryptophanからセロトニン(5-hydroxytryptamine, 5-HT)を合成する反応も触媒する。Pyridoxal phosphateが必要。全てのカテコールアミン産生細胞に存在する<ref name="ref9"><pubmed> 8897471</pubmed></ref>。  
*'''ドーパミンβ水酸化酵素 Dopamine β-hydroxylase:'''EC 1.14.2.1。ドーパミンよりノルアドレナリンを合成する。アスコルビン酸、O2、Cu2+が必要。ノルアドレナリン、アドレナリン産生細胞のシナプス小胞の中に存在し、シナプス小胞に取り込まれたドーパミンをノルアドレナリンに変換する<ref name="ref10"><pubmed> 6998654 </pubmed></ref>。  
*'''ドーパミンβ水酸化酵素 Dopamine β-hydroxylase:'''EC 1.14.2.1。ドーパミンよりノルアドレナリンを合成する。アスコルビン酸、O<sub>2</sub>、Cu<sup>2+</sup>が必要。ノルアドレナリン、アドレナリン産生細胞のシナプス小胞の中に存在し、シナプス小胞に取り込まれたドーパミンをノルアドレナリンに変換する<ref name="ref10"><pubmed> 6998654 </pubmed></ref>。  
*'''フェニルエタノールアミン-N-メチル基転移酵素 phenylethanolamine N-methyltransferase(PNMT):'''EC 2.1.1.28。ノルアドレナリンのアミノにメチル基を付加し、アドレナリンを生合成する。メチル基のドナーとしてS-adenosylmethioneが必要。ヒトでは一つの遺伝子があり(Gene ID 5409)、転写産物は副腎髄質に多く、心臓、および脳幹にも存在する<ref name="ref11"><pubmed> 12438093 </pubmed></ref>。ノルアドレナリンからアドレナリンの生合成は、ノルアドレナリンが合成された顆粒内で起きると考えられている<ref name="ref12"><pubmed> 4615087</pubmed></ref>。
*'''フェニルエタノールアミン-N-メチル基転移酵素 phenylethanolamine N-methyltransferase(PNMT):'''EC 2.1.1.28。ノルアドレナリンのアミノにメチル基を付加し、アドレナリンを生合成する。メチル基のドナーとしてS-adenosylmethioneが必要。ヒトでは一つの遺伝子があり(Gene ID 5409)、転写産物は副腎髄質に多く、心臓、および脳幹にも存在する<ref name="ref11"><pubmed> 12438093 </pubmed></ref>。ノルアドレナリンからアドレナリンの生合成は、ノルアドレナリンが合成された顆粒内で起きると考えられている<ref name="ref12"><pubmed> 4615087</pubmed></ref>。


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アドレナリンの代謝分解には次の二つの酵素が重要である。  
アドレナリンの代謝分解には次の二つの酵素が重要である。  


*'''モノアミン酸化酵素(monoamine oxidase, MAO):'''MAOはモノアミンのアミノ基をアルデヒド基に酸化する。MAOはミトコンドリア外膜に局在しに存在し、細胞内のノルアドレナリン(再取込みされたものを含む)の分解に関与する。ただしMAOに比べてvMAT2の方がノルアドレナリンに対する親和性がずっと高いため、シナプス小胞への取り込みの方がMAOによる分解よりも優先されると考えられる<ref name="ref14"><pubmed> 16552415</pubmed></ref>。MAOにはMAO-AとMAO-Bがあり、二つの別の遺伝子によりコードされている。MAO-AとMAO-Bはモノアミン作動性神経細胞およびグリア細胞に発現しているが、発現量は細胞の種類により異なり、また動物種によっても違いが見られる<ref name="ref14" />。マウス脳のノルアドレナリン作動性神経細胞には主にMAOAが発現している<ref name="ref15"><pubmed> 11793338 </pubmed></ref>。  
*'''モノアミン酸化酵素(monoamine oxidase, MAO):'''MAOはモノアミンのアミノ基をアルデヒド基に酸化する。MAOはミトコンドリア外膜に局在しに存在し、細胞内のノルアドレナリン(再取込みされたものを含む)の分解に関与する。ただしMAOに比べてvMAT2の方がノルアドレナリンに対する親和性がずっと高いため、シナプス小胞への取り込みの方がMAOによる分解よりも優先されると考えられる<ref name="ref14"><pubmed> 16552415</pubmed></ref>。MAOにはMAO-AとMAO-Bがあり、二つの別の遺伝子によりコードされている。MAO-AとMAO-Bはモノアミン作動性神経細胞およびグリア細胞に発現しているが、発現量は細胞の種類により異なり、また動物種によっても違いが見られる<ref name="ref14" />。  
*'''カテコール-o-メチル基転移酵素(catechol-o-methyltransferase, COMT):'''これはカテコール基のm-水酸基にメチル基を転移させる。腎臓や肝臓に豊富だが、カテコールアミン作動性神経細胞の投射先においても発現している。細胞外で働くと考えられている<ref name="ref16"><pubmed> 21846718 </pubmed></ref>。
*'''カテコール-o-メチル基転移酵素(catechol-o-methyltransferase, COMT):'''これはカテコール基のm-水酸基にメチル基を転移させる。腎臓や肝臓に豊富だが、カテコールアミン作動性神経細胞の投射先においても発現している。細胞外で働くと考えられている<ref name="ref15"><pubmed> 21846718 </pubmed></ref>。


脳においてアドレナリンの多くは、ノルアドレナリンと同様、MAO、アルデヒド還元酵素、およびCOMTにより3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol(MHPG)へ代謝され、さらに3-methoxy-4-hydroxymandelic acid (VMA)となって尿中に排出される<ref name="ref17">'''D E Golan, A H Tashjian Jr, E J Armstrong, A W Armstrong'''<br> Principles of Pharmacology, Second Edition<br>''Wolters Kluwer Health (Philadelphia)'':2002</ref>。MHPGの硫酸化物も尿中に排出される<ref name="ref17" />。  
脳においてアドレナリンの多くは、ノルアドレナリンと同様、MAO、アルデヒド還元酵素、およびCOMTにより3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol(MHPG)へ代謝され、さらに3-methoxy-4-hydroxymandelic acid (VMA)となって尿中に排出される<ref name="ref16">'''D E Golan, A H Tashjian Jr, E J Armstrong, A W Armstrong'''<br> Principles of Pharmacology, Second Edition<br>''Wolters Kluwer Health (Philadelphia)'':2002</ref>。MHPGの硫酸化物も尿中に排出される<ref name="ref16" />。  


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