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<font size="+1">[http://researchmap.jp/takeshi.imai 今井 猛]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/takeshi.imai 今井 猛]</font><br> | ||
''独立行政法人理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 感覚神経回路形成研究チーム''<br> | ''独立行政法人理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 感覚神経回路形成研究チーム''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年4月25日 原稿完成日:2015年2月27日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/noritakaichinohe 一戸 紀孝](国立精神・神経医療研究センター 神経研究所)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/noritakaichinohe 一戸 紀孝](国立精神・神経医療研究センター 神経研究所)<br> | ||
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マウスの嗅球には約1,800個の糸球体が存在する(図2)。同じ嗅覚受容体を発現する数1000個もの嗅神経細胞は、嗅上皮上で散在しているにも関わらず、それらの軸索は1ないし2個の糸球体(glomerulus)と呼ばれる構造に収斂する<ref name=ref1><pubmed> 8929536 </pubmed></ref>(図3)。逆に、単一の糸球体は特定の嗅覚受容体を発現する嗅神経細胞の軸索のみを受け入れている。従って、匂い刺激によってどの嗅覚受容体が反応したかという情報は、嗅球のどの糸球体が発火したかという情報へと変換される。特定の嗅覚受容体を発現する嗅神経細胞の軸索投射位置は、局所的には個体差があるものの、大域的には個体間で保存されている。多くの嗅覚受容体では、左右の嗅球それぞれについて内側と外側に一対の投射先が認められる。嗅球内側と外側の糸球体配置はおおむね鏡像対称となっている。 | マウスの嗅球には約1,800個の糸球体が存在する(図2)。同じ嗅覚受容体を発現する数1000個もの嗅神経細胞は、嗅上皮上で散在しているにも関わらず、それらの軸索は1ないし2個の糸球体(glomerulus)と呼ばれる構造に収斂する<ref name=ref1><pubmed> 8929536 </pubmed></ref>(図3)。逆に、単一の糸球体は特定の嗅覚受容体を発現する嗅神経細胞の軸索のみを受け入れている。従って、匂い刺激によってどの嗅覚受容体が反応したかという情報は、嗅球のどの糸球体が発火したかという情報へと変換される。特定の嗅覚受容体を発現する嗅神経細胞の軸索投射位置は、局所的には個体差があるものの、大域的には個体間で保存されている。多くの嗅覚受容体では、左右の嗅球それぞれについて内側と外側に一対の投射先が認められる。嗅球内側と外側の糸球体配置はおおむね鏡像対称となっている。 | ||
嗅球には、入力する嗅神経細胞の種類に応じたドメイン構造が存在する<ref name=ref2><pubmed> 21469960 </pubmed></ref>。嗅上皮の背内側領域(Dゾーン)に位置する嗅神経細胞の軸索は嗅球背側領域(Dドメイン)に投射する。Dゾーンの中でも、[[クラスI嗅覚受容体]]を発現する嗅神経細胞の軸索は、より背側のD<sub>I</sub>ドメインに、[[クラスII嗅覚受容体]]を発現する嗅神経細胞軸索はより腹側のD<sub>II</sub>ドメインに投射する。嗅上皮の腹外側領域(Vゾーン)の嗅神経細胞の軸索(クラスII嗅覚受容体を発現)は嗅球腹側領域(Vドメイン)に投射する。更に、Vゾーン内でも嗅覚受容体の種類によって発現領域に偏りがあり、嗅上皮の背内- | 嗅球には、入力する嗅神経細胞の種類に応じたドメイン構造が存在する<ref name=ref2><pubmed> 21469960 </pubmed></ref>。嗅上皮の背内側領域(Dゾーン)に位置する嗅神経細胞の軸索は嗅球背側領域(Dドメイン)に投射する。Dゾーンの中でも、[[クラスI嗅覚受容体]]を発現する嗅神経細胞の軸索は、より背側のD<sub>I</sub>ドメインに、[[クラスII嗅覚受容体]]を発現する嗅神経細胞軸索はより腹側のD<sub>II</sub>ドメインに投射する。嗅上皮の腹外側領域(Vゾーン)の嗅神経細胞の軸索(クラスII嗅覚受容体を発現)は嗅球腹側領域(Vドメイン)に投射する。更に、Vゾーン内でも嗅覚受容体の種類によって発現領域に偏りがあり、嗅上皮の背内-腹外軸方向の発現分布が嗅球背腹軸方向の投射位置におおよそ対応する([[ゾーン構造]])。 | ||
===嗅球内の局所回路=== | ===嗅球内の局所回路=== | ||
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副嗅球の僧帽・房飾細胞は、[[扁桃体内側核]](medial amygdala)や[[扁桃体後内側皮質核]](posteromedial cortical amygdala)、[[分界条床核]](bed nucleus of the stria terminalis)など、主嗅球の僧帽・房飾細胞とは異なる領域に軸索を投射している。 | 副嗅球の僧帽・房飾細胞は、[[扁桃体内側核]](medial amygdala)や[[扁桃体後内側皮質核]](posteromedial cortical amygdala)、[[分界条床核]](bed nucleus of the stria terminalis)など、主嗅球の僧帽・房飾細胞とは異なる領域に軸索を投射している。 | ||
==その他のサブシステム== | |||
嗅覚系には主嗅覚系と副嗅覚系の他にもいくつかのサブシステムが存在する。 | |||
主嗅上皮において[[グアニル酸シクラーゼ]]Dを発現する嗅神経細胞は、副嗅球周辺を取り囲む複数の糸球体構造、ネックレス糸球体に投射する。この特殊な嗅神経細胞は[[wikipedia:ja:二酸化炭素|二酸化炭素]]を検出するという報告や、[[グアニリン]]・[[ウログアニリン]]に応答するという報告がある。 | |||
鼻腔先端部に存在する[[グリューネベルク核]](Grüneberg ganglion)に存在する嗅神経細胞もネックレス糸球体の一部に投射する。グリューネベルク核は警報フェロモンを検出するという報告や低温度環境に応答するといった報告があるが、まだ不明な点が多い。 | |||
==関連項目== | ==関連項目== | ||
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*[[周波数地図]](トノトピー) | *[[周波数地図]](トノトピー) | ||
*[[トポグラフィックマッピング]] | *[[トポグラフィックマッピング]] | ||
*[[ゾーン構造]] | |||
*[[神経新生]] | *[[神経新生]] | ||