「IPS細胞」の版間の差分

599 バイト追加 、 2012年3月13日 (火)
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= iPS細胞の樹立方法  =
= iPS細胞の樹立方法  =


==  動物種 ==
==  動物種 ==


 iPS細胞はマウスにおいて最初に樹立され、その翌年、ヒトにおける樹立が報告された。その後、ウサギ、。非ヒト霊長類ではマーモセット、アカゲザル、カニクイザル、マンドリルにおいて樹立されている。最近では絶滅危惧種であるシロサイやのiPS細胞樹立の報告もあり、遺伝子資源の保存といった観点からも注目されている。
 iPS細胞はマウスにおいて最初に樹立され、その翌年、ヒトにおける樹立が報告された。その後、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ。非ヒト霊長類ではマーモセット、アカゲザル、カニクイザル、マンドリルにおいて樹立されている。最近では絶滅危惧種であるシロサイやのiPS細胞樹立の報告もあり、遺伝子資源の保存といった観点からも注目されている。


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== 細胞種  ==
== 細胞種  ==


 マウス胎仔の繊維芽細胞(mouse embryonic fibroblast, MEF)が用いられた。&nbsp;成体の尻尾の繊維芽細胞、胃上皮細胞、肝実質細胞、神経幹細胞、T細胞、間葉系幹細胞。一方、ヒトiPS細胞に関しては、皮膚繊維芽細胞のほか羊膜細胞、臍帯血、末梢血、骨髄、ケラチノサイト、脂肪間質細胞、歯髄幹細胞からの樹立が報告されている。
 マウス胎仔の繊維芽細胞(mouse embryonic fibroblast, MEF)が用いられた。&nbsp;成体の繊維芽細胞、胃上皮細胞、肝実質細胞、神経幹細胞、T細胞、間葉系幹細胞。一方、ヒトiPS細胞に関しては、皮膚繊維芽細胞のほか羊膜細胞、臍帯血、末梢血、骨髄、ケラチノサイト、脂肪間質細胞、歯髄幹細胞からの樹立が報告されている。


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== 遺伝子導入方法  ==
== 遺伝子導入方法  ==


 iPS細胞が樹立された当初は、遺伝子導入の手段としてレトロウイルスやレンチウイルスがベクターとして利用された。しかし、どちらのウイルスもゲノムDNAに組み込まれることから、挿入変異や近傍の遺伝子に及ぼす影響、導入遺伝子の活性化による腫瘍形成等の予期しない異常が生じる危険性を包含している。そこで、こうしたリスクを避けるとして、新たな遺伝子導入方法が考案されてきた。その一つとして、遺伝子導入箇所の特定と除去を可能とする、トランスポゾンを利用したピギーバックが開発された。一方、ゲノムに組み込まれないエピソーマルベクターとして、センダイウイルスやプラスミドDNAを用いる手法が挙げられる。さらに、ベクターを介することなく合成RNAを直接導入する方法についても報告されている。<br>
 iPS細胞が樹立された当初は、遺伝子導入の手段としてレトロウイルスやレンチウイルスがベクターとして利用された。しかし、どちらのウイルスもゲノムDNAに組み込まれることから、挿入変異や近傍の遺伝子に及ぼす影響、導入遺伝子の活性化による腫瘍形成等の予期しない異常が生じる危険性を包含している。そこで、こうしたリスクを避けるとして、新たな遺伝子導入方法が考案されてきた。その一つとして、遺伝子導入箇所の特定と除去を可能とする、トランスポゾンを利用したピギーバック(piggyBac)が開発された。一方、ゲノムに組み込まれないエピソーマルベクターとして、センダイウイルスやプラスミドDNAを用いる手法が挙げられる。さらに、ベクターを介することなく合成RNAを直接導入する方法についても報告されている。<br>


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== iPS細胞を誘導する遺伝子  ==
== iPS細胞を誘導する遺伝子  ==


 前述の通り、最初のiPS細胞はOct4、Sox2、Klf4、c-Mycの4種類の遺伝子(山中4因子)を導入することによって作成された。間もなく、誘導効率は低下するもののc-Mycを除いたOct4、Sox2、Klf4のみ(山中3因子)によってもiPS細胞は樹立可能であることが示された。ヒトの場合においても同じ遺伝子セットで誘導可能であるが、山中博士らとほぼ同時にヒトiPS細胞の作成を報告したJames Thomson博士らは、OCT4、SOX2、NANOG、LIN28。また、誘導効率や初期化の質を向上させる追加因子として、Esrrb、L-Myc、Glis1等が報告されている。また、様々な低分子化合物を併用した誘導方法についても多数の報告がある。 <br>
 前述の通り、最初のiPS細胞はOct4、Sox2、Klf4、c-Mycの4種類の遺伝子(山中4因子)を導入することによって作成された。間もなく、誘導効率は低下するもののc-Mycを除いたOct4、Sox2、Klf4のみ(山中3因子)によってもiPS細胞は樹立可能であることが示された。ヒトの場合においてもマウスと同じ遺伝子セットで誘導可能であるが、山中博士らとほぼ同時にヒトiPS細胞について報告したJames Thomson博士らは、OCT4、SOX2、NANOG、LIN28の組合せを用いていた。最も広範に利用されている遺伝子セットは山中因子であるが、神経幹細胞の場合はOct4単独でのiPS細胞、細胞種によっては少ない因子でのiPS細胞誘導も可能である。また、iPS細胞の誘導効率や初期化の質を向上させる要因として、Esrrb、Tbx3、L-Myc、Glis1の導入やp53、p21、BAXの抑制等が報告されている。<br> 一方、遺伝子導入ではなく低分子化合物を併用したiPS細胞誘導についても多数の報告がある。俗に2iや3iBayK8644。エピジェネティック変化を促すものとして、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤のバルプロ酸(VPA)やG9a阻害剤のBIX01294、シチジン類縁体の5-アザシチジン。
 
 


= iPS細胞から特定の細胞系譜への分化誘導  =
= iPS細胞から特定の細胞系譜への分化誘導  =
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