「神経管」の版間の差分

352 バイト追加 、 2013年6月26日 (水)
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<font size="+1">[http://researchmap.jp/mtaka 高橋 将文]</font><br>
''自治医科大学 分子病態治療研究センター 細胞生物研究部''<br>
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2013年1月21日 原稿完成日:2013年2月4日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/fujiomurakami 村上 富士夫](大阪大学 大学院生命機能研究科)<br>
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英語名:neural tube 独:Neuralrohr 仏:tube neural
英語名:neural tube 独:Neuralrohr 仏:tube neural


 神経管は[[wikipedia:ja:脊椎動物|脊椎動物]]の発生過程において形成される管状の構造物であり、[[脳]]および[[脊髄]]の原基である。その管構造は、[[wikipedia:ja:外胚葉|外胚葉]]に由来する板状の[[神経板]] (neural plate) がダイナミックに形態変化することで形成される。発生初期の神経管は、未分化な[[神経上皮細胞]]から構成されているが、領域特異的に発現する分泌性因子やその下流で働く[[転写制御因子]]の作用により[[wikipedia:ja:細胞運命|細胞運命]]が決定され、様々な種類の[[ニューロン]]や[[グリア細胞]]が神経管の[[前後軸]]・背腹軸に沿って生み出される。  
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 神経管は[[wikipedia:ja:脊椎動物|脊椎動物]]の発生過程において形成される管状の構造物であり、[[脳]]および[[脊髄]]の原基である。その管構造は、[[wikipedia:ja:外胚葉|外胚葉]]に由来する板状の[[神経板]] (neural plate) がダイナミックに形態変化することで形成される。発生初期の神経管は、未分化な[[神経上皮細胞]]から構成されているが、領域特異的に発現する分泌性因子やその下流で働く[[転写制御因子]]の作用により[[wikipedia:ja:細胞運命|細胞運命]]が決定され、様々な種類の[[ニューロン]]や[[グリア細胞]]が神経管の[[前後軸]]・背腹軸に沿って生み出される。
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[[Image:神経管図1.jpg|thumb|300px|'''図1.神経管の形成''']]  
[[Image:神経管図1.jpg|thumb|300px|'''図1.神経管の形成''']]  
==形成  ==
==形成  ==
 神経管は、発生過程において頭部から尾部にいたる一本の管状構造物であり、[[中枢神経系]]を構成する脳・脊髄の原基である。神経管はもとをただせば、単層上皮構造を有する神経板に由来する(図1)。神経板と表皮外胚葉との境界付近の隆起(neural ridge)や神経板正中に[[神経溝]](neural grove)が形成されることで、管構造の形成が開始される。神経板を構成する神経上皮細胞の頂端側に豊富に存在する[[アクチン]][[細胞骨格]]が収縮することで神経板に歪みが生じ、神経板が湾曲する。その後、神経板の左右の隆起が癒合することで、神経板は表皮外胚葉から最終的にくびれ切れ、管状の構造へと変化する。このような発生様式は、[[一次神経形成]] (primary neurulation) と呼ばれている(図1)<ref name="ref1"><pubmed>15327780</pubmed></ref>。
 神経管は、発生過程において頭部から尾部にいたる一本の管状構造物であり、[[中枢神経系]]を構成する脳・脊髄の原基である。神経管はもとをただせば、単層上皮構造を有する神経板に由来する(図1)。神経板と表皮外胚葉との境界付近の隆起(neural ridge)や神経板正中に[[神経溝]](neural grove)が形成されることで、管構造の形成が開始される。神経板を構成する神経上皮細胞の頂端側に豊富に存在する[[アクチン]][[細胞骨格]]が収縮することで神経板に歪みが生じ、神経板が湾曲する。その後、神経板の左右の隆起が癒合することで、神経板は表皮外胚葉から最終的にくびれ切れ、管状の構造へと変化する。このような発生様式は、[[一次神経形成]] (primary neurulation) と呼ばれている(図1)<ref name="ref1"><pubmed>15327780</pubmed></ref>。
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== 参考文献  ==
== 参考文献  ==


<references />  
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(執筆者:高橋将文 担当編集委員:村上富士夫)