「ヘブ則」の版間の差分

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 1949年カナダの心理学者であったDonald Hebb(ドナルド・ヘブ)が自らの著書『The Organization of Behavior』の中で唱えた仮説。同書の該当箇所には、  
 1949年カナダの心理学者であったDonald Hebb(ドナルド・ヘブ)が自らの著書『The Organization of Behavior』の中で唱えた仮説。同書の該当箇所には、  


「'''When an axon of cell A is near enough to excite a cell B and repeatedly or persistently takes part in firing it, some growth process or metabolic change takes place in one or both cells such that A's efficiency, as one of the cells firing B, is increased.'''(細胞Aの軸索が細胞Bを発火させるのに十分近くにあり、繰り返しあるいは絶え間なくその発火に参加するとき、いくつかの成長過程あるいは代謝変化が一方あるいは両方の細胞に起こり、細胞Bを発火させる細胞の1つとして細胞Aの効率が増加する。)(『The Organization of Behavior』D. O. Hebb著より引用)」  
「'''When an axon of cell ''A'' is near enough to excite a cell ''B'' and repeatedly or persistently takes part in firing it, some growth process or metabolic change takes place in one or both cells such that ''A'''s efficiency, as one of the cells firing ''B'', is increased.'''(細胞Aの軸索が細胞Bを発火させるのに十分近くにあり、繰り返しあるいは絶え間なくその発火に参加するとき、いくつかの成長過程あるいは代謝変化が一方あるいは両方の細胞に起こり、細胞Bを発火させる細胞の1つとして細胞Aの効率が増加する。)(『The Organization of Behavior』D. O. Hebb著より引用)」  


と書かれている。要約すれば「ニューロンAの発火がニューロンBを発火させると2つのニューロンの結合が強まる」となる。これは脳の中で起こっている記憶の基礎現象であると考えられる。つまり、記憶とは適切なニューロン同士の結合力の変化であると定式化できる。  
と書かれている。要約すれば「ニューロンAの発火がニューロンBを発火させると2つのニューロンの結合が強まる」となる。これは脳の中で起こっている記憶の基礎現象であると考えられる。つまり、記憶とは適切なニューロン同士の結合力の変化であると定式化できる。  
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 最後に、ヘブ則が広まったのは実験科学の分野だけではない。1957年アメリカのRosenblattは、ヘブ則を学習関数として組み込んだパーセプトロンというパターン認識アルゴリズムを考案した。その後も、計算機シミュレーションを用いたニューラルネットワークの研究に大きな影響を与えている。  
 最後に、ヘブ則が広まったのは実験科学の分野だけではない。1957年アメリカのRosenblattは、ヘブ則を学習関数として組み込んだパーセプトロンというパターン認識アルゴリズムを考案した。その後も、計算機シミュレーションを用いたニューラルネットワークの研究に大きな影響を与えている。  


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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==


<references />  
<references />  


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== 推奨文献 ==
== 推奨文献 ==
Hebb, D.O. (1949). The organization of behavior. New York: Wiley & Sons


Hebb, D.O. (1949). The organization of behavior. New York: Wiley &amp; Sons


同義語:ヘッブ則、Hebb's postulate、Hebbian learning  
<br> 同義語:ヘッブ則、Hebb's postulate、Hebbian learning  


<br> 重要な関連語:長期増強(LTP)


重要な関連語:長期増強(LTP)
<br> (執筆者:高橋直矢、池谷裕二、松木則夫、担当編集委員:林康紀)
 
 
(執筆者:高橋直矢、池谷裕二、松木則夫、担当編集委員:林康紀)
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