「精神科遺伝学」の版間の差分

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== 遺伝学的に見た精神疾患の特徴  ==
== 遺伝学的に見た精神疾患の特徴  ==


精神疾患やそれに関連する行動のほとんどは多くのゲノム多様性と稀な変異、環境要因が関わっている多因子遺伝に分類される。アルツハイマー病に対するAPOE遺伝子多型、アルコール依存症に対するADH, ALDH多型の他は頻度の高い多型が疾患のリスクに強い影響力を持つことはないことは分かっているが、頻度の低い変異、とくに、新生(de novo)突然変異のなかには比較的大きくリスクを高めるものがあることが知られつつある。  
精神疾患やそれに関連する行動のほとんどは多くのゲノム多様性と稀な変異、環境要因が関わっている多因子遺伝に分類される。アルツハイマー病に対するAPOE遺伝子多型、アルコール依存症に対するADH, ALDH遺伝子多型の他は頻度の高い多型が疾患のリスクに強い影響力を持つことはないことは分かっているが、頻度の低い変異、とくに、新生(de novo)突然変異のなかには比較的大きくリスクを高めるものがあることが知られつつある。  


== 歴史  ==
== 歴史  ==
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1990年代の後半から2000年代前半はマイクロサテライトマーカーを用いて家族内で複数の患者をもつ家系を対象に連鎖解析が積極的に行われた。  
1990年代の後半から2000年代前半はマイクロサテライトマーカーを用いて家族内で複数の患者をもつ家系を対象に連鎖解析が積極的に行われた。  


2000年代前半からは連鎖解析の結果を参考にして、連鎖領域の原因遺伝子変異/多様性を追求することにより、関連遺伝子を同定する位置的クローニング法や位置的候補遺伝子法が用いられるようになり、NRG1, DTNBP1, DAOAなどの遺伝子が統合失調症の新たな候補遺伝子として注目された。これとは別に、統合失調症、うつ病が連鎖していた染色体転座の家系からDISC1がクローニングされた。
2000年代前半からは連鎖解析の結果を参考にして、連鎖領域の原因遺伝子変異/多様性を追求することにより、関連遺伝子を同定する位置的クローニング法や位置的候補遺伝子法が用いられるようになり、これまで注目されていなかった遺伝子が統合失調症の新たな候補遺伝子として注目された。これとは別に、統合失調症、うつ病が連鎖していた染色体転座の家系からDISC1遺伝子がクローニングされた。


2000年代後半からゲノムワイド関連解析 (GWAS)の時代になり、2007年のWellcome Trust Case Control Consortiumによる2000人の症例と3000人のコントロールによる解析の報告が精神科遺伝学のGWAS時代の幕開けとなった<ref><pubmed> 17554300 </pubmed></ref>。2010年代になるとGWASは万単位の被験者を対象とするようになり、遺伝統計学的手法の改良も続き、より確かな関連の所見が得られるようになっている。並行して、SNPチップでも検出できる頻度の低い100 kb以上の大きなコピー数変異 (CNV)のなかに知的発達障害、自閉性障害、統合失調症、双極性障害、てんかんなどのリスクを大きく高めるものがあることが発見され、これまで得られた精神科遺伝学の分子遺伝学研究成果の中で最も確実な発見となった。  
2000年代後半からゲノムワイド関連解析 (GWAS)の時代になり、2007年のWellcome Trust Case Control Consortiumによる2000人の症例と3000人のコントロールによる解析の報告が精神科遺伝学のGWAS時代の幕開けとなった<ref><pubmed> 17554300 </pubmed></ref>。2010年代になるとGWASは万単位の被験者を対象とするようになり、遺伝統計学的手法の改良も続き、より確かな関連の所見が得られるようになっている。並行して、SNPチップでも検出できる頻度の低い100 kb以上の大きなコピー数変異 (CNV)のなかに知的発達障害、自閉性障害、統合失調症、双極性障害、てんかんなどのリスクを大きく高めるものがあることが発見され、これまで得られた精神科遺伝学の分子遺伝学研究成果の中で最も確実な発見となった。  
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