「カリウムチャネル」の版間の差分

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英:potassium channel、英略語:K<sup>+</sup> channel<br>  
英:potassium channel、英略語:K<sup>+</sup> channel<br>  


<br>要約<br>カリウムチャネルはカリウム(K<sup>+</sup>)イオンを選択的に透過させるイオンチャネルである。静止膜電位の形成や電気的な細胞応答、シナプス伝達やカリウム濃度恒常性維持に関わっている。ほとんどのカリウムチャネルはαサブユニットが四量体を形成し、中央部分にカリウムを通す小孔(ポア)が開くようになっている。電気生理学的特性やαサブユニットの膜貫通領域の構造の違いにより、六回膜貫通型の「電位依存性カリウムチャネル」と「カルシウム活性化カリウムチャネル」、二回膜貫通型の「内向き整流性カリウムチャネル」、四回膜貫通型の「Two-pore domainカリウムチャネル」に大別される。それらは、イオン透過経路を構成するαサブユニットと電流特性や膜発現量を制御するβサブユニットを含めて100種類以上の遺伝子群から構成されている。これら豊富なサブユニット分子種、αサブユニットのヘテロ四量体形成、さらにβサブユニットとの複合体形成がカリウムチャネルの多様性の実体的理由である。イオンチャネルの中で、電気生理学的な解析、生化学・構造生物学的な解析が最も行われているのがカリウムチャネルであり、イオンチャネルの分子機構に関する極めて重要な研究成果がカリウムチャネルを用いた研究から得られている。  
<br>要約<br>カリウムチャネルはカリウムイオンを選択的に透過させるイオンチャネルである。静止膜電位の形成や電気的な細胞応答、シナプス伝達やカリウム濃度の恒常性維持に関わっている。ほとんどのカリウムチャネルはαサブユニットが四量体を形成し、中央部分にカリウムを通す小孔(ポア)が開くようになっている。電気生理学的特性やαサブユニットの膜貫通領域の構造の違いにより、六回膜貫通型の「電位依存性カリウムチャネル」と「カルシウム活性化カリウムチャネル」、二回膜貫通型の「内向き整流性カリウムチャネル」、四回膜貫通型の「Two-pore domainカリウムチャネル」に大別される。それらは、イオン透過経路を構成するαサブユニットと電流特性や膜発現量を制御するβサブユニットを含めて100種類以上の遺伝子群から構成されている。これら豊富なサブユニット分子種、αサブユニットのヘテロ四量体形成、さらにβサブユニットとの複合体形成がカリウムチャネルの多様性の実体的理由である。イオンチャネルの中で、電気生理学的な解析、生化学・構造生物学的な解析が最も行われているのがカリウムチャネルであり、イオンチャネルの分子機構に関する極めて重要な研究成果がカリウムチャネルを用いた研究から得られている。  


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= 1.カリウムチャネルの基本的分子機能と構造<br>  =
= 1.カリウムチャネルの基本的分子機能と構造<br>  =


細胞は脂質二重膜に囲まれているため、荷電したイオンは自由に細胞に出入りすることは出来ない。そこで細胞はイオンを通すための小孔を持っている。電気化学ポテンシャルを駆動力として、カリウムイオンの選択的な膜透過をつかさどる蛋白質がカリウムチャネルである<ref>'''Y Kurachi, LY Jan, M Lazdunski'''<br>"Potassium Ion Channels: Molecular Structure, Function, and Diseases". Current Topics in Membranes, vol 46<br>''Academic Press, London'':1999 ISBN 0-12-153346-8.</ref><ref>'''B Hille'''<br>"Chapter 5: Potassium Channels and Chloride Channels". Ion channels of excitable membranes<br>''Sinauer Associate Inc, Sunderland, MA'':pp. 131–168:2002 ISBN 0-87893-321-2.</ref>。従来の電気生理学的解析により各組織、各細胞で異なる性質を持つカリウムチャネルの存在が明らかにされてきた。しかしそれらに共通する機能として、生体膜のエネルギー障壁(ボルンエネルギー)を克服しカリウムイオンを選択的に透過させる機能を持っている。また、多くは特徴的なゲート機能を備えている。<br>  
細胞は脂質二重膜に囲まれているため、荷電したイオンは自由に細胞に出入りすることは出来ない。そこで細胞はイオンを通すための小孔(ポア)を持っている。電気化学ポテンシャルを駆動力として、カリウムイオン(K<sup>+</sup>)の選択的な膜透過をつかさどる蛋白質がカリウムチャネルである<ref>'''Y Kurachi, LY Jan, M Lazdunski'''<br>"Potassium Ion Channels: Molecular Structure, Function, and Diseases". Current Topics in Membranes, vol 46<br>''Academic Press, London'':1999 ISBN 0-12-153346-8.</ref><ref>'''B Hille'''<br>"Chapter 5: Potassium Channels and Chloride Channels". Ion channels of excitable membranes<br>''Sinauer Associate Inc, Sunderland, MA'':pp. 131–168:2002 ISBN 0-87893-321-2.</ref>。従来の電気生理学的解析により各組織、各細胞で異なる性質を持つカリウムチャネルの存在が明らかにされてきた。しかしそれらに共通する機能として、生体膜のエネルギー障壁(ボルンエネルギー)を克服しカリウムイオンを選択的に透過させる機能を持っている。また、多くは特徴的なゲート機能を備えている。<br>  


== 二次構造  ==
== 二次構造  ==
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