「エレベーター運動」の版間の差分

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 神経上皮は偽重層の度合いが際立つ例として有名であるが,上皮たるものすべて,「背丈」(アピカルベイサル軸上の長さ)の大小にもとづく程度の差こそあれ,エレベーター運動を行い,したがって核の偽重層状態を呈する.
 神経上皮は偽重層の度合いが際立つ例として有名であるが,上皮たるものすべて,「背丈」(アピカルベイサル軸上の長さ)の大小にもとづく程度の差こそあれ,エレベーター運動・INMを行い,したがって核の偽重層状態を呈する.




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 1995年にMcConnellらによって行なわれ始めたスライス培養の手法の進歩に伴って2001年以降,哺乳類脳原基中でのエレベーター運動・INMが明瞭にライブ観察できるようになり,ゼブラフィッシュ胚を用いた in vivoライブ観察も始まった.こうしたイメージング手法と遺伝子操作,薬理学的実験などの組み合せを通じて,最近,エレベーター運動・INMの分子機構が徐々に理解されるようになってきた.微小管に依存した機構,アクトミオシンに依存する機構,さらには細胞集団中で能動的な核移動により受動的な核移動が引き起こされる可能性,またギャップジャンクションの関与などが唱えられている.  
 1995年にMcConnellらによって行なわれ始めたスライス培養の手法の進歩に伴って2001年以降,哺乳類脳原基中でのエレベーター運動・INMが明瞭にライブ観察できるようになり,ゼブラフィッシュ胚を用いた in vivoライブ観察も始まった.こうしたイメージング手法と遺伝子操作,薬理学的実験などの組み合せを通じて,最近,エレベーター運動・INMの分子機構が徐々に理解されるようになってきた.微小管に依存した機構,アクトミオシンに依存する機構,さらには細胞集団中で能動的な核移動により受動的な核移動が引き起こされる可能性,またギャップジャンクションの関与などが唱えられている.  
 エレベーター運動・INMの意義については,まだ詳しくは分かっていない.組織形成,細胞産生など,いくつかの視点で研究が進められつつある.こうした研究は,ヒトの先天性脳疾患の病態解明につながる可能性がある.また,ES細胞から人工的に作成された神経上皮様の構造体においてもエレベーター運動・INMが起きる事も分かっている(永楽,笹井ら,2011年)ので,幹細胞研究の一環としての意義も深い.さらに,ヒトの脳の形成・進化を論じるうえでの細胞生物学的な注目点の一つとしても意識されている.
 エレベーター運動・INMの意義については,まだ詳しくは分かっていない.組織形成,細胞産生など,いくつかの視点で研究が進められつつある.こうした研究は,ヒトの先天性脳疾患の病態解明につながる可能性がある.また,ES細胞から人工的に作成された神経上皮様の構造体においてもエレベーター運動・INMが起きる事も分かっている(永楽,笹井ら,2011年)ので,幹細胞研究の一環としての意義も深い.さらに,ヒトの脳の形成・進化を論じるうえでの細胞生物学的な注目点の一つとしても意識されている.


参考総説
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