「くも膜下出血」の版間の差分

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===開頭クリッピング術===
===開頭クリッピング術===
 血管内治療が導人される以前のクリッピング術後の転帰については、1990年にバージニアのKassellらにより発表された国際共同研究がある。6カ月後の転帰をGlasgow Outcome Scaleでみるとgood recovery (GR) 67.9 %、moderately disabled (MD)10.4 %、severely disabled (SD) 5.7%、vegetative survival (VS) 1.7% 、dead (D) 14.3%であった<ref name=Kassell1990><pubmed>2191090</pubmed></ref>26)。時代背景も考慮する必要があり、この研究が行われた当時の日本では86%が早期手術であったのに対し、国際共同研究では早期手術の割合が42 %であった。一方で、Day 7~10でのクリッビング例ではGRは56% 、死亡率は28%と早期、晩期に比べて有意に劣った<ref name=Kassell1990><pubmed>2191090</pubmed></ref>26)。これらを受けて早期手術は1980年代後半よりわが国が先行して一般化しており、破裂脳動脈瘤に対するクリッピング術は出血後 72時間以内の早期に行うことがグレードB(行うよう勧められる)で勧められている<ref name=日本脳卒中学会2019></ref>21)。
 血管内治療が導人される以前のクリッピング術後の転帰については、1990年にバージニアのKassellらにより発表された国際共同研究がある。6カ月後の転帰をGlasgow Outcome Scaleでみるとgood recovery (GR) 67.9 %、moderately disabled (MD)10.4 %、severely disabled (SD) 5.7%、vegetative survival (VS) 1.7% 、dead (D) 14.3%であった<ref name=Kassell1990><pubmed>2191090</pubmed></ref>26)。時代背景も考慮する必要があり、この研究が行われた当時の日本では86%が早期手術であったのに対し、国際共同研究では早期手術の割合が42 %であった。一方で、Day 7~10でのクリッビング例ではGRは56% 、死亡率は28%と早期、晩期に比べて有意に劣った<ref name=Kassell1990><pubmed>2191090</pubmed></ref>26)。これらを受けて早期手術は1980年代後半よりわが国が先行して一般化しており、破裂脳動脈瘤に対するクリッピング術は出血後 72時間以内の早期に行うことがグレードB(行うよう勧められる)で勧められている<ref name=日本脳卒中学会2019></ref>21)。
[[ファイル:Tsuji SAH Fig3.png|サムネイル|'''図3. コイル塞栓術'''<br>'''上.'''脳動脈瘤のCT血管造影像<br>'''下. ’’’左より]]
===血管内コイル塞栓術===
===血管内コイル塞栓術===
 脳動脈瘤コイル塞栓術は1990年に臨床応用されてから、1992年にはヨーロッパ、1995年に米国FDAの認可を取得して世界に広まり、わが国では1997年3月から保険診療として開始された。以後、わが国でも破裂脳動脈瘤に対してコイル塞栓術を行う施設が急増しており、2011年には破裂脳動脈瘤治療の約3割がコイル塞栓術と推定されているが、この比率は欧米と逆であり、日本におけるコイル塞栓術は今後も増加すると推測される。なお、血管内治療も外科的治療同様、出血後早期に施行することが『脳卒中治療ガイドライン2015[追補2019]』で推奨されている(グレードC1) <ref name=日本脳卒中学会2019></ref> 21)。
 脳動脈瘤コイル塞栓術は1990年に臨床応用されてから、1992年にはヨーロッパ、1995年に米国FDAの認可を取得して世界に広まり、わが国では1997年3月から保険診療として開始された。以後、わが国でも破裂脳動脈瘤に対してコイル塞栓術を行う施設が急増しており、2011年には破裂脳動脈瘤治療の約3割がコイル塞栓術と推定されているが、この比率は欧米と逆であり、日本におけるコイル塞栓術は今後も増加すると推測される。なお、血管内治療も外科的治療同様、出血後早期に施行することが『脳卒中治療ガイドライン2015[追補2019]』で推奨されている(グレードC1) <ref name=日本脳卒中学会2019></ref> 21)。