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{{chembox
{| class="wikitable"
| 化合物名 = (−)-テトロドトキシン
!化合物!!ClinicalTrials.gov Identifier !! 年 !! 国 !! 対象疾患 !! Phase !! 結果
|画像ファイル=Tetrodotoxin.svg
|-
|画像サイズ=
| Taltirelin Hydrate || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04107740 NCT04107740] || 2019- || 韓国 || SCD全般 || 4 || 現在進行中
|画像1=Tetrodotoxin-3D-balls.png
|-
|IUPAC名= Octahydro-12-(hydroxymethyl)-2-imino-5,9:7,10a-dimethano-10aH-[1,3]dioxocino[6,5-d]pyrimidine-4,7,10,11,12-pentol
| KPS-0373(Rovatirelin) || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01970098 NCT01970098] || 2013-2015 || 日本 || 軽度~中等度のSCD || 3 || [https://jnnp.bmj.com/content/91/3/254 部分的に有効]
|別称=anhydrotetrodotoxin, 4-epitetrodotoxin, tetrodonic acid, テトロドトキシン、タリカトキシン、スフェロイジン、テトロドキシン、テトロドントキシン
|-
|Section1= {{Chembox Identifiers
| Riluzole || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03347344?cond=Spinocerebellar+Degeneration&draw=3&rank=11 NCT03347344] || 2018-2019 || フランス || SCA2 || 3 || 不明
| CAS番号=4368-28-9
|-
| 日化辞番号 = J76.209A
| Transcranial Magnetic Stimulation || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03347344 NCT01975909] || 2013-2016 || 米国 || genetically-confirmed SCA || Not Applicable || 有効性なし
| EINECS = 2244588
|-
| PubChem=20382
| Lithium Carbonate || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00683943 NCT00683943] || 2008-2010 || 米国 || SCA1 || 1 ||  
| SMILES=C([C@@]1([C@@H]2[C@@H]3[C@H](N=C(N[C@@]<br />34C([C@@H]1O[C@@]([C@H]4O)(O2)O)O)N)O)O)O
|-
  }}
| Intravenous Immune Globulin || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02287064 NCT02287064] || 2015-2016 || 米国 || SCA types 1, 2, 3, 6, 10, or 11 || 1 || まだ発表なし
|Section2= {{Chembox Properties|
|-
| C =11 | H = 17| N =3 | O =8
| Oral Trehalose || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04399265 NCT04399265] || 2020ー- || マレーシア || Genetically confirmed SCA 3 || Not Applicable || 進行中
| MolarMass=
|-
| 外観=白色固体
| Varenicline (Chantix®) || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00992771 NCT00992771] || 2009-2012 || 米国 || SCA3 || 2 || [https://n.neurology.org/content/78/8/545.long 有効]
| Density=
|-
| 融点=220 ºC
| Umbilical Cord Mesenchymal Stem Cells || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03378414 NCT03378414] || 2017- || 中国 || SCA1,2,4,6 || 2 || 詳細不明
| BoilingPt=
|-
| Solubility=
| Troriluzole || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02960893 NCT03701399] || 2018- || 米国 || SCA1,2,3,6,7,8,10 || 2,3 || 進行中
  }}
|-
|Section3= {{Chembox Hazards
| Sodium Phenylbutyrate || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01096095 NCT01096095] || 2010-2012 || ブラジル || SCA3 || 2 || 中止
| 外部MSDS = [https://fscimage.fishersci.com/msds/01139.htm Fisher Scientific]
|-
| EU分類 = {{Hazchem TT}}
| Dalfampridine || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01811706 NCT01811706] || 2013-2015 || 米国 || SCA1,2,3,6 || Not Applicable || 有効性なし
| EUIndex =
|-
| 主な危険性 =
| CAD-1883 || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04301284 NCT04301284] || 2020- || 米国 || SCA1,2,3,6,7,10,17 || 2 || 延期(COVID-19のため
| IngestionHazard =
|-
| InhalationHazard =
| Docosahexaenoic Acid (DHA) || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03109626 NCT03109626] || 2015-2018 || イタリア || SCA38 || Not Applicable || [https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ana.25059 有効]
| 眼への危険性 =
|-
| 皮膚への危険性 =
| Stemchymal® || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02540655 NCT02540655] || 2015- || 台湾 || SCA2,3 || 2 || 不明
| Rフレーズ = {{R26/27/28}}
|-
| LD50 = 334 μg/kg([[マウス]]、経口)}}
| Intravenous Cabaletta || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02147886 NCT02147886] || 2014-2016 || イスラエル || SCA3 || 2 || 結果?
}}
|-
 
| Coenzyme Q10 || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00957216 NCT00957216] || 2009-2018 || 米国 || 弧発性SCD || 1 || 結果?
<font size="+1">楢橋敏夫†<br></font>
|-
Department of Molecular Pharmacology and Biological Chemistry, Northwestern University Feinberg School of Medicine, 303 E. Chicago Avenue, Chicago, IL 60611, USA
| BHV-4157 || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03408080 NCT03408080] || 2018- || 米国 || SCA1,2,3,6 || 3 || エントリー中止中
 
|-
DOI XXXXXX/XXX 原稿受取日:2011年11月30日 原稿受理日:2012年12月1日
| Vatiquinone || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04577352 NCT04577352] || 2020- || 米国 || Friedreich Ataxia || 2,3 || 開始前
 
|-
英:tetrodotoxin、英略語:TTX、独:Tetrodotoxin、仏:tétrodotoxine
| CTI-1601 || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04519567 NCT04519567] || 2020- || 米国 || Friedreich Ataxia || 1 || 開始前
 
|-
同義語:テトロドトキシン<br>
| Etravirine || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04273165 NCT04273165] || 2020- || イタリア || Friedreich Ataxia || 2 || 開始前
 
|-
 フグ毒テトロドトキシンは1960年の初めに、[[wikipedia:jp:神経|神経]]、[[wikipedia:jp:筋肉|筋肉]]の興奮をつかさどる[[電位依存性ナトリウムチャネル]](Na<sup>+</sup>チャネル)を低濃度でしかも選択的に阻害することが証明されて以来、[[チャネル]]の実験に欠かせないchemical toolとして世界中で広く使われてきている。テトロドトキシンがきっかけとなって他の毒物や治療薬のチャネルに対する作用機構の研究が重要視され、channelopathyは医学生物学のホットなトピックになった。現在ではテトロドトキシン抵抗性Na<sup>+</sup>チャネルの存在も知られている。テトロドトキシンは[[wikipedia:jp:フグ|フグ]]が作るのではなく、海産の[[wikipedia:jp:細菌|細菌]]によって作られ、[[wikipedia:jp:食物連鎖|食物連鎖]]を経てフグの主に[[wikipedia:jp:卵巣|卵巣]]や[[wikipedia:jp:肝臓|肝臓]]に蓄えられる。フグの種類によってはほとんどテトロドトキシンを持たないものもある。この様な機構を反映して、テトロドトキシンはフグ以外の[[wikipedia:jp:海産動物|海産動物]]、例外的には[[wikipedia:jp:陸生動物|陸生動物]]にも見出されている。テトロドトキシンをもった動物はテトロドトキシン に対する[[wikipedia:jp:LD50|LD50]]が非常に高い。フグ中毒は主に神経、筋肉系の麻痺によるものであるが、[[wikipedia:jp:解毒剤|解毒剤]]は見つかっておらず、[[wikipedia:jp:人工呼吸|人工呼吸]]が対症療法的に有効である。臨床へのテトロドトキシンの利用もいろいろ試みられているが、まだ試験段階である。
| RT001 || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04102501 NCT04102501] || 2019- || 米国 || Friedreich Ataxia || 3 || 進行中
 
|-
== 歴史的背景  ==
| Resveratrol || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03933163 NCT03933163] || 2019- || 米国 || Friedreich Ataxia || 2 || 進行中
 
|-
 フグには強力な毒があるということは5000年も前から[[wikipedia:jp:エジプト|エジプト]]その他で知られていた。特に日本ではフグは最もおいしい[[wikipedia:jp:魚|魚]]として長い間賞玩されてきた。しかしその毒のために中毒死が絶えず、薬理学的な対象として広く研究されてきたとはいえ、以前は[[wikipedia:Kymograph|キモグラフ]]を使うような非常に古典的な手法によっていたので、[[wikipedia:jp:神経毒|神経毒]]であるこことは知られていても詳しい作用機構はわからなかった。1960年の初めにテトロドトキシンの[[wikipedia:jp:化学構造|化学構造]]が決定され、また神経、筋肉などで興奮をつかさどるNa<sup>+</sup>チャネルを低濃度でしかも選択的に阻害することが証明されて以来、実験室でのchemical tool として世界中で広く使われ、一躍神経生理、薬理のチャンピオンとしてデビューするようになった。これをきっかけにして、いろいろな化合物がchemical tool として使われる様になり、またさまざまな治療薬のチャネルに対する影響の研究が盛んになった。その結果、チャネルの分子的同定が進み、channelopathy が重要な医学生物学の分野として発展するようになった。
| MIN-102 || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03917225 NCT03917225] || 2019- || EU || Friedreich Ataxia || 2 || リクルート終了
 
|-
== 化学構造  ==
| gamma interferon || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03888664 NCT03888664]<br>[https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02797080 NCT02797080]<br>[https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02593773 NCT02593773]<br>[https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01965327 NCT01965327]|| ||  || Friedreich Ataxia || 2、3 ||  
 
|-
 1964年に京都で開かれたFourth International Conference on the Natural Productsで3つのグループ(日本「2」、アメリカ「1」)によって発表された(C11H17N3O8, 分子量319 )。テトロドトキシン分子は[[wikipedia:jp:グアニジン|グアニジウム基]]を含み、またhemilactal結合を持っていることが特徴である。テトロドトキシンは[[wikipedia:jp:双性イオン|双性イオン]](zwitterion)の形をとり2種類のカチオンにイオン化される。水には直接溶けず、[[細胞膜]]は通れない。しかし酸性の溶液には溶解し、比較的安定である。pH 4.8、4 の条件下での分解時定数は14ヶ月と測定されている。アルカリ性の溶液中では不安定である。
| Nicotinamide || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03761511 NCT03761511] || 2018- || EU || Friedreich Ataxia || 2 || 進行中
 
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== イオンチャネルに対する作用機構  ==
| TAK-831 || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03214588 NCT03214588] || 2017-2019 || 米国 || Friedreich Ataxia || 2 || 有効性なし
 
|-
 テトロドトキシンが神経や筋肉を麻痺させることは、特に日本では長い間[[wikipedia:jp:薬理学|薬理学]]者の間で知られていたが、1960年になって[[細胞内微小電極法]]を[[wikipedia:jp:カエル|カエル]]の筋肉に適用した実験から、テトロドトキシンがNa<sup>+</sup>チャネルを選択的に阻害して麻痺をもたらすという仮説が発表された<ref><pubmed> 14426011 </pubmed></ref>。この仮説は4年後に[[wikipedia:jp:ロブスター|アメリカン・ロブスター]]''Homarus americanus''の巨大神経線維に[[電位固定法]]を適用した実験で確実に証明された<ref><pubmed> 14155438 </pubmed></ref>。当時としては毒物をchemical tool として使うということは全く考えられなかった上、また特定のチャネル特にNa<sup>+</sup>チャネルを選択的に阻害する化合物はまったく知られていなかったので、テトロドトキシンは一躍ユニークなchemical tool として世界中で広く使われるようになった。
| Rosuvastatin || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02705547 NCT02705547] || 2016-2018 || 米国 || Friedreich Ataxia || 1 || リクルート終了
 
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 テトロドトキシンのNa<sup>+</sup> チャネル阻害作用はいろいろな面でユニークである。まず第一にテトロドトキシンは細胞の外から与えたときにのみ有効で、細胞内に直接与えても阻害しない。大部分の非選択的Na<sup>+</sup>チャネル阻害剤は、外から有効であっても実際は膜を通過してチャネルの内側から働いていることが知られている(たとえば[[局所麻酔薬]])。第二にテトロドトキシン 分子のグアニジウム基 はNa<sup>+</sup>チャネルを通れる大きさを持っているが、他の部分は大きすぎて通れない。つまりテトロドトキシン がチャネルを外から塞いで阻害する訳である。第三にテトロドトキシンがチャネルを阻害しても、チャネルのゲート機構は刺激によって正常に開閉する。このようなユニークな機構を反映して、個々のNa<sup>+</sup>チャネルはテトロドトキシンによってall-or-noneに阻害される。
| (+)-Epicatechin || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02660112 NCT02660112] || 2016-2019 || 米国 || Friedreich Ataxia || 2 || 有効性なし
 
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 Na<sup>+</sup>チャネルは260 kDaのα サブユニットとβ1 (36 kDa) あよびβ2 (33 kDa) サブユニットから構成されている。α サブユニット が主要な部分で、それだけでもチャネルとして働くがkineticsがおそい。β サブユニットを加えるとkineticsが正常に戻る。各々のα サブユニットは4つの相同ドメイン(I-IV)を含み、各々のドメインは6つの膜貫通領域 (S1-S6)からなっている。各ドメインのS5とS6 をつなぐループにテトロドトキシン が結合してNa<sup>+</sup>チャネルを阻害すると考えられている。
| Methylprednisolone || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02424435 NCT02424435] || 2015-2020 || 米国 || Friedreich Ataxia || 1 || リクルート終了
 
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== Chemical toolとしての利用  ==
| EPI-743(alpha-tocotrienol quinone) || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01962363 NCT01962363] || 2013-2016 || 米国 || Friedreich's Ataxia with Point Mutations || 2 || [https://n.neurology.org/content/86/16_Supplement/P5.388 効果あり]
 
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 テトロドトキシンは実験室で広く利用されている。2、3の例を次に挙げる。神経や筋肉では通常Na<sup>+</sup>チャネルとK<sup>+</sup>チャネルが共存しているので、K<sup>+</sup>チャネルの由来の電流を測定するためにはNa<sup>+</sup>チャネルをテトロドトキシンで完全に阻害すればよい。シナプス後電位膜のチャネル、例えば[[アセチルコリン受容体]]チャネルや[[グルタミン酸受容体]]チャネルはテトロドトキシンによって阻害されないので、[[節前線維]]の興奮をテトロドトキシンでとめて受容体の働きを調べることができる。その他[[神経興奮]]や[[活動電位]]を止めて実験することが多々あるが、このような場合にはテトロドトキシンが広く使われている。Na<sup>+</sup>チャネルの密度もテトロドトキシン あるいは同様なNa<sup>+</sup>チャネル阻害作用のある[[wikipedia:jp:サキシトキシン|サキシトキシン]](saxitoxin、STX)の結合によって測定された。[[無髄神経線維]]では通常1 µm<sup>2</sup>あたり100-300個のNa<sup>+</sup>チャネルが存在する。[[有髄神経線維]]の[[ランヴィエ絞輪]]では[[跳躍伝導]]のために密度が高く、1 µm<sup>2</sup>あたり12000個と測定されている。
| Omaveloxolone || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02255435 NCT02255435] || 2014- || 米国 || Friedreich Ataxia || 2 || リクルート停止
 
|-
== テトロドトキシン抵抗性Na<sup>+</sup>チャネル  ==
| Acetyl-L-Carnitine || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01921868 NCT01921868] || 2013-2017 || 米国 || Friedreich Ataxia || Not Applicable || 結果未報告
 
|-
 神経や筋肉のNa<sup>+</sup>チャネルの中には高濃度のテトロドトキシンではじめて阻害されるものがある。例えば[[後根神経節]]から[[脳]]に向かって痛みを伝える[[C線維]]は、[[IC50]]が100 µM前後のテトロドトキシン抵抗性Na<sup>+</sup>チャネルを含んでいる。[[痛み]]は非常に重要なテーマなので、テトロドトキシン抵抗性Na<sup>+</sup>チャネルの研究は盛んになった。テトロドトキシン抵抗性Na<sup>+</sup> チャネルも含めて、数種類のNa<sup>+</sup>チャネルが知られている。現在では命名法が統一されて、[[中枢神経|中枢]]、[[末梢神経]]および[[骨格筋]]にあるテトロドトキシン感受性Na<sup>+</sup>チャネル(IC50=2-10 nM) はNav 1.1、1.2、1.3、1.4、および1.7、心筋と神経を除去された骨格筋にあるテトロドトキシン抵抗性Na<sup>+</sup>チャネル(IC50=2 µM) はNav1.5、中枢、末梢神経にあるテトロドトキシン 抵抗性Na<sup>+</sup>チャネル(IC50=1-100 µM) はNav1.8と1.9 と呼ばれている。
| VP 20629 || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01898884 NCT01898884] || 2013-2016 || 米国 || Friedreich Ataxia || 1 || リクルート終了
 
|-
== フグ毒の分布  ==
| EPI-743 || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01728064 NCT01728064] || 2012-2015 || 米国 || Friedreich Ataxia || 2 || 有効性なし
 
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 テトロドトキシンはフグに含まれていることは昔から知られていたが、現在では種々な動物(主に海産動物)に発見されている。たとえば[[wikipedia:jp:ヒモムシ|ヒモムシ]]''Lineus fuscoviridis''、[[wikipedia:jp:軟体動物|軟体動物]]''[[wikipedia:Charonia|Charonia]] lampus sauliae''、''[[wikipedia:Nassarius siquijorensis|Nassarius (Zeuxis) siquijorensis]]''、''Niotha lineate''、イモリ''[[wikipedia:Taricha|Taricha]] spp.''およびカエル''[[wikipedia:Atelopus|Atelopus]] spp.''などである。テトロドトキシンはフグによって生産されるのではなく、海産の細菌''[[wikipedia:Vibrio alginolyticus|Vibrio alginolyticus]]''およびその他の''Vibrio spp.''によって作られ、食物連鎖を経てフグに達することが証明された。ゆえにフグをそれらの細菌のない条件下で養殖すれば、テトロドトキシンを持たないフグが出来るはずである。実際にこれが可能であることが証明された。テトロドトキシンは主にフグの肝臓や卵巣に含まれているが、フグの種類によっては[[wikipedia:jp:皮膚|皮膚]]や[[wikipedia:jp:腸|腸]]にも含まれている。これらの臓器に含まれているテトロドトキシンの量はフグの種類によって非常に異なり、ほとんどテトロドトキシンを持たないフグも知られている。
| Bupropion and Citalopram || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01716221 NCT01716221] || 2012-2016 || 米国 || Friedreich Ataxia || 4 || 終了
 
|-
 テトロドトキシンを持っている動物はテトロドトキシンに対して著しい抵抗性を持っている。たとえば[[wikipedia:Xanthidae|オウギガニ]]、ある種の熱帯魚、およびある種のサンショウウオのテトロドトキシンに対する[[wikipedia:LD50|LD50]]はそれぞれ1000、>300、>10000 mouse unit (MU) と測定されている。1 MUは体重20 gの[[wikipedia:jp:マウス|マウス]]を30分で殺すテトロドトキシンの量である。テトロドトキシンを持った3種類のフグでのテトロドトキシン LD50 は700-750、500-550、300-500 MU であった。一方、テトロドトキシンを持たない4種類のフグでは、LD50は15-18、19-20、13-15、0.9-1.3 と測定された。
| Resveratrol || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01339884 NCT01339884] || 2011-2014 || オーストラリア || Friedreich Ataxia || 1,2 || 終了
 
|-
== テトロドトキシンによる中毒  ==
| Idebenone || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01303406 NCT01303406] || 2011-2016 || EU || Friedreich Ataxia || 3 || 有効性なし
 
|-
 テトロドトキシン LD50はマウスでは10 ng/g、ヒトでは2 mg/human といわれている。中毒の第1期は神経筋で起こり、唇や舌の[[wikipedia:jp:痺れ|痺れ]]、流涎や腹痛からなる。第2期には痺れが広がり手足(extremity)の麻痺が起こる。第3期には麻痺が神経筋肉系および呼吸器系にひろがって、[[構音障害]](dysarthria)、[[筋線維性攣縮]]、[[wikipedia:jp:低血圧|低血圧]] (hypotension)、血管運動ブロック、[[wikipedia:jp:不整脈|不整脈]] を伴う。第4期の末期には呼吸麻痺、極度の低血圧、[[痙攣]]、[[脊髄反射]]の消失を経て死にいたる。
| A0001(alpha-tocopherolquinone) || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01035671 NCT01035671] || 2009-2011 || 米国 || Friedreich Ataxia || 2 || [https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/mds.25058 容量依存性にFRDA評価スケール改善]
 
|-
 解毒剤は知られていない。[[wikipedia:jp:対症療法|対症療法]]としては[[wikipedia:jp:人工呼吸|人工呼吸]]が有効である。心筋のNa<sup>+</sup>チャネルはテトロドトキシンに対する感受性が低く中毒中も働いているので、人工呼吸を施せばテトロドトキシンが徐々に解毒されて患者は回復に向かう。[[wikipedia:jp:胃洗浄|胃洗浄]]は有効で、[[アトロピン]]も低血圧や徐脈に対症療法的に使われる。
| Erythropoietin || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01016366 NCT01016366] || 2009-2016 || EU || Friedreich Ataxia || 2 || 有効性なし
 
|-
 しかしテトロドトキシンによる中毒死は絶えない。日本国内での中毒例/死亡例は1965年が152/88、1970年が73/33、1980年が90/15、1990年が55/1、2000年が40/0、2007年が38/2と報告されている。最近の死亡例の低下は医療技術の改良を反映している。にもかかわらず中毒例が多いのは、少量の卵巣や肝臓をたべていわゆるnumb feeling を味わおうとする人が絶えないからである。
| idebenone || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00993967 NCT00993967] || 2009-2016 || EU || Friedreich Ataxia || 3 || 認容性を副作用の確認
 
|-
== 臨床への応用  ==
| deferiprone || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00530127 NCT00530127] || 2007-2009 || EU || Friedreich Ataxia || 1,2 || [https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ana.24248 非重症例で進行抑制の可能性(+)]
 
|-
 テトロドトキシンを臨床に応用すべく、いろいろ試みられているが、まだ試験段階で臨床に使われるまでには至っていない。大部分の試みはテトロドトキシンの強力かつ選択的なNa<sup>+</sup>チャネル阻害作用を利用するものである。ひとつの大きな障害は副作用、特に低血圧である。臨床への応用の数例を次に述べる。
| EGb 761 || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00824512 NCT00824512] || 209-2013 || フランス || Friedreich Ataxia || 2 || 有効性なし
 
|-
 テトロドトキシン抵抗性Na<sup>+</sup>チャネルは痛みを中枢に伝えるC線維に分布しているので、テトロドトキシン抵抗性Na<sup>+</sup>チャネルを阻害してテトロドトキシン感受性Na<sup>+</sup>チャネルを阻害しない[[wikipedia:jp:化合物|化合物]]が見つかれば、[[wikipedia:jp:副作用|副作用]]を伴わずに痛みを抑制することが出来ると考えられる。In vitroの実験では見つかっているものもあるが、まだ臨床的には成功していない。[[脳梗塞]]に伴う[[虚血]]にも[[神経保護薬]]として試みられている。テトロドトキシンが[[神経末端]]を阻害して虚血に伴う[[グルタミン酸]]の神経末端からの放出を抑制するというのがそのアイデアである。テトロドトキシンに対する[[wikipedia:ja:モノクローナル抗体|モノクローナル抗体]]の作成も試みられて、ある程度の成功が報告されている。[[wikipedia:jp:癌|癌]]に伴う痛みに対して、非常な低濃度のテトロドトキシンの筋肉内注射が長い間有効であるという報告もある。
| pioglitazone || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00811681 NCT00811681] || 2008-2013 || フランス || Friedreich Ataxia || 3 || 終了
 
|-
== 参考文献  ==
| varenicline || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00803868 NCT00803868] || 2008-2010 || 米国 || Friedreich Ataxia || 2,3 || 途中で中止
 
|-
=== 引用文献  ===
| Triheptanoin || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04513002 NCT04513002] || 2020- || オーストラリア || Ataxia Telangiectasia || 2 || リクルート開始前
<references />
|-
=== その他  ===
| vitamin B3 || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03962114 NCT03962114] || 2019- || オランダ || Ataxia Telangiectasia || 2 || リクルート中
<pubmed> 17425946</pubmed><pubmed> 18941294 </pubmed><pubmed> 18728726 </pubmed>
|-
#'''Toshi Narahashi'''<br>Pharmacology of tetrodotoxin.<br>''Journal of Toxicology - Toxin Reviews'': 2001, 20, 67-84. <br>
| N-Acetyl-L-Leucine || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03759678 NCT03759678] || 2018- || 米,英,独 || Ataxia Telangiectasia || 2 || リクルート中
#'''Mari Yotsu-Yamashita'''<br>Chemistry of puffer fish toxin.<br>''Journal of Toxicology – Toxin Reviews'': 2001, 20, 51-66.
|-
 
| Metformin,Pioglitazone || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02733679 NCT02733679] || 2016-2019 || 英国 || Ataxia Telangiectasia || 4 || 終了
† Deceased.  
|-
 
| Somatropin, Clonidine, L-Arginin-Hydrochloride, Estradiol valerate || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01052623 NCT01052623] || 2010-2011 || ドイツ || Ataxia Telangiectasia || 4 || 結果?
(編集委員:林 康紀)
|-
| amantadine sulphate || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00950196 NCT00950196] || 2009-2011 || イスラエル || Ataxia Telangiectasia || 4 || [https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0883073812441999 運動症状を改善]
|-
| Baclofen || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00640003 NCT00640003] || 2008-2011 || 米国 || Ataxia Telangiectasia || 1 || 結果?
|}

2021年2月17日 (水) 21:27時点における最新版

化合物 ClinicalTrials.gov Identifier 対象疾患 Phase 結果
Taltirelin Hydrate NCT04107740 2019- 韓国 SCD全般 4 現在進行中
KPS-0373(Rovatirelin) NCT01970098 2013-2015 日本 軽度~中等度のSCD 3 部分的に有効
Riluzole NCT03347344 2018-2019 フランス SCA2 3 不明
Transcranial Magnetic Stimulation NCT01975909 2013-2016 米国 genetically-confirmed SCA Not Applicable 有効性なし
Lithium Carbonate NCT00683943 2008-2010 米国 SCA1 1
Intravenous Immune Globulin NCT02287064 2015-2016 米国 SCA types 1, 2, 3, 6, 10, or 11 1 まだ発表なし
Oral Trehalose NCT04399265 2020ー- マレーシア Genetically confirmed SCA 3 Not Applicable 進行中
Varenicline (Chantix®) NCT00992771 2009-2012 米国 SCA3 2 有効
Umbilical Cord Mesenchymal Stem Cells NCT03378414 2017- 中国 SCA1,2,4,6 2 詳細不明
Troriluzole NCT03701399 2018- 米国 SCA1,2,3,6,7,8,10 2,3 進行中
Sodium Phenylbutyrate NCT01096095 2010-2012 ブラジル SCA3 2 中止
Dalfampridine NCT01811706 2013-2015 米国 SCA1,2,3,6 Not Applicable 有効性なし
CAD-1883 NCT04301284 2020- 米国 SCA1,2,3,6,7,10,17 2 延期(COVID-19のため
Docosahexaenoic Acid (DHA) NCT03109626 2015-2018 イタリア SCA38 Not Applicable 有効
Stemchymal® NCT02540655 2015- 台湾 SCA2,3 2 不明
Intravenous Cabaletta NCT02147886 2014-2016 イスラエル SCA3 2 結果?
Coenzyme Q10 NCT00957216 2009-2018 米国 弧発性SCD 1 結果?
BHV-4157 NCT03408080 2018- 米国 SCA1,2,3,6 3 エントリー中止中
Vatiquinone NCT04577352 2020- 米国 Friedreich Ataxia 2,3 開始前
CTI-1601 NCT04519567 2020- 米国 Friedreich Ataxia 1 開始前
Etravirine NCT04273165 2020- イタリア Friedreich Ataxia 2 開始前
RT001 NCT04102501 2019- 米国 Friedreich Ataxia 3 進行中
Resveratrol NCT03933163 2019- 米国 Friedreich Ataxia 2 進行中
MIN-102 NCT03917225 2019- EU Friedreich Ataxia 2 リクルート終了
gamma interferon NCT03888664
NCT02797080
NCT02593773
NCT01965327
Friedreich Ataxia 2、3
Nicotinamide NCT03761511 2018- EU Friedreich Ataxia 2 進行中
TAK-831 NCT03214588 2017-2019 米国 Friedreich Ataxia 2 有効性なし
Rosuvastatin NCT02705547 2016-2018 米国 Friedreich Ataxia 1 リクルート終了
(+)-Epicatechin NCT02660112 2016-2019 米国 Friedreich Ataxia 2 有効性なし
Methylprednisolone NCT02424435 2015-2020 米国 Friedreich Ataxia 1 リクルート終了
EPI-743(alpha-tocotrienol quinone) NCT01962363 2013-2016 米国 Friedreich's Ataxia with Point Mutations 2 効果あり
Omaveloxolone NCT02255435 2014- 米国 Friedreich Ataxia 2 リクルート停止
Acetyl-L-Carnitine NCT01921868 2013-2017 米国 Friedreich Ataxia Not Applicable 結果未報告
VP 20629 NCT01898884 2013-2016 米国 Friedreich Ataxia 1 リクルート終了
EPI-743 NCT01728064 2012-2015 米国 Friedreich Ataxia 2 有効性なし
Bupropion and Citalopram NCT01716221 2012-2016 米国 Friedreich Ataxia 4 終了
Resveratrol NCT01339884 2011-2014 オーストラリア Friedreich Ataxia 1,2 終了
Idebenone NCT01303406 2011-2016 EU Friedreich Ataxia 3 有効性なし
A0001(alpha-tocopherolquinone) NCT01035671 2009-2011 米国 Friedreich Ataxia 2 容量依存性にFRDA評価スケール改善
Erythropoietin NCT01016366 2009-2016 EU Friedreich Ataxia 2 有効性なし
idebenone NCT00993967 2009-2016 EU Friedreich Ataxia 3 認容性を副作用の確認
deferiprone NCT00530127 2007-2009 EU Friedreich Ataxia 1,2 非重症例で進行抑制の可能性(+)
EGb 761 NCT00824512 209-2013 フランス Friedreich Ataxia 2 有効性なし
pioglitazone NCT00811681 2008-2013 フランス Friedreich Ataxia 3 終了
varenicline NCT00803868 2008-2010 米国 Friedreich Ataxia 2,3 途中で中止
Triheptanoin NCT04513002 2020- オーストラリア Ataxia Telangiectasia 2 リクルート開始前
vitamin B3 NCT03962114 2019- オランダ Ataxia Telangiectasia 2 リクルート中
N-Acetyl-L-Leucine NCT03759678 2018- 米,英,独 Ataxia Telangiectasia 2 リクルート中
Metformin,Pioglitazone NCT02733679 2016-2019 英国 Ataxia Telangiectasia 4 終了
Somatropin, Clonidine, L-Arginin-Hydrochloride, Estradiol valerate NCT01052623 2010-2011 ドイツ Ataxia Telangiectasia 4 結果?
amantadine sulphate NCT00950196 2009-2011 イスラエル Ataxia Telangiectasia 4 運動症状を改善
Baclofen NCT00640003 2008-2011 米国 Ataxia Telangiectasia 1 結果?