「視野地図」の版間の差分

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同義語・類義語:[[網膜地図]]、[[網膜部位対応]]、[[網膜部位再現]]、[[網膜部位局在]]、[[レチノトピー]]  
同義語・類義語:[[網膜地図]]、[[網膜部位対応]]、[[網膜部位再現]]、[[網膜部位局在]]、[[レチノトピー]]  


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視野地図とは[[神経細胞]]の脳内位置と、その神経細胞が応答する光刺激([[受容野]])の視野内位置との対応関係を指す(図)。視野内位置の基準点は視野中心とし、皮質内位置の基準点は視野中心に受容野中心を持つ細胞の位置(その領野を引き伸ばして1枚のシートと見たてたときの面方向における位置)とすることが多い。[[網膜神経節細胞]](retinal ganglion cell, RGC)と[[視覚野]]神経細胞との対応関係に注目する場合は、[[網膜]]部位対応地図(retinotopic map)とも呼ばれる。RGC、RGCからの投射先である[[外側膝状体]](lateral geniculate nucleus, LGN)、LGNからの投射先である[[一次視覚野]](visual area 1, V1; primary visual cortex, striate cortex, [[Brodmann area 17]]とも言う)は、眼という映写機からの像を[[投影]]するある種のスクリーンと見なすことができる。つまり、網膜上で近接したRGCから投射されたLGNの神経細胞はLGN上で近接しており、LGN上で近接した神経細胞から投射されたV1の神経細胞はV1上で近接しているという対応関係がある。この対応関係について「網膜部位局在(レチノトピー)が保持される」とも言う。[[二次視覚野]]以降では視野地図は複雑になる。
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[[Image:視覚路と視野地図.png|thumb|right|350px|'''図.一次視覚野までの視覚路と視野地図''']]  
[[Image:視覚路と視野地図.png|thumb|right|350px|'''図.一次視覚野までの視覚路と視野地図''']]  


== 視野地図とは ==
== 受容野 ==
 [[神経細胞]]の脳内位置と、その神経細胞が応答する光刺激([[受容野]]、後述)の視野内位置との対応関係を指す(図)。視野内位置の基準点は視野中心とし、皮質内位置の基準点は視野中心に受容野中心を持つ細胞の位置(その領野を引き伸ばして1枚のシートと見たてたときの面方向における位置)とすることが多い。[[網膜神経節細胞]](retinal ganglion cell, RGC)と[[視覚野]]神経細胞との対応関係に注目する場合は、[[網膜]]部位対応地図(retinotopic map)とも呼ばれる。RGC、RGCからの投射先である[[外側膝状体]](lateral geniculate nucleus, LGN)、LGNからの投射先である[[一次視覚野]](visual area 1, V1; primary visual cortex, striate cortex, [[Brodmann area 17]]とも言う)は、眼という映写機からの像を[[投影]]するある種のスクリーンと見なすことができる。つまり、網膜上で近接したRGCから投射されたLGNの神経細胞はLGN上で近接しており、LGN上で近接した神経細胞から投射されたV1の神経細胞はV1上で近接しているという対応関係がある。この対応関係について「網膜部位局在(レチノトピー)が保持される」とも言う。[[二次視覚野]]以降では視野地図は複雑になる。
 
 視覚情報処理にかかわる全ての神経細胞は、視野内の特定の局所領域からの光刺激に応答し、[[膜電位]]を変化させる。この空間領域は受容野と呼ばれる。受容野の大きさは、原則として、視覚路上で網膜から遠ざかるにつれて大きくかつ複雑になる。例えば、網膜の入力細胞である[[視細胞]]は直径数μmの点で光の強弱を膜電位に変換している(ヒトの網膜では、明所視にかかわる[[錐体細胞]]は約500万個あり、[[中心窩]]で直径約2μm、周辺部で直径約10μm<ref><pubmed>2324310 </pubmed></ref>、暗所視にかかわる[[桿体細胞]]は約9000万個あり、直径約2~3μm <ref><pubmed>8225863 </pubmed></ref>)。これら約1億個の視細胞が重ならず網膜の表面に平行に隙間無く並び、[[wikipedia:JA:モザイク|モザイク]]状の構造を形成している。視細胞は、網膜の出力細胞である網膜神経節細胞と多対一の結合をしている。神経節細胞からLGN、LGNからV1など、低次領野から高次領野への投射も多対一であるため、神経細胞の受容野は高次領野に進むにつれて大きくなる。そして、どの領野においても、受容野の大きさに比べて隣接する神経細胞間の距離が短いため、隣接細胞間では受容野の大部分が重なっている。
 視覚情報処理にかかわる全ての神経細胞は、視野内の特定の局所領域からの光刺激に応答し、[[膜電位]]を変化させる。この空間領域は受容野と呼ばれる。受容野の大きさは、原則として、視覚路上で網膜から遠ざかるにつれて大きくかつ複雑になる。例えば、網膜の入力細胞である[[視細胞]]は直径数μmの点で光の強弱を膜電位に変換している(ヒトの網膜では、明所視にかかわる[[錐体細胞]]は約500万個あり、[[中心窩]]で直径約2μm、周辺部で直径約10μm<ref><pubmed>2324310 </pubmed></ref>、暗所視にかかわる[[桿体細胞]]は約9000万個あり、直径約2~3μm <ref><pubmed>8225863 </pubmed></ref>)。これら約1億個の視細胞が重ならず網膜の表面に平行に隙間無く並び、[[wikipedia:JA:モザイク|モザイク]]状の構造を形成している。視細胞は、網膜の出力細胞である網膜神経節細胞と多対一の結合をしている。神経節細胞からLGN、LGNからV1など、低次領野から高次領野への投射も多対一であるため、神経細胞の受容野は高次領野に進むにつれて大きくなる。そして、どの領野においても、受容野の大きさに比べて隣接する神経細胞間の距離が短いため、隣接細胞間では受容野の大部分が重なっている。


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