視野地図

提供:脳科学辞典
2012年5月2日 (水) 15:54時点におけるTsuyoshiokamoto (トーク | 投稿記録)による版

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 視野地図

英:visual field map

類義語:網膜地図、網膜部位対応、網膜部位再現、網膜部位局在、レチノトピー

 視野地図とは、神経細胞の脳内位置と、その神経細胞が応答する光刺激(受容野、後述)の視野内位置との対応関係を指す(図1)。視野内位置の基準点は視野中心とし、皮質内位置の基準点は視野中心に受容野中心を持つ細胞の位置とすることが多い。網膜神経節細胞(retinal ganglion cell, RGC)と視覚野神経細胞との対応関係に注目する場合は、網膜地図とも呼ばれる。RGCからの投射先である外側膝状体(lateral geniculate nucleus, LGN)や、LGNからの投射先である一次視覚野(visual area 1, V1; primary visual cortex, striate cortex, Brodmann area 17とも言う)では、網膜上の位置関係を再現するように神経細胞が配列している。この対応関係について「網膜部位局在(レチノトピー)が保持される」とも言う。二次視覚野以降では視野地図は複雑になる。

 視覚情報処理にかかわる全ての神経細胞は、視野内で固有の局所領域である受容野内の光刺激に応答し、膜電位を変化させる。受容野の大きさは、原則として、視覚路上で網膜から遠ざかるにつれて大きくかつ複雑になる。例えば、網膜の入力細胞である視細胞は直径数μm(ヒトの網膜では、明所視にかかわる錐体細胞は約500万個あり、中心窩で直径約2μm、周辺部で直径約10μm[1]、暗所視にかかわる桿体細胞は約9000万個あり、直径約2~3μm [2])の点で光の強弱を膜電位に変換している。これら約1億個の視細胞が重ならず網膜の表面に平行に隙間無く並び、モザイク状の構造を形成している。視細胞は、網膜の出力細胞である網膜神経節細胞と多対一の結合をしている。神経節細胞からLGN、LGNからV1など、低次領野から高次領野への投射は多対一であるため、神経細胞の受容野は高次領野に進むにつれて大きくなる。そして、どの領野においても、受容野の大きさに比べて隣接する神経細胞間の距離が短いため、隣接細胞間では受容野の大部分が重なっている。

一次視覚野までの視覚路と視野地図
  1. Curcio, C.A., Sloan, K.R., Kalina, R.E., & Hendrickson, A.E. (1990).
    Human photoreceptor topography. The Journal of comparative neurology, 292(4), 497-523. [PubMed:2324310] [WorldCat] [DOI]
  2. Curcio, C.A., Millican, C.L., Allen, K.A., & Kalina, R.E. (1993).
    Aging of the human photoreceptor mosaic: evidence for selective vulnerability of rods in central retina. Investigative ophthalmology & visual science, 34(12), 3278-96. [PubMed:8225863] [WorldCat]