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<font size="+1">近藤 誠、[http://researchmap.jp/read0060975 廣川 信隆]</font><br>
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''東京大学大学院医学系研究科''<br>
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DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2012年3月14日 原稿完成日:2012年4月28日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年3月14日 原稿完成日:2012年4月28日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/fujiomurakami 村上 富士夫](大阪大学 大学院生命機能研究科)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/fujiomurakami 村上 富士夫](大阪大学 大学院生命機能研究科)<br>
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 [[神経細胞]]の[[軸索]]は時に1mにも及ぶ細長い突起であるが、この軸索内ではタンパク質の合成がほとんど行われない。従って、軸索内及び[[シナプス]]領域で必要なほとんどのタンパク質は[[細胞体]]で合成された後、軸索の中を輸送される必要がある。この軸索内での物質輸送を軸索輸送と呼ぶ。軸索輸送では、[[モータータンパク質]]([[キネシン]]、[[ダイニン]])によって様々な[[膜小器官]]やタンパク質複合体が[[微小管]]に沿って両方向性に運ばれており、神経細胞の生存、形態形成および機能発現にとって基本的でかつ重要な役割を果たしている。軸索では、微小管の方向がそろっており、+(プラス)端が軸索末端に、-(マイナス)端が細胞体に向いている。順向性輸送は微小管の+端方向への輸送で、主にN-KIFs(N末にモーター領域を持つKIFs)によって行われる。一方、逆向性輸送は微小管の-端方向への輸送で、主に細胞質ダイニンによって行われる。軸索輸送には、大別して速い軸索輸送(50~400mm/day)と遅い軸索輸送(<8mm/day)がある。膜小器官は速い軸索輸送によって運ばれるのに対し、[[細胞骨格]]蛋白質は遅い軸索輸送によって運ばれる<ref><pubmed>19773780</pubmed></ref> <ref name="ref2"><pubmed>21092854</pubmed></ref>。この速度の差は、細胞骨格蛋白などが輸送の途中でモータータンパク質より解離し、細胞骨格に組み込まれ、一定時間後に細胞骨格の脱重合により再びモータータンパク質と結合し、輸送されることを繰り返す事に由来する。
 [[神経細胞]]の[[軸索]]は時に1mにも及ぶ細長い突起であるが、この軸索内ではタンパク質の合成がほとんど行われない。従って、軸索内及び[[シナプス]]領域で必要なほとんどのタンパク質は[[細胞体]]で合成された後、軸索の中を輸送される必要がある。この軸索内での物質輸送を軸索輸送と呼ぶ。軸索輸送では、[[モータータンパク質]]([[キネシン]]、[[ダイニン]])によって様々な[[膜小器官]]やタンパク質複合体が[[微小管]]に沿って両方向性に運ばれており、神経細胞の生存、形態形成および機能発現にとって基本的でかつ重要な役割を果たしている。軸索では、微小管の方向がそろっており、+(プラス)端が軸索末端に、-(マイナス)端が細胞体に向いている。順向性輸送は微小管の+端方向への輸送で、主にN-KIFs(N末にモーター領域を持つKIFs)によって行われる。一方、逆向性輸送は微小管の-端方向への輸送で、主に細胞質ダイニンによって行われる。軸索輸送には、大別して速い軸索輸送(50~400mm/day)と遅い軸索輸送(<8mm/day)がある。膜小器官は速い軸索輸送によって運ばれるのに対し、[[細胞骨格]]タンパク質は遅い軸索輸送によって運ばれる<ref><pubmed>19773780</pubmed></ref> <ref name="ref2"><pubmed>21092854</pubmed></ref>。この速度の差は、細胞骨格タンパクなどが輸送の途中でモータータンパク質より解離し、細胞骨格に組み込まれ、一定時間後に細胞骨格の脱重合により再びモータータンパク質と結合し、輸送されることを繰り返す事に由来する。
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== 速い軸索輸送  ==
== 速い軸索輸送  ==


 速い軸索輸送では、[[wikipedia:ja:ミトコンドリア|ミトコンドリア]]やシナプス小胞前駆体など、種々の膜小器官が運ばれている(図1)(表1)<ref name="ref2"><pubmed>21092854</pubmed></ref>。これらは、順行性、逆行性ともに、微小管に沿って輸送が行われている。順向性輸送は微小管の+端方向への輸送で、細胞体から軸索末端に向かって、主にN-KIFsによって行われる。一方、逆向性輸送は微小管の-端方向への輸送で、軸索末端から細胞体に向かって、主に細胞質ダイニンによって行われる。KIFs及びそのカーゴ(荷物)については「[[キネシン]]」の項目を、細胞質ダイニンについては「[[ダイニン]]」の項目を参考にされたい。
 速い軸索輸送では、[[wj:ミトコンドリア|ミトコンドリア]]やシナプス小胞前駆体など、種々の膜小器官が運ばれている(図1)(表1)<ref name="ref2"><pubmed>21092854</pubmed></ref>。これらは、順行性、逆行性ともに、微小管に沿って輸送が行われている。順向性輸送は微小管の+端方向への輸送で、細胞体から軸索末端に向かって、主にN-KIFsによって行われる。一方、逆向性輸送は微小管の-端方向への輸送で、軸索末端から細胞体に向かって、主に細胞質ダイニンによって行われる。KIFs及びそのカーゴ(荷物)については「[[キネシン]]」の項目を、細胞質ダイニンについては「[[ダイニン]]」の項目を参考にされたい。


[[Image:軸索輸送ー図1.jpg|thumb|300px|<b>図1 神経細胞における細胞内物質輸送</b><br />(Hirokawa et al.<ref name="ref2"><pubmed>21092854</pubmed></ref>より改変)]]  
[[Image:軸索輸送ー図1.jpg|thumb|300px|<b>図1 神経細胞における細胞内物質輸送</b><br />(Hirokawa et al.<ref name="ref2"><pubmed>21092854</pubmed></ref>より改変)]]  


'''表1 神経細胞におけるモータータンパク質とカーゴ '''(Hirokawa et al.<ref name="ref2"><pubmed>21092854</pubmed></ref>より改変)  
'''表1 神経細胞におけるモータータンパク質とカーゴ '''(Hirokawa et al.<ref name="ref2"><pubmed>21092854</pubmed></ref>より改変)  


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略称: C, [[線虫]](''C. elegans''); D, [[wikipedia:ja:ショウジョウバエ|ショウジョウバエ]](''D. melanogaster'').
略称: C, [[線虫]](''C. elegans''); D, [[wj:ショウジョウバエ|ショウジョウバエ]](''D. melanogaster'').


== 遅い軸索輸送  ==
== 遅い軸索輸送  ==


 遅い軸索輸送では、[[チュブリン]]、[[アクチン]]や[[ニューロフィラメント]]蛋白質などの細胞骨格蛋白質が運ばれており、軸索の伸長、維持にとって極めて重要である。遅い輸送には、KIF5によるHsc70を介した輸送が報告されている<ref name="ref3"><pubmed>20111006</pubmed></ref>。KIF5は軽鎖(KLC)を介して膜小器官に結合し速い輸送も行うが、Hsc70が軽鎖に結合することによって細胞骨格蛋白などの細胞質蛋白と結合し、遅い輸送を行う<ref name="ref3"><pubmed>20111006</pubmed></ref>。
 遅い軸索輸送では、[[チュブリン]]、[[アクチン]]や[[ニューロフィラメント]]タンパク質などの細胞骨格タンパク質が運ばれており、軸索の伸長、維持にとって極めて重要である。遅い輸送には、KIF5によるHsc70を介した輸送が報告されている<ref name="ref3"><pubmed>20111006</pubmed></ref>。KIF5は軽鎖(KLC)を介して膜小器官に結合し速い輸送も行うが、Hsc70が軽鎖に結合することによって細胞骨格タンパクなどの細胞質タンパクと結合し、遅い輸送を行う<ref name="ref3"><pubmed>20111006</pubmed></ref>。


== 関連項目  ==
== 関連項目  ==

2021年12月15日 (水) 20:29時点における最新版

近藤 誠、廣川 信隆
東京大学大学院医学系研究科
DOI:10.14931/bsd.789 原稿受付日:2012年3月14日 原稿完成日:2012年4月28日
担当編集委員:村上 富士夫(大阪大学 大学院生命機能研究科)

英語名:axonal transport

 神経細胞軸索は時に1mにも及ぶ細長い突起であるが、この軸索内ではタンパク質の合成がほとんど行われない。従って、軸索内及びシナプス領域で必要なほとんどのタンパク質は細胞体で合成された後、軸索の中を輸送される必要がある。この軸索内での物質輸送を軸索輸送と呼ぶ。軸索輸送では、モータータンパク質キネシンダイニン)によって様々な膜小器官やタンパク質複合体が微小管に沿って両方向性に運ばれており、神経細胞の生存、形態形成および機能発現にとって基本的でかつ重要な役割を果たしている。軸索では、微小管の方向がそろっており、+(プラス)端が軸索末端に、-(マイナス)端が細胞体に向いている。順向性輸送は微小管の+端方向への輸送で、主にN-KIFs(N末にモーター領域を持つKIFs)によって行われる。一方、逆向性輸送は微小管の-端方向への輸送で、主に細胞質ダイニンによって行われる。軸索輸送には、大別して速い軸索輸送(50~400mm/day)と遅い軸索輸送(<8mm/day)がある。膜小器官は速い軸索輸送によって運ばれるのに対し、細胞骨格タンパク質は遅い軸索輸送によって運ばれる[1] [2]。この速度の差は、細胞骨格タンパクなどが輸送の途中でモータータンパク質より解離し、細胞骨格に組み込まれ、一定時間後に細胞骨格の脱重合により再びモータータンパク質と結合し、輸送されることを繰り返す事に由来する。

速い軸索輸送

 速い軸索輸送では、ミトコンドリアやシナプス小胞前駆体など、種々の膜小器官が運ばれている(図1)(表1)[2]。これらは、順行性、逆行性ともに、微小管に沿って輸送が行われている。順向性輸送は微小管の+端方向への輸送で、細胞体から軸索末端に向かって、主にN-KIFsによって行われる。一方、逆向性輸送は微小管の-端方向への輸送で、軸索末端から細胞体に向かって、主に細胞質ダイニンによって行われる。KIFs及びそのカーゴ(荷物)については「キネシン」の項目を、細胞質ダイニンについては「ダイニン」の項目を参考にされたい。

図1 神経細胞における細胞内物質輸送
(Hirokawa et al.[2]より改変)

表1 神経細胞におけるモータータンパク質とカーゴ (Hirokawa et al.[2]より改変)

モータータンパク質 結合タンパク質 カーゴまたは機能
KIFs
KIF1A (C: Unc-104, D: Imac) DENN/MADD (C: Aex-3) シナプス小胞前駆体
Liprin-α (C: Syd-2) シナプス小胞前駆体
KIF1Bα KBP ミトコンドリア
KIF1Bβ (C: Unc-104, D: Imac) DENN/MADD (C: Aex-3) シナプス小胞前駆体
KIF1Bβ Liprin-α (C: Syd-2) シナプス小胞前駆体
未同定 mRNA
KIF1C KBP ミトコンドリア?
KIF2A 小胞
Microtubule depolymerizer
KIF3 Fodrin 細胞膜前駆体
未同定 N-カドヘリン
未同定 電位依存性Kチャネル
KIF4 未同定 膜オルガネラ
PARP-1 神経生存
KIF5 (C: Unc-116, D: KHC) 未同定 mRNA-タンパク質複合体
KIF5 FMRP mRNA-タンパク質複合体
JIP-1 (D: APLIP1) 小胞
JIP-2 小胞
JIP-3 (C: Unc-16, D: Sunday Driver) 小胞、ミトコンドリア?
アミロイド前駆体タンパク質 小胞
シンタブリン シンタキシン小胞
シンタブリン ミトコンドリア
Milton-Miro複合体 ミトコンドリア
GRIP AMPA型グルタミン酸受容体小胞
Slp-Rab27B TrkB小胞
HAP1 GABAA受容体
Huntingtin BDNF小胞
LIS1-NUDEL複合体 DHC1
mNUDC ダイナクチン複合体
MyosinVa 小胞
Hsc70 遅い輸送小胞
KIF13B (GAKIN) MAGUKs (D: discs large) MAGUK小胞
KIF13B PIP3BP PIP3小胞
KIF17 Mint NR2B小胞
KIF26A Grb2 GDNF-Retシグナルの抑制
KIFC2 未同定 多胞体様の膜小器官
Dyneins
DHC1 LIS1-NUDEL 神経細胞移動
HAP1 脳由来神経栄養因子(BDNF)小胞
Gephyrin グリシン受容体
Rab5エンドゾーム
RILP-Rab7 NGF-TrkAシグナリングエンドゾーム
RILP-Rab7? p75, TrkB
神経栄養因子受容体 神経栄養因子受容体
Bassoon アクティブゾーンタンパク質小胞

略称: C, 線虫(C. elegans); D, ショウジョウバエ(D. melanogaster).

遅い軸索輸送

 遅い軸索輸送では、チュブリンアクチンニューロフィラメントタンパク質などの細胞骨格タンパク質が運ばれており、軸索の伸長、維持にとって極めて重要である。遅い輸送には、KIF5によるHsc70を介した輸送が報告されている[3]。KIF5は軽鎖(KLC)を介して膜小器官に結合し速い輸送も行うが、Hsc70が軽鎖に結合することによって細胞骨格タンパクなどの細胞質タンパクと結合し、遅い輸送を行う[3]

関連項目

参考文献

  1. Hirokawa, N., Noda, Y., Tanaka, Y., & Niwa, S. (2009).
    Kinesin superfamily motor proteins and intracellular transport. Nature reviews. Molecular cell biology, 10(10), 682-96. [PubMed:19773780] [WorldCat] [DOI]
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 Hirokawa, N., Niwa, S., & Tanaka, Y. (2010).
    Molecular motors in neurons: transport mechanisms and roles in brain function, development, and disease. Neuron, 68(4), 610-38. [PubMed:21092854] [WorldCat] [DOI]
  3. 3.0 3.1 Terada, S., Kinjo, M., Aihara, M., Takei, Y., & Hirokawa, N. (2010).
    Kinesin-1/Hsc70-dependent mechanism of slow axonal transport and its relation to fast axonal transport. The EMBO journal, 29(4), 843-54. [PubMed:20111006] [PMC] [WorldCat] [DOI]