「歯状回」の版間の差分

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503 バイト追加 、 2014年3月23日 (日)
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{{box|text=
{{box|text= [[海馬体]]の亜領域の一つで、海馬への主要な入力を担う。成体においても神経細胞の新生を生じる部位としても知られている。ここではもっとも解明の進んでいる[[齧歯目]]([[ラット]]および[[マウス]])の歯状回について記載する。(編集部コメント:抄録は500字程度で御願い致します)。
 海馬体の亜領域の一つで、海馬への主要な入力を担う。成体においても神経細胞の新生を生じる部位としても知られている。ここではもっとも解明の進んでいる齧歯目(ラットおよびマウス)の歯状回について記載する。
}}
}}
==歯状回とは==
(編集部コメント:イントロを御願い致します。長さは任意。)


== 細胞種および解剖学的特徴 ==
== 細胞種および解剖学的特徴 ==
(編集部コメント:図があればと思います。石塚先生の[[海馬]]の項目に図がありますが、再利用を御願いする事も可能です。)
(編集部コメント:小見出しをつけ、その関係で文章を前後させてあります)
===細胞構造===
 歯状回は3層から成る。中心層は[[顆粒細胞層]](granule cell layer)であり、歯状回の主要な細胞である[[顆粒細胞]](granule cell)が存在する。げっ歯類の顆粒細胞層はV字またはU字型をしている。V字型かU字型かは、中隔-側頭軸に沿って異なる(中隔核側がよりV字型)。顆粒細胞の細胞体は直径約10 μmの小さなラグビー球形であり、細胞体層の厚みの方向に4~6個並んでいる。顆粒細胞の樹状突起は細胞体層と垂直の方向(分子層の方向)に伸び、そこで数種の細胞からシナプス入力を受けている。樹状突起はラグビー球状の細胞体の尖頂部から通常一方向に伸びるため、顆粒細胞は単極細胞(monopolar neuron)と呼ばれることもある。[[海馬]][[CA1]]や[[CA3]]の[[錐体細胞]]が[[てんかん]]に脆弱であるのに対し、重度のてんかん患者でも顆粒細胞は残存していることが多い。
 顆粒細胞層の、直上および直下には、きわめて低い細胞密度の[[分子層]](molecular layer)と、細胞が疎らに散見される[[多形細胞層]](polymorphic cell layer)が、それぞれ位置している。多形細胞層は[[門]](hilus)と呼ばれることもある。歯状回門のニューロンは全て歯状回内に局所投射する[[インターニューロン]]のみである。
===入力===
 多くの感覚情報は、[[嗅内皮質]]を通じて海馬に流れ込む。そのため、嗅内皮質を海馬の[[三シナプス性回路]](嗅内皮質第2層→歯状回→CA3野→CA1野→嗅内皮質第5層)の起始点と考えることが多い。嗅内皮質は6層構造をとる。そして、嗅内皮質第2層からの[[貫通線維]](perforant path)を通じて、歯状回へと入力が送られる。貫通線維の名は、その[[軸索]]が[[海馬支脚]]および[[海馬溝]](hippocampal fissure, hippocampal sulcus)を貫通して、歯状回およびCA3野に投射していることに由来する。[[内側貫通線維]]([[内側嗅内皮質]]から起始する)および[[外側貫通線維]]([[外側嗅内皮質]]から起始する)はそれぞれ、歯状回分子層の中間層および外側(表層側)3分の1の部分に投射する。これら二種の貫通線維は、CA3野や[[CA2]]野の網状分子層にも同様の層状パターンを形成している。


 歯状回は3層から成る。中心層は顆粒細胞層(granule cell layer)であり、歯状回の主要な細胞は顆粒細胞(granule cell)が存在する。[[海馬]][[CA1]][[CA3]]の[[錐体細胞]]がてんかんに脆弱であるのに対し、重度のてんかん患者でも顆粒細胞は残存していることが多い。顆粒細胞層の、直上および直下には、きわめて低い細胞密度の分子層(molecular layer)と、細胞が疎らに散見される多形細胞層(polymorphic cell layer)が、それぞれ位置している。多形細胞層は門(hilus)と呼ばれることもある。
 分子層の内側3分の1の部分で見られるシナプス入力はすべて[[歯状回門]]からのものである<ref name=ref30><pubmed>13385382</pubmed></ref> <ref name=ref31><pubmed>7225870</pubmed></ref>。この投射は同側だけでなく対側の歯状回にも由来しているので、同側連合交連投射(ipsilateral associational-commissural [[projection]])と呼ばれている。この投射は[[苔状細胞]]の軸索側枝であると考えられている<ref name=ref31 />。


 多くの感覚情報は、[[嗅内皮質]]を通じて海馬に流れ込む。そのため、嗅内皮質を海馬の三[[シナプス]]性回路(嗅内皮質第2層→歯状回→CA3野→CA[[1野]]→嗅内皮質第5層)の起始点と考えることが多い。嗅内皮質は6層構造をとる。そして、嗅内皮質第2層からの[[貫通線維]](perforant path)を通じて、歯状回へと入力が送られる。貫通線維の名は、その軸索が海馬支脚および海馬溝(hippocampal fissure, hippocampal sulcus)を貫通して、歯状回およびCA3野に投射していることに由来する。内側貫通線維([[内側嗅内皮質]]から起始する)および外側嗅内皮質(外側嗅内皮質から起始する)はそれぞれ、歯状回分子層の中間層および外側(表層側)3分の1の部分に投射する。これら二種の貫通線維は、CA3野や[[CA2]]野の網状分子層にも同様の層状パターンを形成している。分子層の内側3分の1の部分で見られるシナプス入力はすべて歯状回門からのものである<ref name=ref30><pubmed>13385382</pubmed></ref> <ref name=ref31><pubmed>7225870</pubmed></ref>。この投射は同側だけでなく対側の歯状回にも由来しているので、同側連合交連投射(ipsilateral associational-commissural [[projection]])と呼ばれている。この投射は苔状細胞の軸索側枝であると考えられている<ref name=ref31 />。
===出力===
 顆粒細胞の軸索はその[[シナプス終末]]の独特な外見から、[[苔状線維]](mossy fiber)と呼ばれる。苔状線維は細胞体の基底部(樹状突起とは反対の方向)から起始し、歯状回門内へと伸長している。苔状線維は苔状細胞(mossy cell)など、いくつかのニューロンに投射している。この苔状細胞は、他の中隔-側頭軸にある同側および対側の歯状回でシナプスを形成している。苔状線維は歯状回門を出ると束になり、CA3野の透明層(stratum lucidum)に入り込む。歯状回顆粒細胞は、CA3野錐体細胞の近位樹状突起に投射している。


 歯状回顆粒細胞は、苔状線維を通じてCA3野錐体細胞の近位樹状突起に投射している。顆粒細胞はまた歯状回門の苔状細胞に投射している。この苔状細胞は、他の中隔-側頭軸にある同側および対側の歯状回でシナプスを形成している。


 顆粒細胞の細胞体は直径約10 μmの小さなラグビー球形であり、細胞体層の厚みの方向に4~6個並んでいる。げっ歯類の顆粒細胞層はV字またはU字型をしている。V字型かU字型かは、中隔-側頭軸に沿って異なる(中隔核側がよりV字型)。顆粒細胞の樹状突起は細胞体層と垂直の方向(分子層の方向)に伸び、そこで数種の細胞からシナプス入力を受けている。樹状突起はラグビー球状の細胞体の尖頂部から通常一方向に伸びるため、顆粒細胞は単極細胞(monopolar neuron)と呼ばれることもある。顆粒細胞の軸索はその[[シナプス終末]]の独特な外見から、苔状線維(mossy fiber)と呼ばれる。苔状線維は細胞体の基底部(樹状突起とは反対の方向)から起始し、歯状回門内へと伸長している。苔状線維は苔状細胞(mossy cell)など、いくつかのニューロンに投射している。苔状線維は歯状回門を出ると束になり、CA3野の透明層(stratum lucidum)に入り込む。歯状回門のニューロンは全て歯状回内に局所投射するインターニューロンのみである。


 歯状回において、もっとも重要なインターニューロンは籠細胞(basket cell)である。籠細胞は、顆粒細胞層と歯状回門の境界付近に存在し、顆粒細胞の細胞体に投射している。籠細胞には少なくとも5つの亜種(錐体籠細胞(pyramidal basket cell)、紡錘籠細胞(fusiform basket cell)、水平籠細胞(horizontal basket cell)、逆紡錘籠細胞(inverted fusiform basket cell)、分子層籠細胞(molecular layer basket cell))に分類されるとされる<ref name=ref32><pubmed>6619905</pubmed></ref>。分子層にもインターニューロンは存在する。その中でも、軸索軸索間細胞(axo-axonic cell)は興味深い。軸索が顆粒細胞の軸索起始部に投射するために、こう呼ばれている<ref name=ref33><pubmed>6616249</pubmed></ref>。歯状回門にも多種のインターニューロンが存在する。歯状回門の中だけに投射するインターニューロンもあれば、顆粒細胞層や分子層に投射するインターニューロンも存在する。この中に、苔状細胞(mossy cell)と呼ばれるインターニューロンがある<ref name=ref18><pubmed>730852</pubmed></ref>。これは[[興奮性]]ニューロンであり、同側および対側の歯状回の分子層だけに投射する。これを「興奮性インターニューロン」などと呼ぶ研究者もいるが、両側の海馬に投射するその長い軸索は、いわゆるインターニューロンの古典的定義には反する。実際に、苔状細胞は局所的に投射すると言うよりも、歯状回の中隔-側頭軸方向の遠くに投射する傾向がある。したがって、苔状細胞は、伝統的な定義ではインターニューロンにも主要細胞にも属さない。
 歯状回において、もっとも重要なインターニューロンは籠細胞(basket cell)である。籠細胞は、顆粒細胞層と歯状回門の境界付近に存在し、顆粒細胞の細胞体に投射している。籠細胞には少なくとも5つの亜種(錐体籠細胞(pyramidal basket cell)、紡錘籠細胞(fusiform basket cell)、水平籠細胞(horizontal basket cell)、逆紡錘籠細胞(inverted fusiform basket cell)、分子層籠細胞(molecular layer basket cell))に分類されるとされる<ref name=ref32><pubmed>6619905</pubmed></ref>。分子層にもインターニューロンは存在する。その中でも、軸索軸索間細胞(axo-axonic cell)は興味深い。軸索が顆粒細胞の軸索起始部に投射するために、こう呼ばれている<ref name=ref33><pubmed>6616249</pubmed></ref>。歯状回門にも多種のインターニューロンが存在する。歯状回門の中だけに投射するインターニューロンもあれば、顆粒細胞層や分子層に投射するインターニューロンも存在する。この中に、苔状細胞(mossy cell)と呼ばれるインターニューロンがある<ref name=ref18><pubmed>730852</pubmed></ref>。これは[[興奮性]]ニューロンであり、同側および対側の歯状回の分子層だけに投射する。これを「興奮性インターニューロン」などと呼ぶ研究者もいるが、両側の海馬に投射するその長い軸索は、いわゆるインターニューロンの古典的定義には反する。実際に、苔状細胞は局所的に投射すると言うよりも、歯状回の中隔-側頭軸方向の遠くに投射する傾向がある。したがって、苔状細胞は、伝統的な定義ではインターニューロンにも主要細胞にも属さない。

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