「ロドプシン」の版間の差分

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 レチナールは有機溶媒中では380 nm付近に吸収極大を示すが、オプシン中のリシン残基とプロトン化したシッフ塩基を形成すると、500 nm付近に吸収極大がシフトする。有機溶媒中のプロトン化シッフ塩基は約440 nmに吸収極大を示す。そこで、440 nmからタンパク質の作用によって変化する差分を「オプシンシフト(Opsin shift)」と呼ぶ(図4a)。 このように、ロドプシンの吸収極大はプロトン化したレチナールシッフ塩基の吸収極大がまわりのアミノ酸残基によって調節されたものである<ref>''K Nakanishi, V Baloghair, M Arnaboli, K Tsujimoto, and B Honig'''<br>An External Point-Charge Model for Bacteriorhodopsin to Account for Its Purple Color<br>''J Am Chem Soc'':1980</ref>。多くの動物のロドプシンは500nm付近に吸収極大を示すが、深海など極端な光環境下で生息する生物はそれぞれの光環境に適した吸収極大を示す。 (この段落と「 シッフ塩基プロトン・対イオン」の段落は一部重複致しますので、整理を御願い出来ればと存じます。)
 レチナールは有機溶媒中では380 nm付近に吸収極大を示すが、オプシン中のリシン残基とプロトン化したシッフ塩基を形成すると、500 nm付近に吸収極大がシフトする。有機溶媒中のプロトン化シッフ塩基は約440 nmに吸収極大を示す。そこで、440 nmからタンパク質の作用によって変化する差分を「オプシンシフト(Opsin shift)」と呼ぶ(図4a)。 このように、ロドプシンの吸収極大はプロトン化したレチナールシッフ塩基の吸収極大がまわりのアミノ酸残基によって調節されたものである<ref>''K Nakanishi, V Baloghair, M Arnaboli, K Tsujimoto, and B Honig'''<br>An External Point-Charge Model for Bacteriorhodopsin to Account for Its Purple Color<br>''J Am Chem Soc'':1980</ref>。多くの動物のロドプシンは500nm付近に吸収極大を示すが、深海など極端な光環境下で生息する生物はそれぞれの光環境に適した吸収極大を示す。 (この段落と「 シッフ塩基プロトン・対イオン」の段落は一部重複致しますので、整理を御願い出来ればと存じます。)


 オプシンシフト以外にもロドプシンはレチナールの種類を変えることによって吸収スペクトルを変えることができる。多くの脊椎動物は通常ビタミンA1(retinal)を用いるが、[[wikipedia:JA:魚類|魚類]]、[[wikipedia:JA:両生類|両生類]]や[[wikipedia:JA:爬虫類|爬虫類]]のなかには[[wikipedia:JA:A2 retinal|A2 retinal]] (3,4-dehydroretinal) (構造式から考えると3,4-didehydroretinalではないでしょうか?図4bも御確認下さい)を用いるものもいる。 共役二重結合系が長いのでA2レチナールはA1に比べてより長波長に吸収を持つ(図4b)。従ってA1/A2の視物質は同じタンパク質でもそれぞれ違う色をもつ。Opsin+A1 retinalの視物質がRhodopsin(rhod=紅)と呼ばれるのに対してOpsin+A2 retinalはPorphyropsin(porphyr=紫)と呼ばれる(無脊椎動物の視物質ではA1, A2 retinalの他にA3([[wikipedia:JA:3-hydroxyretina|3-hydroxyretina]])やA4([[wikipedia:JA:4-hydroxyretinal|4-hydroxyretinal]]) retinalが用いられる。図4c)カエル幼生([[wikipedia:JA:オタマジャクシ|オタマジャクシ]])のオプシンがA2レチナールを発色団とし、成体(カエル)になるとA1レチナールを発色団とする事が知られている。つまり、オタマジャクシは、濁った淡水でより透過に優れた長波長の光を利用するためにA2レチナールを利用していると考えられる。また、魚類(特に淡水魚)などは2種類のレチナールを持ち、季節変動などの環境要因によってA1/A2レチナールを使い分けていると考えられている。
 オプシンシフト以外にもロドプシンはレチナールの種類を変えることによって吸収スペクトルを変えることができる。多くの脊椎動物は通常ビタミンA1(retinal)を用いるが、[[wikipedia:JA:魚類|魚類]]、[[wikipedia:JA:両生類|両生類]]や[[wikipedia:JA:爬虫類|爬虫類]]のなかには[[wikipedia:JA:A2 retinal|A2 retinal]] (3,4-dehydroretinal) (構造式から考えると3,4-didehydroretinalではないでしょうか?図4bも御確認下さい)を用いるものもいる。 共役二重結合系が長いのでA2レチナールはA1に比べてより長波長に吸収を持つ(図4b)。従ってA1/A2の視物質は同じタンパク質でもそれぞれ違う色をもつ。Opsin+A1 retinalの視物質がRhodopsin(rhod=紅)と呼ばれるのに対してOpsin+A2 retinalはPorphyropsin(porphyr=紫)と呼ばれる。カエル幼生([[wikipedia:JA:オタマジャクシ|オタマジャクシ]])のオプシンがA2レチナールを発色団とし、成体(カエル)になるとA1レチナールを発色団とする事が知られている。つまり、オタマジャクシは、濁った淡水でより透過に優れた長波長の光を利用するためにA2レチナールを利用していると考えられる。また、魚類(特に淡水魚)などは2種類のレチナールを持ち、季節変動などの環境要因によってA1/A2レチナールを使い分けていると考えられている。 無脊椎動物の視物質ではA1, A2 retinalの他にA3([[wikipedia:JA:3-hydroxyretina|3-hydroxyretina]])やA4([[wikipedia:JA:4-hydroxyretinal|4-hydroxyretinal]]) retinalが用いられる(図4c)。
 
[[Image:Rhodopsin spectrum and retinal.png|thumb|right|300px|'''図4:ロドプシンの吸収スペクトル'''<br />'''a:'''[[wikipedia:JA:有機溶媒|有機溶媒]]中のRetinalは380nmに吸収極大(λmax)を示すが、アミノ基を持つ化合物(例えば[[wikipedia:JA:プロピルアミン|プロピルアミン]])とシッフ塩基を形成してプロトン化されると、λmaxが440nmまでシフトする。さらにロドプシン中ではまわりのアミノ酸残基との相互作用によって、λmaxが約500 nmまでシフトする。この440nmからの差分をオプシンシフトと呼ぶ。ロドプシンの吸収スペクトルは可視部の吸収(αバンド)の他に、紫外領域に小さな吸収(βバンド)、280nm付近にタンパク質の[[wikipedia:JA:芳香族|芳香族]]アミノ酸残基に由来する吸収(γバンド)を示すのが特徴である(αバンド、βバンド、γバンドを図中に示して頂けば幸いです)。<br />'''b:'''ロドプシンにはA1、A2の2種類のレチナールが知られている。A2レチナールより構成するものを特にポルフィロプシンとよび、A1レチナールよりも共役二重結合系が長いのでより長波長の光を吸収することができる。<br />'''c:'''無脊椎動物の視物質にはA1、A2レチナールの他にA3やA4レチナールを用いるものもある。]]


[[Image:Rhodopsin spectrum and retinal.png|thumb|right|300px|'''図4:ロドプシンの吸収スペクトル'''<br>'''a:'''[[wikipedia:JA:有機溶媒|有機溶媒]]中のRetinalは380nmに吸収極大(λmax)を示すが、アミノ基を持つ化合物(例えば[[wikipedia:JA:プロピルアミン|プロピルアミン]])とシッフ塩基を形成してプロトン化されると、λmaxが440nmまでシフトする。さらにロドプシン中ではまわりのアミノ酸残基との相互作用によって、λmaxが約500 nmまでシフトする。この440nmからの差分をオプシンシフトと呼ぶ。ロドプシンの吸収スペクトルは可視部の吸収(αバンド)の他に、紫外領域に小さな吸収(βバンド)、280nm付近にタンパク質の[[wikipedia:JA:芳香族|芳香族]]アミノ酸残基に由来する吸収(γバンド)を示すのが特徴である(αバンド、βバンド、γバンドを図中に示して頂けば幸いです)。<br />'''b:'''ロドプシンにはA1、A2の2種類のレチナールが知られている。A2レチナールより構成するものを特にポルフィロプシンとよび、A1レチナールよりも共役二重結合系が長いのでより長波長の光を吸収することができる。<br />'''c:'''無脊椎動物の視物質にはA1、A2レチナールの他にA3やA4レチナールを用いるものもある。]]


==光反応過程 ==
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