「蝸牛」の版間の差分

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== 内リンパ腔電位 ==
== 内リンパ腔電位 ==
 上述のように,中心階は内リンパ液に満たされている。内リンパ液はK<sup>+</sup>濃度が高く,これは[[Na+-K+ ATPase|Na<sup>+</sup>-K<sup>+</sup> ATPase]]と[[Na+-K+-Cl-共輸送機構|Na<sup>+</sup>-K<sup>+</sup>-Cl<sup>-</sup>共輸送機構]]の働きを介して血管条の辺縁細胞からK<sup>+</sup>が分泌されることにより形成される。さらに,中心階は前庭階や皷室階に対して約80 mVほど高い電位を持っている。この電位は内リンパ腔電位と呼ばれ,Na<sup>+</sup>-K<sup>+</sup> ATPaseの働きにより血管条の基底細胞および[[中間細胞]]で形成される。この内リンパ腔電位は受容器電流の[[駆動電圧]]を大きくすることにより,聴覚受容の感度を高める働きがある。有毛細胞の受容器電流はK<sup>+</sup>によって担われており,その[[平衡電位]]は0 mVである。有毛細胞の膜電位は-60 mV程度であることから,受容器電流の駆動電圧は140 mVとなる。一方,平衡感覚に関わる前庭器官では内リンパ腔電位が0 mVであることから,受容器電流の駆動電圧は60 mVとなる。
 上述のように,中心階は内リンパ液に満たされている。内リンパ液はK<sup>+</sup>濃度が高く,これは[[Na+-K+ ATPase|Na<sup>+</sup>-K<sup>+</sup> ATPase]]と[[Na+-K+-Cl-共輸送機構|Na<sup>+</sup>-K<sup>+</sup>-Cl<sup>-</sup>共輸送機構]]の働きを介して血管条の辺縁細胞からK<sup>+</sup>が分泌されることにより形成される。さらに,中心階は前庭階や皷室階に対して約80 mVほど高い電位を持っている。この電位は内リンパ腔電位と呼ばれ,Na<sup>+</sup>-K<sup>+</sup> ATPaseの働きにより血管条の基底細胞および[[中間細胞]]で形成される。この内リンパ腔電位は受容器電流の[[駆動電圧]]を大きくすることにより,聴覚受容の感度を高める働きがある。有毛細胞の受容器電流はK<sup>+</sup>によって担われており,その[[平衡電位]]は0 mVである。有毛細胞の膜電位は-60 mV程度であることから,受容器電流の駆動電圧は140 mVとなる。一方,平衡感覚に関わる前庭器官では内リンパ腔電位が0 mVであることから,受容器電流の駆動電圧は60 mVとなる。


== 蝸牛マイクロホン電位 ==
== 蝸牛マイクロホン電位 ==
 音刺激により内耳および内耳周辺では刺激音を忠実に再現する蝸牛マイクロホン電位が記録される。この電位は[[wikipedia:JA:音圧|音圧]]に比例して増大し,音刺激に対して特別な[[閾値]]や潜時を示さない。蝸牛器官で記録されるマイクロホン電位は有毛細胞の頂部で極性が変化する。現在では,このマイクロホン電位は受容器電流により生じるものであり,数の上で多い外有毛細胞の活動に起因すると考えられている。また,この外有毛細胞の活動は[[wikipedia:JA:鼓膜|鼓膜]]の外から音としても記録することができ,[[耳音響放射]]と呼ばれ,[[wikipedia:JA:新生児|新生児]]の内耳機能検査にも利用されている。
 音刺激により内耳および内耳周辺では刺激音を忠実に再現する蝸牛マイクロホン電位が記録される。この電位は[[wikipedia:JA:音圧|音圧]]に比例して増大し,音刺激に対して特別な[[閾値]]や潜時を示さない。蝸牛器官で記録されるマイクロホン電位は有毛細胞の頂部で極性が変化する。現在では,このマイクロホン電位は受容器電流により生じるものであり,数の上で多い外有毛細胞の活動に起因すると考えられている。また,この外有毛細胞の活動は[[wikipedia:JA:鼓膜|鼓膜]]の外から音としても記録することができ,[[耳音響放射]]と呼ばれ,[[wikipedia:JA:新生児|新生児]]の内耳機能検査にも利用されている。


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
<references />
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