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oligodendrocyte
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オリゴデンドロサイト  
オリゴデンドロサイト  
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 オリゴデンドロサイトは中枢神経系内のグリア細胞の一つで、ミエリン(髄鞘)形成を担う。オリゴデンドログリア、稀突起膠細胞ともよばれる。オリゴデンドロサイトは、ミエリン形成により跳躍伝導を誘導しインパルスの伝導速度を高めることが大きな機能である。中枢神経系全体に広く分布するが、存在する場所によって白質内のものはintrafascicular oligodendrocyte、灰白質内に位置してニューロンの細胞体と密着しているものはperineuronal oligodendrocyteに分けられる。ミエリンを形成しないオリゴデンドロサイトで神経細胞とコンタクトを持っている物は、ニューロンの代謝にかかわると考えられている<ref><pubmed>20846325</pubmed></ref>。  
 オリゴデンドロサイトは中枢神経系内のグリア細胞の一つで、ミエリン(髄鞘)形成を担う。オリゴデンドログリア、稀突起膠細胞ともよばれる。オリゴデンドロサイトは、ミエリン形成により跳躍伝導を誘導しインパルスの伝導速度を高めることが大きな機能である。中枢神経系全体に広く分布するが、存在する場所によって白質内のものはintrafascicular oligodendrocyte、灰白質内に位置してニューロンの細胞体と密着しているものはperineuronal oligodendrocyteに分けられる。ミエリンを形成しないオリゴデンドロサイトで神経細胞とコンタクトを持っている物は、ニューロンの代謝にかかわると考えられている<ref><pubmed>20846325</pubmed></ref>。  


目次  
目次    
 
 1.歴史  
 
 2.形態      
 
  2.1 組織像     
 
  2.2 微細形態     
 
  2.3 突起の数     
 
  2.4マーカー分子      
 
    2.4.1ガラクトセレブロシドとスルファチド      
 
    2.4.2ミエリンタンパク      
 
    2.4.3その他のマーカー  
 
 3.機能  
 
 4.付録  


 1.歴史  
 2.形態
    2.1 組織像     
   2.2 微細形態     
    2.3 突起の数     
    2.4マーカー分子         
      2.4.1ガラクトセレブロシドとスルファチド         
      2.4.2ミエリンタンパク        
     2.4.3その他のマーカー    
  3.機能  
  4.付録  
 5.関連項目  
 5.関連項目  
 6.参考文献  
 6.参考文献  


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歴史  オリゴデンドロサイトは、Pio Del Rio-Hortega (ピオ・デル・リオ-オルテガ)が炭酸銀法と呼ばれる鍍銀染色法を開発して見出した。当時、すでにニューロンとアストログリアは見つかっており、アストログリアより少ない突起を持つグリア細胞という意味で名前が付けられた&lt;ref&gt;'''工藤佳久 '''&lt;br&gt;脳とグリア細胞 知りたいサイエンス092&lt;br&gt;''技術評論社'':2011&lt;/ref&amp;gt;'''Verkhratsky A, and Butt A.'''&lt;br&gt;Glial Neurobiology, a textbook&lt;br&gt;''Wiley'':2007&lt;/ref&gt;。現在では、発見されていた当時に考えられていたより多くの突起を持つことが明らかにされている(図1)。  
歴史  オリゴデンドロサイトは、Pio Del Rio-Hortega (ピオ・デル・リオ-オルテガ)が炭酸銀法と呼ばれる鍍銀染色法を開発して見出した。当時、すでにニューロンとアストログリアは見つかっており、アストログリアより少ない突起を持つグリア細胞という意味で名前が付けられた&lt;ref&gt;'''工藤佳久 '''&lt;br&gt;脳とグリア細胞 知りたいサイエンス092&lt;br&gt;''技術評論社'':2011&lt;/ref&gt;&lt;ref&gt;&lt;ref&gt;'''Verkhratsky A, and Butt A.'''&lt;br&gt;Glial Neurobiology, a textbook&lt;br&gt;''Wiley'':2007&lt;/ref&gt;。現在では、発見されていた当時に考えられていたより多くの突起を持つことが明らかにされている(図1)。  


形態  
形態  


 組織像: オリゴデンドロサイトは、ヘマトキシリン・エオジン染色法やニッスル染色による光学顕微鏡観察では、好塩基性色素で濃く染まる丸い核を持つ細胞として認められる[4]。このような細胞は白質に多くみられ、これがintrafascicular oligodendrocye(図1A)と呼ばれるものである。一方、灰白質内でニューロンに密着しているように観察されるものがperineuronal oligodendrocyteである。ミクログリアもオリゴデンドロサイトと同様にニューロン細胞体に密着している物が少なからずあるといわれている。このような細胞を、組織切片上で厳密に同定・区別するには、ミエリンタンパクをマーカーとしたin situ hybridizationや電顕観察が用いられる[5]。ミエリン鞘は、通常は細胞体から伸びる突起の先端に形成されるため、細胞体から離れたところに位置する(後述)。  
 組織像: オリゴデンドロサイトは、ヘマトキシリン・エオジン染色法やニッスル染色による光学顕微鏡観察では、好塩基性色素で濃く染まる丸い核を持つ細胞として認められる</ref>http://pd21.cihbs.niigata-u.ac.jp/show.php/%E8%84%B3%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0%E3%81%A8%E7%B4%B0%E8%83%9E/Oligodendrocyte</ref>。このような細胞は白質に多くみられ、これがintrafascicular oligodendrocye(図1A)と呼ばれるものである。一方、灰白質内でニューロンに密着しているように観察されるものがperineuronal oligodendrocyteである。ミクログリアもオリゴデンドロサイトと同様にニューロン細胞体に密着している物が少なからずあるといわれている。このような細胞を、組織切片上で厳密に同定・区別するには、ミエリンタンパクをマーカーとしたin situ hybridizationや電顕観察が用いられる<ref><pubmed>19390819 </pubmed></ref>。ミエリン鞘は、通常は細胞体から伸びる突起の先端に形成されるため、細胞体から離れたところに位置する(後述)。  


 微細形態:電子顕微鏡観察に基づく典型的なオリゴデンドロサイトは、細胞質も核も電子密度が高く暗調である(図2)。ゴルジ装置、粗面小胞体、微小管はよく発達しており(図1B)、中心小体がみられることもある。しかし、アストロサイトでみられるグリコーゲン顆粒や中間系フィラメントは、オリゴデンドロサイトは持たないとされている。オリゴデンドロサイトには、ミエリンを形成しないものがあることやミエリンを形成していても、細胞体から離れたところに位置するため、ミエリンの有無は必ずしも微細形態上の特徴とはならない。核内の異染色質および正染色質ともに暗調であること、粗面小胞体が層板状に見られること、ゴルジ装置は比較的大きい腔を持つことなどが形態的特徴である(図2B)。一方、ミエリン形成を始めたばかりのオリゴデンドロサイトは、電子密度は低く明調である[6][7] 突起の数;オリゴデンドロサイトが見いだされた当時は、突起のすべてを含む細胞の全体像を染めだすことが難しかったため、突起の少ない神経膠細胞ということでこの名前が付けられた。見出された当初から、細胞によって伸ばす突起の数が異なることが指摘されており、伸ばす突起の数が多い方からI型からIV型に分類されていた1)。一方、1980年代の後半から、オリゴデンドロサイトに蛍光色素や西洋わさびの過酸化酵素(horseradish peroxidase; HRP)を細胞内注入することで、その全体像が明らかにされるようになってきた7)。また、電子顕微鏡観察でミエリン形成オリゴデンドロサイトを三次元再構築することによっても同様に明らかにされた。最近では、GFPやLacZなどのレポータータンパクをミエリンタンパクのプロモーターで発現させることにより、その全体像が示されている。これらの解析の結果、一つのオリゴデンドロサイトは1本から40~50本の軸索に対してミエリンを形成し、平均して15の突起を伸ばしていることが明らかにされた[4][8][9] 。したがって、当初考えられていたより多い突起を伸ばしていることが示された。中には突起を伸ばさずSchwann細胞のように細胞体が軸索に取り巻いて髄鞘を形成するものがあることもわかった[9]。  
 微細形態:電子顕微鏡観察に基づく典型的なオリゴデンドロサイトは、細胞質も核も電子密度が高く暗調である(図2)。ゴルジ装置、粗面小胞体、微小管はよく発達しており(図1B)、中心小体がみられることもある。しかし、アストロサイトでみられるグリコーゲン顆粒や中間系フィラメントは、オリゴデンドロサイトは持たないとされている。オリゴデンドロサイトには、ミエリンを形成しないものがあることやミエリンを形成していても、細胞体から離れたところに位置するため、ミエリンの有無は必ずしも微細形態上の特徴とはならない。核内の異染色質および正染色質ともに暗調であること、粗面小胞体が層板状に見られること、ゴルジ装置は比較的大きい腔を持つことなどが形態的特徴である(図2B)。一方、ミエリン形成を始めたばかりのオリゴデンドロサイトは、電子密度は低く明調である<ref>'''Peters A, Palay SL, Webster H de F'''<br>Fine structure of the nervous system. 3rd ed.,<br>''Oxford Univ'':1991</ref><ref>'''森司郎'''<br>稀突起後細胞、小膠細胞.「神経:人体組織学8」(橋本、山元 編)<br>''朝倉書店'':1984</ref> 
突起の数;オリゴデンドロサイトが見いだされた当時は、突起のすべてを含む細胞の全体像を染めだすことが難しかったため、突起の少ない神経膠細胞ということでこの名前が付けられた。見出された当初から、細胞によって伸ばす突起の数が異なることが指摘されており、伸ばす突起の数が多い方からI型からIV型に分類されていた1)。一方、1980年代の後半から、オリゴデンドロサイトに蛍光色素や西洋わさびの過酸化酵素(horseradish peroxidase; HRP)を細胞内注入することで、その全体像が明らかにされるようになってきた7)。また、電子顕微鏡観察でミエリン形成オリゴデンドロサイトを三次元再構築することによっても同様に明らかにされた。最近では、GFPやLacZなどのレポータータンパクをミエリンタンパクのプロモーターで発現させることにより、その全体像が示されている。これらの解析の結果、一つのオリゴデンドロサイトは1本から40~50本の軸索に対してミエリンを形成し、平均して15の突起を伸ばしていることが明らかにされた[4][8][9] 。したがって、当初考えられていたより多い突起を伸ばしていることが示された。中には突起を伸ばさずSchwann細胞のように細胞体が軸索に取り巻いて髄鞘を形成するものがあることもわかった[9]。  


 マーカー分子;オリゴデンドロサイトはミエリン形成をおこなうことから、ミエリンタンパクやミエリンに含まれる脂質を特異的に発現する。したがって、そのような分子がマーカーとなりうる。  
 マーカー分子;オリゴデンドロサイトはミエリン形成をおこなうことから、ミエリンタンパクやミエリンに含まれる脂質を特異的に発現する。したがって、そのような分子がマーカーとなりうる。  
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関連項目  ミエリン  オリゴデンドロサイト前駆細胞   参考文献  
関連項目  ミエリン  オリゴデンドロサイト前駆細胞   参考文献  


1) Takasaki C, Yamasaki M, Uchigashima M, Konno K, Yanagawa Y, Watanabe M. Cytochemical and cytological properties of perineuronal oligodendrocytes in the mouse cortex. Eur J Neurosci. 2010 Oct;32(8):1326-36.   20846325
1) Takasaki C, Yamasaki M, Uchigashima M, Konno K, Yanagawa Y, Watanabe M. Cytochemical and cytological properties of perineuronal oligodendrocytes in the mouse cortex. Eur J Neurosci. 2010 Oct;32(8):1326-36.   20846325  


2) 工藤佳久 (2011) 脳とグリア細胞 知りたいサイエンス092 技術評論社. 
2) 工藤佳久 (2011) 脳とグリア細胞 知りたいサイエンス092 技術評論社.   


3) Verkhratsky A, and Butt A. (2007) Glial Neurobiology, a textbook. Wiley.  
3) Verkhratsky A, and Butt A. (2007) Glial Neurobiology, a textbook. Wiley.  


4) 新潟大学脳研究所e-learning 神経病理より、オリゴデンドロサイト
4) 新潟大学脳研究所e-learning 神経病理より、オリゴデンドロサイト  


http://pd21.cihbs.niigata-u.ac.jp/show.php/%E8%84%B3%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0%E3%81%A8%E7%B4%B0%E8%83%9E/Oligodendrocyte
http://pd21.cihbs.niigata-u.ac.jp/show.php/%E8%84%B3%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0%E3%81%A8%E7%B4%B0%E8%83%9E/Oligodendrocyte  


5) Ono K, Takebayashi H, Ikenaka K. (2009) Olig2 transcription factor in the developing and injured forebrain; cell lineage and glial development. Mol Cells. 2009 Apr 30;27(4):397-401.  19390819  
5) Ono K, Takebayashi H, Ikenaka K. (2009) Olig2 transcription factor in the developing and injured forebrain; cell lineage and glial development. Mol Cells. 2009 Apr 30;27(4):397-401.  19390819  
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6) Peters A, Palay SL, Webster H de F (1991) Fine structure of the nervous system. 3rd ed., Oxford Univ. Press.  
6) Peters A, Palay SL, Webster H de F (1991) Fine structure of the nervous system. 3rd ed., Oxford Univ. Press.  


7) 森司郎 (1984) 稀突起後細胞、小膠細胞.「神経:人体組織学8」(橋本、山元 編)朝倉書店 pp117-132.
7) 森司郎 (1984) 稀突起後細胞、小膠細胞.「神経:人体組織学8」(橋本、山元 編)朝倉書店 pp117-132.  


8) Butt AM, Ransom BR. (1993) Morphology of astrocytes and oligodendrocytes during development in the intact rat optic nerve. J Comp Neurol. 1993 Dec 1;338(1):141-58.  8300897  
8) Butt AM, Ransom BR. (1993) Morphology of astrocytes and oligodendrocytes during development in the intact rat optic nerve. J Comp Neurol. 1993 Dec 1;338(1):141-58.  8300897  
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11) Mikoshiba K, Okano H, Tamura T, Ikenaka K. (1991) Structure and function of myelin protein genes. Annu Rev Neurosci.14:201-17.   1709560  
11) Mikoshiba K, Okano H, Tamura T, Ikenaka K. (1991) Structure and function of myelin protein genes. Annu Rev Neurosci.14:201-17.   1709560  


12) Todorich B, Pasquini JM, Garcia CI, Paez PM, Connor JR. (2008) Oligodendrocytes and myelination: The role of iron. Glia. 2009 Apr 1;57(5):467-78 18837051
12) Todorich B, Pasquini JM, Garcia CI, Paez PM, Connor JR. (2008) Oligodendrocytes and myelination: The role of iron. Glia. 2009 Apr 1;57(5):467-78 18837051  


13) Collello RJ, Pott U, Schwab ME. The role of oligodendrocytes and myelin on axon maturation in the developing rat retinofugal pathway. J Neurosci. 1994 May;14(5 Pt 1):2594-605. 7514208  
13) Collello RJ, Pott U, Schwab ME. The role of oligodendrocytes and myelin on axon maturation in the developing rat retinofugal pathway. J Neurosci. 1994 May;14(5 Pt 1):2594-605. 7514208  
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18) Rompani, S.B., Cepko, C., (2010) A common progenitor for retinal astrocytes and oligodendrocytes. J Neurosci. 2010 Apr 7;30(14):4970-80.  20371817  
18) Rompani, S.B., Cepko, C., (2010) A common progenitor for retinal astrocytes and oligodendrocytes. J Neurosci. 2010 Apr 7;30(14):4970-80.  20371817  


19) 2012年にNeuroglia (Kettenmann and Ransom Editors) 第3版が出版される予定であり、そこにはより詳細な記載が含まれている。  
19) 2012年にNeuroglia(Kettenmann and Ransom Editors) 第3版が出版される予定であり、そこにはより詳細な記載が含まれている。  


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(執筆者:小野勝彦、 担当編集委員:村上富士夫)
(執筆者:小野勝彦、 担当編集委員:村上富士夫)
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