「シナプス接着因子」の版間の差分

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==免疫グロブリンドメインタンパク質==
==免疫グロブリンドメインタンパク質==
===SynCAM===


 [[SynCAM]]は、細胞外に3個の免疫グロブリンドメイン、細胞内に[[PFRM]]とニューレキシン類似のPDZドメイン結合配列をを含む1回膜貫通型タンパク質で、[[wikipedia:JA:脊椎動物|脊椎動物]]では4種類の遺伝子が知られている。カルシウム非依存的なホモ結合およびファミリータンパク質間のヘテロ結合による細胞接着を担う。SynCAM同士の結合強度は[[wikipedia:JA:シアル酸|シアル酸]]などの[[wikipedia:JA:Nグリカン|Nグリカン]]によって制御されている。[[SynCAM1]]の過剰発現で興奮性シナプスの数が増加し、逆に、SynCAM1の欠損により、興奮性シナプスの数や伝達が減少することから、興奮性シナプスの形成維持に寄与していると考えられる。成熟シナプスにおいて、SynCAM1は[[長期抑制現象]] (LTD)を負に制御し、[[空間学習記憶]]に影響を与えることが知られている。他のSynCAMファミリータンパク質の脳での機能はまだあまり解析されていないが、SynCAM2とSynCAM1が強く結合すること、[[SynCAM2]]がシナプスを誘導すること、[[SynCAM3]]/nectin-like molecule1が、[[軸索]]末端とグリア細胞の接触面に存在することから、これらがSynCAM1とシナプス形成において機能的にオーバーラップしている可能性が示唆される。
 [[SynCAM]]は、細胞外に3個の免疫グロブリンドメイン、細胞内に[[PFRM]]とニューレキシン類似のPDZドメイン結合配列をを含む1回膜貫通型タンパク質で、[[wikipedia:JA:脊椎動物|脊椎動物]]では4種類の遺伝子が知られている。カルシウム非依存的なホモ結合およびファミリータンパク質間のヘテロ結合による細胞接着を担う。SynCAM同士の結合強度は[[wikipedia:JA:シアル酸|シアル酸]]などの[[wikipedia:JA:Nグリカン|Nグリカン]]によって制御されている。[[SynCAM1]]の過剰発現で興奮性シナプスの数が増加し、逆に、SynCAM1の欠損により、興奮性シナプスの数や伝達が減少することから、興奮性シナプスの形成維持に寄与していると考えられる。成熟シナプスにおいて、SynCAM1は[[長期抑制現象]] (LTD)を負に制御し、[[空間学習記憶]]に影響を与えることが知られている。他のSynCAMファミリータンパク質の脳での機能はまだあまり解析されていないが、SynCAM2とSynCAM1が強く結合すること、[[SynCAM2]]がシナプスを誘導すること、[[SynCAM3]]/nectin-like molecule1が、[[軸索]]末端とグリア細胞の接触面に存在することから、これらがSynCAM1とシナプス形成において機能的にオーバーラップしている可能性が示唆される。


===LAR-type RPTPs===
 [[LAR-type RPTPs]] (receptor phosphor-tyrosine phosphatase)には、[[LAR]] (leukocyte-associated receptor), [[RPTPσ]], [[RPTPδ]]がある。これらの細胞外領域は、3つの免疫グロブリンドメインと8つのfibronectin type III repeatからなる。LAR-type RPTPsは細胞内で[[αリプリン]]との結合を介してシナプス形成を起こすと考えられている。細胞外の結合相手として[[ネトリンGリガンド]](NGL)と、[[神経栄養因子]]受容体のTrkCが知られており、これらのことからRPTPsがシナプス前終末で機能していることが示唆される。
 [[LAR-type RPTPs]] (receptor phosphor-tyrosine phosphatase)には、[[LAR]] (leukocyte-associated receptor), [[RPTPσ]], [[RPTPδ]]がある。これらの細胞外領域は、3つの免疫グロブリンドメインと8つのfibronectin type III repeatからなる。LAR-type RPTPsは細胞内で[[αリプリン]]との結合を介してシナプス形成を起こすと考えられている。細胞外の結合相手として[[ネトリンGリガンド]](NGL)と、[[神経栄養因子]]受容体のTrkCが知られており、これらのことからRPTPsがシナプス前終末で機能していることが示唆される。


[[NCAM]]/[[L1]]ファミリーもシナプス形成や機能獲得に関与していることが知られる免疫グロブリンドメインタンパク質である。NCAMはシナプス前終末で神経筋接合部の形成、特にリリースサイトの分布を制御したり、シナプス小胞のリサイクルの機能の成熟に重要な役割を果たしていることが知られている。シナプス後終末では、NCAMがクラスタリングすることにより細胞骨格の足場タンパク質が集積し、LTPの形成に寄与していると考えられている <ref><pubmed> 8816705</pubmed></ref> 。


 SidekickやDscamは、網膜においてシナプス形成の位置決定に関与していることが知られている。C. elegansのSyg-1とSyg-2は、1個のニューロン内でシナプスが形成される位置をガイドする役割を果たしている。
===NCAM/L1===
 [[NCAM]]/[[L1]]ファミリーもシナプス形成や機能獲得に関与していることが知られる免疫グロブリンドメインタンパク質である。NCAMはシナプス前終末で神経筋接合部の形成、特にリリースサイトの分布を制御したり、シナプス小胞のリサイクルの機能の成熟に重要な役割を果たしていることが知られている。シナプス後終末では、NCAMがクラスタリングすることにより細胞骨格の足場タンパク質が集積し、LTPの形成に寄与していると考えられている <ref><pubmed> 8816705</pubmed></ref> 。
 
===その他の免疫グロブリンドメインタンパク質===
 SidekickやDscamは、網膜においてシナプス形成の位置決定に関与していることが知られている。
 
 [[線虫|''C. elegans'']]のSyg-1とSyg-2は、1個のニューロン内でシナプスが形成される位置をガイドする役割を果たしている。


==LRR (leucine-rich repeat)タンパク質==
==LRR (leucine-rich repeat)タンパク質==

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