「脳弓」の版間の差分

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3 バイト除去 、 2012年5月31日 (木)
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 白い線維が帯状になった脳弓は海馬体の主要な遠心性線維と交連線維の両者が含まれる。これは海馬の大錐体細胞の軸索と海馬台からなり、海馬白板として側脳室表面に広がり、それらがまとまって海馬采fimbriaを形成する。両側の海馬采は後方へ進むにつれて太くなり、海馬の後端に至って脳梁膨大の下を脳弓脚となって弧を描いて上ると同時に両側のものが互いに近づいてくる。このあたりで多数の線維が反対側の脳弓に入る。すなわち交叉線維が薄く板状に広がって脳弓交連fornical comissureを形成する。
 白い線維が帯状になった脳弓は海馬体の主要な遠心性線維と交連線維の両者が含まれる。これは海馬の大錐体細胞の軸索と海馬台からなり、海馬白板として側脳室表面に広がり、それらがまとまって海馬采fimbriaを形成する。両側の海馬采は後方へ進むにつれて太くなり、海馬の後端に至って脳梁膨大の下を脳弓脚となって弧を描いて上ると同時に両側のものが互いに近づいてくる。このあたりで多数の線維が反対側の脳弓に入る。すなわち交叉線維が薄く板状に広がって脳弓交連fornical comissureを形成する。


 脳弓は、海馬台より起こり前交連の後方を通過して乳頭体に至る交連後脳弓と、海馬より起こり前交連の前方を通過して中隔野(核)に終わる交連前脳弓がある。
 脳弓は、海馬台より起こり前交連の後方を通過して乳頭体に至る交連後脳弓と、海馬より起こり前交連の前方を通過して中隔野(核)に終わる交連前脳弓がある<ref>'''檜山武史、野田昌晴'''<br>脳における体液Naレベル感知機構―グリア細胞が神経活動を制御するしくみの解明<br>''実験医学'', 25(16), 2007</ref>。


==大脳辺縁系==
==大脳辺縁系==
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[[Image:SubfonicalOrganGABAneuronTerminal.jpg|thumb|300px|図5 脳弓下器官に投射する抑制性GABAニューロン終末<br /> 佐賀大学医学部河野史教授 恵与]]  
[[Image:SubfonicalOrganGABAneuronTerminal.jpg|thumb|300px|図5 脳弓下器官に投射する抑制性GABAニューロン終末<br /> 佐賀大学医学部河野史教授 恵与]]  


近年、脳弓下器官 (subfornical organ; SFO)に血液や[[脳脊髄液]]に代表される体液(細胞外)中のNa(ナトリウム)濃度や細胞内のNa濃度の恒常性を保つためのNa<sub>x</sub>チャンネルというセンサーがあることがわかってきた。Na<sub>x</sub> は中枢神経系では、主に脳室周囲器官 (circumventricular organs;CVOs) に発現しており、脳弓下器官の他には終板脈管器官 (organum vasculosum of the lamina terminalis; OVLT) や最後野 (area postrema) にも存在が確認されている。この3領域は他の多くの脳領域と神経結合をつくっており、脳室表面に位置し、血液脳関門が無いことから、体液中の物質の受容や感知に適した場所であると考えられる。
近年、脳弓下器官 (subfornical organ; SFO)に血液や[[脳脊髄液]]に代表される体液(細胞外)中のNa(ナトリウム)濃度や細胞内のNa濃度の恒常性を保つためのNa<sub>x</sub>チャンネルというセンサーがあることがわかってきた。Na<sub>x</sub> は中枢神経系では、主に脳室周囲器官 (circumventricular organs;CVOs) に発現しており、脳弓下器官の他には終板脈管器官 (organum vasculosum of the lamina terminalis; OVLT) や最後野 (area postrema) にも存在が確認されている。この3領域は他の多くの脳領域と神経結合をつくっており、脳室表面に位置し、血液脳関門が無いことから、体液中の物質の受容や感知に適した場所であると考えられる<ref>'''野田昌晴'''<br>体液 Na<sup>+</sup>レベルの感知機構<br>''蛋白質 核酸 酵素'', 53(10), 1258-1266, 2008</ref>
<ref>'''カーペンター'''<br>''神経解剖学'' Malcolm B. Carpenter, Jerome Sutin,<br>西村書店</ref>。


==関連項目==
==関連項目==
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== 参考文献  ==
== 参考文献  ==
<ref>'''檜山武史、野田昌晴'''<br>脳における体液Naレベル感知機構―グリア細胞が神経活動を制御するしくみの解明<br>''実験医学'', 25(16), 2007</ref>
<ref>'''野田昌晴'''<br>体液 Na<sup>+</sup>レベルの感知機構<br>''蛋白質 核酸 酵素'', 53(10), 1258-1266, 2008</ref>
<ref>'''カーペンター'''<br>''神経解剖学'' Malcolm B. Carpenter, Jerome Sutin,<br>西村書店</ref>


<references />
<references />


(執筆者:藤山文乃 執筆協力:赤沢年一 担当編集委員:藤田一郎)
(執筆者:藤山文乃 執筆協力:赤沢年一 担当編集委員:藤田一郎)
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