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ニューロピリン(neuropilin)分子は、1回膜貫通型のタイプI型膜分子であり、アフリカツメガエルの視覚系組織に対するモノクローナル抗体A5の抗原として同定された。発見当初、ヘテロフィリックな細胞接着活性を有する分子として同定され、後に軸索誘導分子セマフォリンの受容体として再発見された。細胞外領域を介して様々なシグナル分子と相互作用するとともに、細胞膜表面で他の膜タンパク質と相互作用することで細胞内へとシグナルを伝達するための受容体として機能する(共受容体)。神経系では主に軸索誘導(ガイド)分子セマフォリン(semaphorin)の受容体として働く。脊椎動物では2種類の分子、neuropilin-1とneuropilin-2よりなる。これまでに、培養系やノックアウトマウスを用いた生体内での解析により、神経回路形成において、神経細胞移動、軸索誘導、軸索剪定、樹状突起形成、スパイン形成の制御など様々な現象に関わることが示されている。また、神経系以外の機能解析も進んでおり、特に血管形成、免疫系、骨形成を中心に、生体内の多様な局面で機能する。 ==構造== ニューロピリンは、1回膜貫通型のタイプI型膜タンパク質であり、約900アミノ酸残基により構成される。細胞外領域は約850アミノ酸残基からなり、さらに膜貫通領域と約45アミノ酸残基からなる細胞内領域をもつ。細胞外領域は、アミノ末端よりシグナル配列と5つのドメイン構造(a1、a2、b1、b2、c)を有している。a1、a2ドメインは補体C1rとC1sに類似した構造でありCUBドメインとも呼ばれている。b1とb2ドメインは補体凝集因子VIIIやVのC1とC2ドメインと類似した構造、そしてCドメインは、MAM-domain(meprin, A-5 protein, and protein tyrosine phosphatase μに共通したドメイン構造)とも呼ばれる構造である。ヘテロフィリックな細胞接着はb1、b2ドメインの18アミノ酸残基を介して行われることが明らかになっている。また、分泌型セマフォリンは、a1/2, b1/2ドメインに結合する。細胞内領域には、C末端にPDZ-domain結合配列を持つ。セマフォリンのシグナル伝達においてニューロピリンの細胞内領域は必要ではないとされていたが、近年、Sema3Fの軸索剪定作用にはおいて、neuropilin-2の細胞内ドメインに直接結合するRacGAPであるβ2-Chimaerinが必要であることが示され、ニューロピリンの細胞内領域の機能的意義が明らかにされつつある。 結晶構造解析により、neuropilinのa1ドメインにて分泌型セマフォリンと相互作用するとともに、a1ドメインの異なる部位で共受容体のプレキシンと相互作用することが示された。これらの相互作用により大きな構造変化は認められていないことから、ニューロピリンは分泌型セマフォリンとプレキシンとの結合を安定化させていると推定されている。 == ファミリー == ニューロピリンは脊椎動物においてのみ同定されており、neuropilin-1とneuropilin-2の2つの分子より構成される。それぞれの分子は、基本的構造を有するとともに、neuropilin-2はXXXから細胞内領域にかけてスプライシングバリアントが存在する。これらのスプライスバリアントは細胞内領域の相異性により大まかにAとBの2つのタイプに分類されている。 == 機能 == 神経回路形成においては、2つの機能が明らかにされている。ニューロピリンは、(1) プレキシンとともに分泌型セマフォリンの受容体としての機能し、また、(2)血管増殖因子VEGFRと相互作用することによりセマフォリンの作用を制御する。 == リガンドの特異性 == neuropilin-1とneuropilin-2とでは、分泌型セマフォリンとの相互剤用において、相違があることが示されている。neuropilin-1は、Sema3A, Sema3B, Sema3Cとの相互作用が、neuropilin-2はSema3B, Sema3C, Sema3Fと相互作用することが示されている。 == 役割 == 神経回路形成において、末梢神経系の細胞移動、軸索走行、標的細胞への投射、中枢神経系における神経細胞移動、軸索走行、軸索剪定、スパイン形成の制御を行う。 == 疾患との関連 ==
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