「抗精神病薬」の版間の差分

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=== 陽性症状と陰性症状  ===
=== 陽性症状と陰性症状  ===


 第2世代抗精神病薬と第1世代抗精神病薬の有効性を比較した150本の無作為化二重盲検比較試験のメタ解析 <ref name="ref3"><pubmed> 19058842 </pubmed></ref>では、4種類の第2世代抗精神病薬 (アミスルピリド(amisulpiride)、クロザピン、オランザピン、リスペリドン) が、[[陽性症状]]に対して第1世代抗精神病薬よりも有意に高いeffect size (-0.13〜-0.36)を示したが、他の第2世代抗精神病薬 (アリピプラゾール、クエチアピン、セルチンドール(sertindole)、ジプラシドン、ゾテピン)は、第1世代抗精神病薬と有意差がみられなかった。陰性症状に対しても、上記の4種類の第2世代抗精神病薬が、第1世代抗精神病薬よりも有意に高いeffect size (-0.13〜-0.32)を示したが、他の第2世代抗精神病薬は、第1世代抗精神病薬と有意差を認めなかった。ただし、一次性の陰性症状に対する有効性は、低用量のアミスルピリドを除いて明らかではなく、第2世代抗精神病薬の一部は、抑うつ症状に対する改善効果や低い錐体外路症状発現率を介して、二次性の陰性症状に効果を発揮している可能性がある<ref name="ref1" />。
 第2世代抗精神病薬と第1世代抗精神病薬の有効性を比較した150本の無作為化二重盲検比較試験のメタ解析 <ref name="ref3"><pubmed> 19058842 </pubmed></ref>では、4種類の第2世代抗精神病薬 (アミスルピリド(amisulpiride)、クロザピン、オランザピン、リスペリドン) が、[[陽性症状]]に対して第1世代抗精神病薬よりも有意に高いeffect size (-0.13〜-0.36)を示したが、他の第2世代抗精神病薬 (アリピプラゾール、クエチアピン、セルチンドール(sertindole)、ジプラシドン、ゾテピン)は、第1世代抗精神病薬と有意差がみられなかった。[[陰性症状]]に対しても、上記の4種類の第2世代抗精神病薬が、第1世代抗精神病薬よりも有意に高いeffect size (-0.13〜-0.32)を示したが、他の第2世代抗精神病薬は、第1世代抗精神病薬と有意差を認めなかった。ただし、一次性の陰性症状に対する有効性は、低用量のアミスルピリドを除いて明らかではなく、第2世代抗精神病薬の一部は、抑うつ症状に対する改善効果や低い錐体外路症状発現率を介して、二次性の陰性症状に効果を発揮している可能性がある<ref name="ref1" />。


 抗精神病薬の短期間の有効性 (efficacy)を検証する臨床試験は、厳密に統制された条件下で実施するため、その結果が日常臨床にすぐに還元できるとは限らない。そこで、対象患者や併用薬などの制限を緩和し、実際の臨床現場の実情を反映した総合的な治療効果(有用性:effectiveness)を示す評価指標を用いたより長期のアウトカム(effectiveness)試験が、デザインされ実施されてきた。その代表的な試験は、米国政府主導で実施された[[wikipedia:Clinical Antipsychotic Trials of Intervention Effectiveness|Clinical Antipsychotic Trials of Intervention Effectiveness]] (CATIE)である <ref><pubmed> 16172203 </pubmed></ref>。CATIEは1,493名の慢性期統合失調症患者を対象とした3相から成る18か月間の多施設二重盲検比較試験で、主要評価項目は「あらゆる理由による治療中断」である。第I相では、第2世代抗精神病薬4剤 (オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドン)と第1世代抗精神病薬のペルフェナジンが比較され、オランザピンが最も低い治療中断率(64%)を示したが、その他の第2世代抗精神病薬は陽性症状や陰性症状に対してペルフェナジンと有意な違いを示さなかった。
 抗精神病薬の短期間の有効性 (efficacy)を検証する臨床試験は、厳密に統制された条件下で実施するため、その結果が日常臨床にすぐに還元できるとは限らない。そこで、対象患者や併用薬などの制限を緩和し、実際の臨床現場の実情を反映した総合的な治療効果(有用性:effectiveness)を示す評価指標を用いたより長期のアウトカム(effectiveness)試験が、デザインされ実施されてきた。その代表的な試験は、米国政府主導で実施された[[wikipedia:Clinical Antipsychotic Trials of Intervention Effectiveness|Clinical Antipsychotic Trials of Intervention Effectiveness]] (CATIE)である <ref><pubmed> 16172203 </pubmed></ref>。CATIEは1,493名の慢性期統合失調症患者を対象とした3相から成る18か月間の多施設二重盲検比較試験で、主要評価項目は「あらゆる理由による治療中断」である。第I相では、第2世代抗精神病薬4剤 (オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドン)と第1世代抗精神病薬のペルフェナジンが比較され、オランザピンが最も低い治療中断率(64%)を示したが、その他の第2世代抗精神病薬は陽性症状や陰性症状に対してペルフェナジンと有意な違いを示さなかった。


 498名の初回エピソード統合失調症患者を対象とした[[wikipedia:European First-Episode Schizophrenia Trial|European First-Episode Schizophrenia Trial]] (EUFEST)は、1年間の多施設オープン無作為化試験であり、アミスルプリド、オランザピン、クエチアピンおよびジプラシドンのeffectivenessが、低用量のハロペリドールと比較された <ref><pubmed> 18374841 </pubmed></ref>。この試験の主要評価項目も「あらゆる理由による治療中断」であった。治療中断率はアミスルプリド 40%、オランザピン 33%、クエチアピン 53%、ジプラシドン 45%、 ハロペリドール 72%であり、第2世代抗精神病薬はハロペリドールより有意に治療中断率が低かった。しかし、陽性症状や陰性症状に関しては、薬剤群間で有意な差はみられなかった。したがって、CATIE とEUFEST 試験の結果からは、第2世代抗精神病薬が第1世代抗精神病薬より陽性症状や陰性症状に関して明らかに優っているわけではなく、薬剤間の違いも大きくないことが判明した。
 498名の初回エピソード統合失調症患者を対象とした[[wikipedia:European First-Episode Schizophrenia Trial|European First-Episode Schizophrenia Trial]] (EUFEST)は、1年間の多施設オープン無作為化試験であり、アミスルプリド、オランザピン、クエチアピンおよびジプラシドンのeffectivenessが、低用量のハロペリドールと比較された <ref><pubmed> 18374841 </pubmed></ref>。この試験の主要評価項目も「あらゆる理由による治療中断」であった。治療中断率はアミスルプリド 40%、オランザピン 33%、クエチアピン 53%、ジプラシドン 45%、 ハロペリドール 72%であり、第2世代抗精神病薬はハロペリドールより有意に治療中断率が低かった。しかし、陽性症状や陰性症状に関しては、薬剤群間で有意な差はみられなかった。したがって、CATIE とEUFEST 試験の結果からは、第2世代抗精神病薬が第1世代抗精神病薬より陽性症状や陰性症状に関して明らかに優っているわけではなく、薬剤間の違いも大きくないことが判明した。


=== 認知機能障害に対する効果  ===
=== 認知機能障害に対する効果  ===

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