「麻薬」の版間の差分

2,900 バイト追加 、 2013年3月27日 (水)
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 臨床にて汎用されるopioidにはモルヒネ、フェンタニル、オキシコドン、レミフェンタニル、メペリジン、リン酸コデイン、ブプレノルフィン、ペンタゾシン、トラマドール(μ 受容体親和性が高いのはトラマドールの代謝物であるM1である)、最近ではメサドンが日本において使用導入された。  
 臨床にて汎用されるopioidにはモルヒネ、フェンタニル、オキシコドン、レミフェンタニル、メペリジン、リン酸コデイン、ブプレノルフィン、ペンタゾシン、トラマドール(μ 受容体親和性が高いのはトラマドールの代謝物であるM1である)、最近ではメサドンが日本において使用導入された。  


{| width="200" cellspacing="1" cellpadding="1" border="1"
{| width="503" height="287" cellspacing="1" cellpadding="1" border="1"
|-
|-
|  
|  
|  
| style="text-align:center" colspan="3" |Opioid 受容体 
|
|  
|  
|  
|-
|-
|  
| style="background-color:#d3d3d3" |
| μ
| style="background-color:#d3d3d3; text-align:center" | μ  
| δ
| style="background-color:#d3d3d3; text-align:center" | δ  
| κ
| style="background-color:#d3d3d3; text-align:center" | κ  
| 備考
| style="background-color:#d3d3d3; text-align:center" | 備考
|-
|-
| モルヒネ
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" | モルヒネ  
| +++
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" | +++  
| -
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" | -  
| -
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" | -  
| アヘン<br>アルカロイド
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" | アヘン<br>アルカロイド
|-
|-
| フェンタニル
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" | フェンタニル  
| +++
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" | +++  
|  
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" |  
|  
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" |  
| 合成麻薬
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" | 合成麻薬
|-
|-
| レミフェンタニル
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" | レミフェンタニル  
| +++
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" | +++  
|  
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" |  
|  
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" |  
| 合成麻薬
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" | 合成麻薬
|-
|-
| オキシコドン
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" | オキシコドン  
| +++
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" | +++  
|  
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" |  
| +
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" | +  
| 半合成麻薬
| style="background-color:#fed0e0; text-align:center" | 半合成麻薬
|-
|-
| メペリジン
| style="background-color:#f0e68c; text-align:center" | メペリジン  
| ++
| style="background-color:#f0e68c; text-align:center" | ++  
|  
| style="background-color:#f0e68c; text-align:center" | 
|  
| style="background-color:#f0e68c; text-align:center" |  
| 合成麻薬
| style="background-color:#f0e68c; text-align:center" | 合成麻薬
|-
|-
| コデイン
| style="background-color:#f0e68c; text-align:center" | コデイン  
| ++
| style="background-color:#f0e68c; text-align:center" | ++  
|  
| style="background-color:#f0e68c; text-align:center" |  
|  
| style="background-color:#f0e68c; text-align:center" |  
| アヘン<br>アルカロイド
| style="background-color:#f0e68c; text-align:center" | アヘン<br>アルカロイド
|-
|-
| トラマドール
| style="background-color:#add8e6; text-align:center" | トラマドール  
| ++
| style="background-color:#add8e6; text-align:center" | ++  
| (+)
| style="background-color:#add8e6; text-align:center" | (+)  
|  
| style="background-color:#add8e6; text-align:center" |  
| SSRI様作用を併せ持つ
| style="background-color:#add8e6; text-align:center" | SSRI様作用を併せ持つ
|-
|-
| ブプレノルフィン
| style="background-color:#add8e6; text-align:center" | ブプレノルフィン  
| ++<br>(+)
| style="background-color:#add8e6; text-align:center" | ++<br>(+)  
|  
| style="background-color:#add8e6; text-align:center" | 
| ++<br>(+)
| style="background-color:#add8e6; text-align:center" | ++<br>(+)  
| 麻薬拮抗性<br>鎮痛薬
| style="background-color:#add8e6; text-align:center" | 麻薬拮抗性<br>鎮痛薬
|-
|-
| ペンタゾシン
| style="background-color:#add8e6; text-align:center" | ペンタゾシン  
| ++<br>(+)
| style="background-color:#add8e6; text-align:center" | ++<br>(+)  
|  
| style="background-color:#add8e6; text-align:center" |  
| ++<br>(+)
| style="background-color:#add8e6; text-align:center" | ++<br>(+)  
| 麻薬拮抗性<br>鎮痛薬
| style="background-color:#add8e6; text-align:center" | 麻薬拮抗性<br>鎮痛薬
|}
|}
+++: 強 agonist、 ++: 弱 agonist、 +: 部分 gonist<br>
(  ) 可能性<br>
'''表.Opioid受容体に対するpotency'''


 
=== モルヒネ ===
 
 
 
 
 
=== モルヒネ ===


 モルヒネは数ある強オピオイドのなかでもっとも歴史が古く、またもっとも研究されている薬で、すべてのオピオイドの原点であり基本となる。剤形も多く、内服薬、坐剤、注射薬があり投与経路の変更なども同一薬剤で行いやすい。  
 モルヒネは数ある強オピオイドのなかでもっとも歴史が古く、またもっとも研究されている薬で、すべてのオピオイドの原点であり基本となる。剤形も多く、内服薬、坐剤、注射薬があり投与経路の変更なども同一薬剤で行いやすい。  


=== オキシコドン ===
=== オキシコドン ===


 オキシコドンは、アヘンアルカロイド系のオピオイド受容体作用薬で、体内に入ると代謝酵素であるCYP2D6 によりオキシモルフォンへ、CYP3A4 によりノルオキシコドン(非活性)へと代謝される。オキシモルフォンは活性代謝産物であり、その鎮痛効果はオキシコドンの約14 倍と強力であるが、AUCはオキシコドンの1.4%と低いため臨床上問題とはならない。また、ノルオキシコドンは薬理活性がほとんどない。したがってオキシコドンの代謝物の影響はほとんどないと考えられる。薬理学的評価における臨床所見はオキシコドンの血中濃度と相関し、鎮痛作用はオキシコドンそのものによってもたらされる<ref name="ref10"><pubmed>1982347</pubmed></ref>。  
 オキシコドンは、アヘンアルカロイド系のオピオイド受容体作用薬で、体内に入ると代謝酵素であるCYP2D6 によりオキシモルフォンへ、CYP3A4 によりノルオキシコドン(非活性)へと代謝される。オキシモルフォンは活性代謝産物であり、その鎮痛効果はオキシコドンの約14 倍と強力であるが、AUCはオキシコドンの1.4%と低いため臨床上問題とはならない。また、ノルオキシコドンは薬理活性がほとんどない。したがってオキシコドンの代謝物の影響はほとんどないと考えられる。薬理学的評価における臨床所見はオキシコドンの血中濃度と相関し、鎮痛作用はオキシコドンそのものによってもたらされる<ref name="ref10"><pubmed>1982347</pubmed></ref>。  


=== フェンタニル ===
=== フェンタニル ===


 フェンタニルは1959年にモルヒネ系薬物とは化学構造の異なる4-anilidopiperidine 系鎮痛薬として合成された合成麻薬である。フェンタニルは肝臓でCYP3A4によってN-脱アルキル化と水酸化によって代謝を受け、ほとんど薬理学的活性のない代謝産物ノルフェンタニルとなり、大部分が尿中に排泄される。活性代謝産物がほとんどないため、腎機能の悪化した患者でも蓄積作用による悪影響を及ぼしにくいとされている。  
 フェンタニルは1959年にモルヒネ系薬物とは化学構造の異なる4-anilidopiperidine 系鎮痛薬として合成された合成麻薬である。フェンタニルは肝臓でCYP3A4によってN-脱アルキル化と水酸化によって代謝を受け、ほとんど薬理学的活性のない代謝産物ノルフェンタニルとなり、大部分が尿中に排泄される。活性代謝産物がほとんどないため、腎機能の悪化した患者でも蓄積作用による悪影響を及ぼしにくいとされている。  


=== メサドン ===
=== メサドン ===


 2012年11月22日、癌疼痛治療薬のメサドン塩酸塩(商品名メサペイン錠5mg、同錠10mg)が薬価収載された。適応は、「他の強オピオイド鎮痛剤で治療困難な中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」である。中等度から高度の疼痛を伴う各種癌に使用する鎮痛薬としては、WHO(世界保健機関)による癌性疼痛治療の三段階ラダーに基づき、強オピオイドのモルヒネ、オキシコドン、フェンタニルが使用される。しかし、これら強オピオイドでも鎮痛が得られない患者、またはオピオイド耐性が発現した患者などに対しては、日本では有効な薬剤が無い状態であった。対して欧米では、これらの患者に対してはメサドンが広く使用されており、こうしたことから、日本へのメサドンの早期導入が実現した。  
 2012年11月22日、癌疼痛治療薬のメサドン塩酸塩(商品名メサペイン錠5mg、同錠10mg)が薬価収載された。適応は、「他の強オピオイド鎮痛剤で治療困難な中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」である。中等度から高度の疼痛を伴う各種癌に使用する鎮痛薬としては、WHO(世界保健機関)による癌性疼痛治療の三段階ラダーに基づき、強オピオイドのモルヒネ、オキシコドン、フェンタニルが使用される。しかし、これら強オピオイドでも鎮痛が得られない患者、またはオピオイド耐性が発現した患者などに対しては、日本では有効な薬剤が無い状態であった。対して欧米では、これらの患者に対してはメサドンが広く使用されており、こうしたことから、日本へのメサドンの早期導入が実現した。


== オピオイドの作用機序  ==
== オピオイドの作用機序  ==