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担当編集委員:[http://researchmap.jp/atsushiiriki 入來 篤史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/atsushiiriki 入來 篤史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | ||
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一般的には、生後約9か月以後の[[wikipedia:ja:ヒト|ヒト]] | 一般的には、生後約9か月以後の[[wikipedia:ja:ヒト|ヒト]]の発達過程における特徴を指す。9か月より前では、自分と他者または自分とものという2者間の関係で[[wikipedia:ja:乳児|乳児]]の認識世界が成り立っているとするのに対して、9か月以後では、自分と他者とものという3者を含んだ認識世界に至るとする<ref><pubmed>6488956</pubmed></ref><ref name=ref3>'''M Tomasello'''<br>The cultural origins of human cognition<br>''Cambridge, MA: Harvard University Press'':1999</ref>。 | ||
これは、主にヒトのコミュニケーションの発達において重要視されており、[[二項関係]] | これは、主にヒトのコミュニケーションの発達において重要視されており、[[二項関係]]では、乳児は本人と他者との対面の関係でコミュニケーションを取るが(例:「いないいないばー」)、三項関係では、本人と他者以外のものも含めたコミュニケーション(例:遠くのものを指さして大人と一緒に見る)が可能になる。他の三項関係における行動例としては、[[視線追従]](大人が見たある対象物を乳児も見る)、[[社会的参照]](乳児がある対象に対する評価を大人の表情などを見ることで参考にする)などがある。類似の概念として、[[第二次間主観性]]<ref>'''C Trevarthen, PM Hubley'''<br>Secondary intersubjectivity: confidence, confiding, and acts of meaning in the first year. In A. Lock (Ed.), Action, gesture, and symbol (pp. 183–229).<br>''London: Academic Press'':1978</ref>があり、他者とある対象に対する注意を共有する共同注意は三項関係の行動の代表例である。Tomasello<ref name=ref1 />はこれを図1のように図示している。二項関係では、乳児は物体を操作している時に近くに人がいてもそちらに注意は向かず(図1a)、人と関わりあっている時は近くに物体があってもそちらに注意がいかない(図1b)。一方、三項関係では、乳児は物体を意識するだけでなく、同時に大人がその物体に注意を向けていることを意識するようになる(図1c)。 | ||
Tomasello<ref name=ref3 /><ref>''' | Tomasello<ref name=ref3 />は、この三項関係の発生を「[[9か月革命]]」と呼び、この時期に乳児は他者を、 意図を持った行為者と見做し、[[模倣]]や他者理解の発達を示すとしている。また、それまでのように、他者から学ぶというだけでなく、他者を通して学ぶようになるとしている。例えば、大人のある物体への反応を見て、その物体に対しての評価を学習するようになる。また、このような三項関係は、[[言語]]の獲得においても重要である。Seibert & Hogan<ref>'''JM Seibert, AE Hogan'''<br>Procedures Manual for Early Social Communication Scales (ESCS)<br>''Coral Gables: Mailman Center for Child Development, University of Miami'':1982</ref>は、二項関係や三項関係の子どもの行動を評価する尺度として、[[Early Social Communication Scales]]を開発している。 | ||
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2013年8月6日 (火) 15:32時点における版
浅田 晃佑
東京大学先端科学技術研究センター
板倉 昭二
京都大学大学院文学研究科
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2013年8月6日 原稿完成日:2013年xx月XX日
担当編集委員:入來 篤史(独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)
英語名:triadic interaction, triadic interactive system, triadic relations, triadic engagement
三項関係とは、「主体」と「他者」と(対面の二者間の空間以外にある)「もの」の3者間の関係を指す。主体と他者または主体とものとの2者間の閉じられた関係を指す二項関係と対比される。
一般的には、生後約9か月以後のヒトの発達過程における特徴を指す。9か月より前では、自分と他者または自分とものという2者間の関係で乳児の認識世界が成り立っているとするのに対して、9か月以後では、自分と他者とものという3者を含んだ認識世界に至るとする[2][3]。
これは、主にヒトのコミュニケーションの発達において重要視されており、二項関係では、乳児は本人と他者との対面の関係でコミュニケーションを取るが(例:「いないいないばー」)、三項関係では、本人と他者以外のものも含めたコミュニケーション(例:遠くのものを指さして大人と一緒に見る)が可能になる。他の三項関係における行動例としては、視線追従(大人が見たある対象物を乳児も見る)、社会的参照(乳児がある対象に対する評価を大人の表情などを見ることで参考にする)などがある。類似の概念として、第二次間主観性[4]があり、他者とある対象に対する注意を共有する共同注意は三項関係の行動の代表例である。Tomasello[1]はこれを図1のように図示している。二項関係では、乳児は物体を操作している時に近くに人がいてもそちらに注意は向かず(図1a)、人と関わりあっている時は近くに物体があってもそちらに注意がいかない(図1b)。一方、三項関係では、乳児は物体を意識するだけでなく、同時に大人がその物体に注意を向けていることを意識するようになる(図1c)。
Tomasello[3]は、この三項関係の発生を「9か月革命」と呼び、この時期に乳児は他者を、 意図を持った行為者と見做し、模倣や他者理解の発達を示すとしている。また、それまでのように、他者から学ぶというだけでなく、他者を通して学ぶようになるとしている。例えば、大人のある物体への反応を見て、その物体に対しての評価を学習するようになる。また、このような三項関係は、言語の獲得においても重要である。Seibert & Hogan[5]は、二項関係や三項関係の子どもの行動を評価する尺度として、Early Social Communication Scalesを開発している。
関連項目
ございましたらご指摘ください。
参考文献
- ↑ 1.0 1.1 M Tomasello
Understanding the self as a social agent. In P. Rochat (Ed.), The self in infancy: Theory and research (pp.449-460).
Amsterdam, North Holland/Elsevier Science:1995 - ↑
Bakeman, R., & Adamson, L.B. (1984).
Coordinating attention to people and objects in mother-infant and peer-infant interaction. Child development, 55(4), 1278-89. [PubMed:6488956] [WorldCat] - ↑ 3.0 3.1 M Tomasello
The cultural origins of human cognition
Cambridge, MA: Harvard University Press:1999 - ↑ C Trevarthen, PM Hubley
Secondary intersubjectivity: confidence, confiding, and acts of meaning in the first year. In A. Lock (Ed.), Action, gesture, and symbol (pp. 183–229).
London: Academic Press:1978 - ↑ JM Seibert, AE Hogan
Procedures Manual for Early Social Communication Scales (ESCS)
Coral Gables: Mailman Center for Child Development, University of Miami:1982