「神経節」の版間の差分

提供:脳科学辞典
ナビゲーションに移動 検索に移動
(ページの作成:「<div align="right"> <font size="+1">[http://researchmap.jp/read0095266/ 大石高生]、*[http://researchmap.jp/masahikotakada 高田 昌彦]</font><br> ''京都大学...」)
(2人の利用者による、間の21版が非表示)
1行目: 1行目:
<div align="right">   
<div align="right">   
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0095266/ 大石高生]、*[http://researchmap.jp/masahikotakada 高田 昌彦]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0095266/ 大石高生]、*[http://researchmap.jp/masahikotakada 高田 昌彦]</font><br>
''京都大学 霊長類研究所統合脳システム分野''<br>
''京都大学 [[霊長類]]研究所統合脳システム分野''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2015年6月27日 原稿完成日:2015年6月30日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2015年6月1日 原稿完成日:2015年月日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0080380 上口 裕之](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>*:責任著者
担当編集委員:[http://researchmap.jp/noritakaichinohe 一戸 紀孝](国立精神・神経医療研究センター 神経研究所)<br>*:責任著者
</div>
</div>


英語名:ganglion 独:Ganglion 仏:ganglion
英語名 ganglion


{{box|text= 神経節とは、末梢神経系における神経細胞体の集合である。その機能により、感覚神経節と自律神経節に大別される。}}
{{box|text= 神経節とは、末梢神経系における神経細胞体の集合である。その機能により、感覚神経節と自律神経節に大別される。}}
[[ファイル:Ganglion Ohishi and Takada.jpg|thumb|300px|<b>図. 神経節とそれを構成する細胞の分類</b>]]


==神経節とは==
==神経節とは==
 神経節とは、[[末梢神経系]]における[[神経細胞体]]の集合である。その機能により、[[感覚神経節]]と[[自律神経節]]に大別される。この項では[[脊椎動物]]の神経節を取り上げ、[[無脊椎動物]]の[[中枢神経系]]をなす神経節については扱わない。
 神経節とは、[[末梢神経系]]における[[神経細胞体]]の集合である。その機能により、感覚神経節と自律神経節に大別される。この項では[[脊椎動物]]の神経節を取り上げ、無脊椎[[動物]]の中枢神経系をなす神経節については扱わない。


== 感覚神経節 ==
== 感覚神経節 ==
 感覚神経節には、末梢で感覚刺激を受容した場合に、その情報を中枢に伝達する[[感覚ニューロン]]の[[細胞体]]が集合している。感覚ニューロンは、形態学的には[[双極性ニューロン]]あるいは[[偽単極性ニューロン]]である。偽単極性ニューロンは、一本の[[軸索]]が細胞体から出てしばらくしたところで二本に分かれ、末梢端が[[樹状突起]]となる。感覚神経節には、[[三叉神経節]]、[[膝神経節]]、[[前庭神経節]]、[[らせん神経節]]、[[舌咽神経]]の[[上神経節]]と[[下神経節]]、[[迷走神経]]の[[上神経節]]と[[下神経節]]、[[脊髄後根神経節]]が含まれる。
 感覚神経節には、末梢で感覚刺激を受容した場合に、その情報を中枢に伝達する感覚ニューロンの細胞体が集合している。感覚ニューロンは、形態学的には双極性ニューロンあるいは偽単極性ニューロンである。偽単極性ニューロンは、一本の[[軸索]]が細胞体から出てしばらくしたところで二本に分かれ、、末梢端が樹状突起となる。感覚神経節には、[[三叉神経]]節、実神経節、[[前庭神経]]節、螺旋神経節、[[舌咽神経]]の上神経節と下神経節、[[迷走神経]]の上神経節と下神経節、脊髄後根神経節が含まれる。
 
{|| class="wikitable"
|+表1. 感覚神経節
| align="center" style="background:#f0f0f0;"|'''神経節'''
| align="center" style="background:#f0f0f0;"|'''別名'''
| align="center" style="background:#f0f0f0;"|'''求心性神経'''
| align="center" style="background:#f0f0f0;"|'''位置'''
| align="center" style="background:#f0f0f0;"|'''感覚'''
| align="center" style="background:#f0f0f0;"|'''中枢の終止'''
|-
|rowspan="3"| [[三叉神経節]]
|rowspan="3"| [[半月神経節]]||[[眼神経]]([[三叉神経]]
|rowspan="3"| [[wikipedia:ja:側頭骨|側頭骨]]岩様部の錐体の尖端部上||前頭部、[[眼]]([[wikipedia:ja:角膜|角膜]]、[[wikipedia:ja:眼瞼|眼瞼]])、[[wikipedia:ja:鼻|鼻]]([[wikipedia:ja:皮膚|皮膚]]、[[wikipedia:ja:鼻腔|鼻腔]]と[[wikipedia:ja:副鼻腔|副鼻腔]]の[[wikipedia:ja:粘膜|粘膜]])の[[体性感覚]]||三叉神経主感覚核、三叉神経脊髄路核
|-
|| [[上顎神経]](三叉神経)||上顎部、上顎の[[wikipedia:ja:歯|歯]]、上唇の粘膜、頬粘膜、口蓋粘膜、[[wikipedia:ja:上顎洞|上顎洞]]の体性感覚||三叉神経主感覚核、三叉神経脊髄路核
|-
||[[下顎神経]](三叉神経)||舌(前方2/3)、下顎部、下顎の歯、下唇の粘膜、頬粘膜の一部、外耳の一部の体性感覚||三叉神経主感覚核、三叉神経脊髄路核
|-
|rowspan="2"| [[膝神経節]]
|rowspan="2"|
|rowspan="2"| [[顔面神経]]
|rowspan="2"| 顔面神経の最初の彎曲部(顔面神経膝)||外耳道と耳介の後ろの小領域の体性感覚||三叉神経主感覚核、三叉神経脊髄路核
|-
||舌の前方2/3の味覚||孤束核の吻側部
|-
| [[前庭神経節]]||[[スカルパ神経節]]||[[前庭神経]]([[内耳神経]])||[[蝸牛]]近傍||[[平衡覚]]||[[前庭神経核]]群、[[小脳]]片葉等
|-
| [[らせん神経節]]||||[[蝸牛神経]](内耳神経)||蝸牛内部||聴覚||腹側蝸牛神経核、背側蝸牛神経核
|-
| [[舌咽神経]]の[[上神経節]]||[[上舌咽神経節]]||舌咽神経||[[wikipedia:ja:頸静脈孔|頸静脈孔]]の上部||口腔咽頭の部分、口蓋舌弓、舌の後方部、耳介の後ろの小領域、耳管、鼓室などの体性感覚||三叉神経脊髄路核
|-
|rowspan="2"| 舌咽神経の[[下神経節]]
|rowspan="2"| [[下舌咽神経節]]
|rowspan="2"| 舌咽神経
|rowspan="2"| 頸静脈孔の下部||口腔咽頭の部分、口蓋舌弓、舌の後方部、頸動脈小体などの内臟性感覚||孤束核の尾側部
|-
||舌の後方1/3の味覚||孤束核の吻側部
|-
|[[迷走神経]]の上神経節 ||[[頸静脈神経節]]||迷走神経||頸静脈孔の上部||耳介の後ろ、外耳道後壁の体性感覚||三叉神経脊髄路核
|-
|rowspan="2"| 迷走神経の下神経節
|rowspan="2"| [[節状神経節]]
|rowspan="2"| 迷走神経
|rowspan="2"| 頸静脈孔の下部||喉頭蓋、喉頭部咽頭、声門下腔、胃腸管、呼吸系、[[心臓]]などの内臓性感覚||孤束核の尾側部
|-
||喉頭蓋の味覚||孤束核の吻側部
|-
| [[脊髄後根神経節]]||[[脊髄神経節]]、[[後根神経節]]||[[脊髄後根神経]]||脊髄後根||皮膚および腱、筋の体性感覚||脊髄の後角、延髄後索核
|}


== 自律神経節 ==
== 自律神経節 ==
 [[自律神経節]]内では、中枢神経系に細胞体がある[[節前ニューロン]]と、末梢の[[筋肉]]や[[腺]]などを支配する[[節後ニューロン]]が[[シナプス]]を形成している。自律神経節には[[交感神経系]]のものと、[[副交感神経系]]のものとがある。[[交感神経節前ニューロン]]、[[副交感神経節前ニューロン]]、[[副交感神経節後ニューロン]]および[[汗腺]]を支配する[[交感神経節後ニューロン]]では、[[アセチルコリン]]が神経伝達物質として用いられる。それ以外の交感神経節後ニューロンでは、[[ノルアドレナリン]]が神経伝達物質として用いられる。交感神経系の神経節には、[[交感神経幹神経節]]、[[自律神経叢神経節]]が含まれる。副交感神経系の神経節には、[[毛様体神経節]]、[[翼口蓋神経節]]、[[顎下神経節]]、[[耳神経節]]と[[内臓]]を支配する[[副交感神経節]]([[終末神経節]]、[[壁内神経節]])が含まれる。
 自律神経節内では、中枢神経系に細胞体がある節前ニューロンと、末梢の[[筋肉]]や線などを支配する節後ニューロンが[[シナプス]]を形成している。自律神経節には交感神経系のものと、副交感神経系のものとがある。交感神経節前ニューロン、副交感神経節前ニューロン、副交感神経節後ニューロンおよび汗腺を支配する交感神経節後ニューロンでは、[[アセチルコリン]]が神経伝達物質として用いられる。それ以外の交感神経節後ニューロンでは、[[ノルアドレナリン]]が神経伝達物質として用いられる。交感神経系の神経節には、交感神経幹神経節、自律神経叢神経節が含まれる。副交感神経系の神経節には、網様体神経節、翼口蓋神経節、顎下神経節、耳神経節と内臓を支配する副交感神経節(終末神経節、壁内神経節)が含まれる。
{|| class="wikitable"
|+表2. 自律神経節
| align="center" style="background:#f0f0f0;"|'''神経節'''
| align="center" style="background:#f0f0f0;"|'''別名'''
| align="center" style="background:#f0f0f0;"|'''[[脳神経]]・脊髄神経'''
| align="center" style="background:#f0f0f0;"|'''位置'''
| align="center" style="background:#f0f0f0;"|'''節前線維の起始部位'''
| align="center" style="background:#f0f0f0;"|'''節後線維の支配'''
|-
| [[毛様体神経節]]||||[[動眼神経]]||[[wikipedia:ja:眼動脈|眼動脈]]の外側方で、[[視神経]]と[[wikipedia:ja:外直筋|外直筋]]の間||[[中脳]]の[[エディンガー・ウェストファル核]]及びその周辺部||副交感性:[[wikipedia:ja:瞳孔収縮筋|瞳孔収縮筋]]、[[wikipedia:ja:毛様体筋|毛様体筋]]
|-
| [[翼口蓋神経節]]||||[[中間神経]]([[顔面神経]])||[[wikipedia:ja:翼口蓋窩|翼口蓋窩]]で、上顎神経の下内側||[[上唾液核]]||副交感性:[[wikipedia:ja:涙腺|涙腺]]
|-
| [[顎下神経節]]||||中間神経(顔面神経)||[[wikipedia:ja:舌骨舌筋|舌骨舌筋]]の前縁付近で、[[舌神経]]と[[wikipedia:ja:顎下腺|顎下腺]]の間||上唾液核||副交感性:顎下腺、[[wikipedia:ja:舌下腺|舌下腺]]
|-
| [[耳神経節]]||||[[舌咽神経]]||[[wikipedia:ja:卵円孔|卵円孔]]直下で、下顎神経の内側||[[下唾液核]]||副交感性:[[wikipedia:ja:耳下腺|耳下腺]]
|-
| [[交感神経幹神経節]]||[[脊椎傍神経節]]、[[上頸神経節]]など、20あまりの神経節がつながったもの<br>[[星状神経節]]([[頸胸神経節]])は、[[下頸神経節]]と第1[[胸神経節]]が融合したもの||脊髄神経||脊椎の両側を縦走||[[胸髄]]、[[腰髄]]の[[側角]](Th1-L2)||交感性:胸部内臓、皮膚など
|-
| [[自律神経叢神経節]]||[[脊椎前神経節]]、[[腹腔神経節]]||脊髄神経||[[自律神経]]叢中||胸髄、腰髄の側角(Th1-L2)||交感性:腹部内臓など
|-
| [[終末神経節]]、[[壁内神経節]]||[[副交感神経系]]の神経節||迷走神経、脊髄神経||自律神経叢中、内臓周囲、内臓壁内||[[迷走神経背側運動核]]、[[延髄]]の[[疑核]]、[[仙髄]]の側角(S2-S4)||副交感性:内臓、皮膚など
|}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

2015年6月27日 (土) 19:36時点における版

大石高生、*高田 昌彦
京都大学 霊長類研究所統合脳システム分野
DOI:10.14931/bsd.6048 原稿受付日:2015年6月1日 原稿完成日:2015年月日
担当編集委員:一戸 紀孝(国立精神・神経医療研究センター 神経研究所)
*:責任著者

英語名 ganglion

 神経節とは、末梢神経系における神経細胞体の集合である。その機能により、感覚神経節と自律神経節に大別される。

神経節とは

 神経節とは、末梢神経系における神経細胞体の集合である。その機能により、感覚神経節と自律神経節に大別される。この項では脊椎動物の神経節を取り上げ、無脊椎動物の中枢神経系をなす神経節については扱わない。

感覚神経節

 感覚神経節には、末梢で感覚刺激を受容した場合に、その情報を中枢に伝達する感覚ニューロンの細胞体が集合している。感覚ニューロンは、形態学的には双極性ニューロンあるいは偽単極性ニューロンである。偽単極性ニューロンは、一本の軸索が細胞体から出てしばらくしたところで二本に分かれ、、末梢端が樹状突起となる。感覚神経節には、三叉神経節、実神経節、前庭神経節、螺旋神経節、舌咽神経の上神経節と下神経節、迷走神経の上神経節と下神経節、脊髄後根神経節が含まれる。

自律神経節

 自律神経節内では、中枢神経系に細胞体がある節前ニューロンと、末梢の筋肉や線などを支配する節後ニューロンがシナプスを形成している。自律神経節には交感神経系のものと、副交感神経系のものとがある。交感神経節前ニューロン、副交感神経節前ニューロン、副交感神経節後ニューロンおよび汗腺を支配する交感神経節後ニューロンでは、アセチルコリンが神経伝達物質として用いられる。それ以外の交感神経節後ニューロンでは、ノルアドレナリンが神経伝達物質として用いられる。交感神経系の神経節には、交感神経幹神経節、自律神経叢神経節が含まれる。副交感神経系の神経節には、網様体神経節、翼口蓋神経節、顎下神経節、耳神経節と内臓を支配する副交感神経節(終末神経節、壁内神経節)が含まれる。

関連項目

参考文献

  1. R.A. Harvey, C. Krebs, J. Weinberg, E. Akesson 著、監訳 白尾智明
    イラストレイテッド神経科学
    丸善出版、2013.
  2. P. F. A. Martinez Martinez 著、水野 昇、岩堀修明、小西 昭 訳
    神経解剖学
    南光堂、1982.
  3. 平澤興、岡本道雄 著
    解剖学 2 脈管学・神経系 改訂第10版
    金原出版、1969.