脊椎動物

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
生物学生物 > 生物の分類 > 脊椎動物
脊椎動物
Vertebrata
生息年代: カンブリア紀-現在, 525–0 Ma
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
学名
Vertebrata
和名
脊椎動物 (せきついどうぶつ)
下位分類群

脊椎動物(せきついどうぶつ、Vertebrata)は、脊索動物に属する動物の一群である。

概要[編集]

分類[編集]

動物分類のひとつで、後口動物脊索動物門に属する単系統群である[1]。脊椎動物以外の動物を便宜上に無脊椎動物という。

脊椎動物とは、哺乳類鳥類爬虫類両生類魚類からなる系統群である。ただし爬虫類魚類側系統群であるので、単系統群のみを系統群として認める立場からは下記の表のように、四肢動物羊膜類双弓類といった単系統群を用語として用いることになる:

分類群 イメージ 種の数の見積もり[2]
脊椎動物 四肢動物 有羊膜類 哺乳類 5,513
双弓類 鳥類 10,425
爬虫類
(鳥類以外の双弓類からなる側系統)
10,711
両生類 7,302
魚類
(四肢動物以外の脊椎動物からなる側系統)
32,900
総計(種数) 66,178

表に記載したの数の見積もりは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリスト(2014年3月のもの)[2]から引用した。このリストでは現生の無脊椎動物の数を1,305,075と見積もっているので、脊椎動物の数は全動物中の5%以下ということになる。

特徴[編集]

系統分類上の位置づけ[編集]

動物界から脊椎動物に至る系統樹は下記のとおりである[3][4]。なお、脊椎動物から遠い系統群の詳細は省略している。省略部分の詳細は「動物」の項目を参照されたい。

動物

前左右相称動物側系統群[注釈 1]

左右相称動物
前口動物
冠輪動物
扁平動物

(略)

触手冠動物

(略)

担輪動物

(略)

脱皮動物
線形動物

(略)

鰓曳動物

(略)

汎節足動物

(略)

後口動物
水腔動物

棘皮動物

半索動物

脊索動物

頭索動物:一生、全体長に渡って脊索を持つ。ナメクジウオの仲間

尾索動物:一生ないし一時期に尾部に脊索を持つ。ホヤ綱オタマボヤ綱タリア綱(ヒカリボヤ、ウミタル、サルパなど)からなる。

脊椎動物:脊索の周囲に脊椎が形成される。

珍無腸動物

左右相称動物[編集]

例外も多いが[6][7]、基本的に下記のような特徴を持つ:

  • 完全な三胚葉性で[8]、体が左右相称(=左右対称)[8]
  • 肛門、およびこれらをつなぐ消化管をもち、体内に体腔ないし偽体腔(線形動物、輪形動物など)を持つ。
  • ボディプランは、前方(運動のとき体の進む方向)と後方の区別、腹側と背側の区別がある傾向があり、したがって左側と右側の区別も可能である[9][10]。運動のとき体の前方へと進むので、進行方向にあるものを識別する感覚器や餌を食べる口が前方に集まる傾向にある(頭化という)。
  • 多くの左右相称動物は環状筋縦走筋のペアを持つので[10]、ミミズのような体が柔らかい動物では水力学的骨格(英語版)の蠕動により動ける[11]
  • 多くの左右相称動物には繊毛で泳ぐことができる幼生の時期がある。

後口動物[編集]

後口動物(新口動物)とは歴史的には胚にできた原口が口になる前口動物(旧口動物)に対し、原口が口にならず新たに口が開く動物として定義された分類群である[12]。しかし1990年代に分子系統解析が始まると、この歴史的な意味での後口動物は単系統にならないことが示されたので、毛顎動物有鬚動物などが後口動物から外され、上述の系統樹にあるもののみが後口動物として残された[13]

なお、珍無腸動物 (Xenacoelomorpha) を含むか否かは2016年現在未確定[14][15][16][17][18]

脊索動物[編集]

脊索動物は脊椎動物を含む動物門で、(一生のうち少なくとも一時期に)脊索を持つという特徴をもつ[19]。詳細後述。

脊索動物門における脊椎動物の特徴・進化[編集]

脊索動物の特徴[編集]

脊索動物における脊椎動物の特徴や進化した点を見るため、本節では脊索動物の特徴を簡単に述べる。脊索動物は下記のような特徴を持つ:

  • 消化管と神経管の間に脊索(大きな液胞で満たされた繊維質の組織)というしなやかな棒状の構造を胚の時期に持つ[20]。成体でも脊索を保持する種も存在する[20]
  • 他の動物門の胚では腹側に神経索ができるのに対し、脊索動物の胚では背側に環状の神経索(神経管)ができ[20]、脳と脊髄からなる中枢神経系に発達する[20]
  • 消化管は口から肛門まで伸び[20]、胚の時期に咽頭(口のすぐ後ろの領域)の両側に溝のような構造(咽頭溝)ができ[20]、そこに咽頭裂という裂け目ができる[20]。脊椎動物以外の脊索動物の咽頭溝は多くの場合懸濁物食の器官として用いられる[20]
  • 他の動物門では消化管が体の後端まで伸びているものが多いのに対し、脊索動物では肛門の後ろに尾が伸びており[20]、水生の種では尾の骨格と筋肉を推進に用いる[20]。ただし胚発生の段階で尾が退化する種も多い[20]
ナメクジウオ

頭索動物(ナメクジウオ)は以下のような特徴を持つ:

  • ガス交換:咽頭裂では殆ど行われず、体表を通して行われる[20]
  • 採餌:繊毛を使って口から海水を取り込み、咽頭裂の粘膜で海水中の餌を捉えて消化管に送り込む。その際海水は咽頭裂から体外に出る[20]
  • 移動:脊索の両側にある筋肉を収縮させることにより脊索をしならせ、体を左右に振って移動する[20]
  • 体長:成体では6センチメートル程度[20]
ホヤの一種Polycarpa aurata

尾索動物(ホヤ類)は次のような特徴を持つ:

  • 幼生期:脊索動物の特徴が顕著であるが、幼生期が数分しかないものもいる[20]
  • 成体:固着性で、幼生期とは著しく姿を変える[20]。尾と脊索は吸収され、神経系も退化[20]
  • 採餌:咽頭裂から海水を入れ、粘液で海水中の餌を捉える。それを繊毛で食道に運び、水と排泄物が肛門から出水管へと出ていく[20]

ホヤ類はナメクジウオのもつ13のHox遺伝子のうち4つを失っており、幼生期のボディープランが他の脊索動物とは異なる機構で形成される[20]

またホヤ類は「他の脊索動物と分岐した後に、成体で脊索動物の特徴を失ったと考えられる」[20]

初期の脊索動物からの進化[編集]

現生種の解析から分かる事実[編集]

現生種の遺伝子の解析等から、以下のことが分かっている。

  • 初期の脊索動物は頭索動物のナメクジウオのような動物であり、口、脊索、背側神経管、咽頭裂、肛門より後方の尾を持っていたと思われる[21]
  • 「ナメクジウオの脳は十分発達しておらず、単に神経管の先端部がいくらか膨らんでいるだけ」[21]だが、この先端部の構造が複雑性を増して脊椎動物の脳が進化したと考えられる[21]。その根拠は脊椎動物の前脳・中脳・後脳の主要部を制御するホメオボックス遺伝子がナメクジウオでも同じパターンで発現していること[21]
  • 心臓や甲状腺のような脊椎動物特有の構造を制御する遺伝子が脊索動物の祖先にすでに備わっていたことがホヤの全ゲノム解析から示唆されている[21]
  • 脊椎動物特有の構造である神経堤に似た性質のある細胞がホヤから発見されているが、ナメクジウオにはこのような細胞がなく、ホヤは神経堤の進化の中間段階にある可能性がある[21]

進化史[編集]

ハイコウエラの復元図

まず5億3,000万年前(カンブリア爆発の頃)には、ハイコウエラ英語版というナメクジウオのような全長3センチメートルほどの生物の化石が発見されているが[22]、この生物は脊椎動物の特徴を一部持ち合わせている[22]。具体的にはナメクジウオと同様、懸濁物食をしていたと思われる口を持ち合わせている一方[22]、脊椎動物のようなよく発達した脳、小さな眼、魚類に似た筋節構造を持っている[22]

ミクロンギアの復元図

ミロクンミンギアは頭部を獲得した最古の脊索動物だと考えられており[22]、脳や眼を備えた頭部の獲得により複雑な動きや摂餌行動ができるようになったが[22]、まだ脊椎は獲得していない[22]

コノドントの復元図(右)とその2種類の歯(左)

最古の脊椎動物は5億年ほど前に現れており、その一つであるコノドント類は、軟骨性の内骨格しか持っていない[22]

オルドビス紀からシルル紀の間に脊椎動物はさらに進化して、半規管を持つ内耳の獲得により平衡感覚を保ち[22]対鰭も獲得した[22]。また筋肉質の咽頭を持ち[22]、これにより海底に住む生物や有機堆積物を吸い込んで食べていたと考えられている[22]。またこの頃には硬骨の甲皮で身を守る遊泳性の脊椎動物が数多くいたが、デボン紀末に全て絶滅した[22]

軟骨性の骨格が硬骨化したのは、4億7,000万年ほど前に甲皮が出現したのが始まりで[22]、4億3,000万年前までには軟骨の内骨格を薄い硬骨が覆う種が現れ始め[22]、その後、顎を獲得した脊椎動物で硬骨化が進んだ[22]

脊椎動物の特徴[編集]

他の脊索動物では1つしかないHox遺伝子が脊椎動物では2つあるなど[23]、脊椎動物ではシグナル分子や転写因子をコードする重要な遺伝子ファミリーに対して遺伝子重複が起きており[23]、「このことが脊椎動物の骨格系や神経系の革新に結びついた可能性がある」[23]

他の脊索動物との差異[編集]

脊椎動物においては、他の脊索動物が持つ特徴である脊索や咽頭裂は以下のように変化している:

  • ほとんどの脊椎動物では脊索の周囲に連結した骨格が発達し[20]、成体では脊椎の名残が残るのみ[20]。ヒトでは脊索は退化して椎間板の一部になる[20]
  • 咽頭裂とそれを支持する咽頭弓は四肢動物以外ではガス交換に用いられる[20]。四肢動物では「咽頭溝は咽頭裂として開口しないが、耳などの頭部や頸部の構造の発生において重要な役割を演じる」[20]

脊椎動物の派生形質[編集]

多くの脊椎動物では脊椎骨が神経管を取り囲んでおり[23]、また胚において神経管が閉じつつある際に神経管の背側に神経堤が形成されるという特徴がある[23]。「神経堤は胚の中で移動し、歯、頭蓋骨の一部や軟骨、神経、眼などの感覚器官の原基など、さまざまな構造をつくり出す」[23]

脊椎動物から羊膜類に至る系統樹[編集]

脊椎動物の系統樹は以下の通りである[24]。右下に太字で描いた「四肢動物」は「魚類以外の脊椎動物」を表し、脊椎動物以下で四肢動物を除いたものが「魚類」である。

脊椎動物
円口類

ヌタウナギ類

ヤツメウナギ類

顎口類

軟骨魚類サメエイギンザメ目

硬骨魚類

条鰭類

肉鰭類

総鰭類シーラカンス目

肺魚類

四肢動物

両生類

羊膜類

指のある肢の獲得
肉鰭の獲得
またはその派生物の獲得
硬骨の獲得
脊椎骨の獲得

円口類[編集]

ヌタウナギとヤツメウナギからなり、脊椎動物の中で顎を持たないという特徴を持つ[23]。脊椎骨を持たないがその痕跡はある[23]。なお、かつてヌタウナギには脊骨がないとされ、脊椎動物から外されていたが、その後分子系統解析が進み、脊椎骨の痕跡が見つかると脊椎動物に分類されるようになった[23]

顎口類[編集]

特徴[編集]

顎口類は顎のある脊椎動物で、顎口類は顎とそこに生えている歯で餌を捕まえたり噛み砕いたりできる[25]。顎は前方にある咽頭裂(顎口類では「鰓裂」と呼ばれる)を支えるための骨が進化したものだという仮説があり[25]、残りの鰓裂は主にガス交換に用いられるようになった[25]

遺伝子レベルでは顎口類はHox遺伝子クラスターが重複しているという特徴があり[25]、これが顎の進化などを可能にしたものと考えられる[25]。なお前述のように初期の脊椎動物でもHox遺伝子クラスターの重複が起こっているので、顎口類ではHox遺伝子クラスターが2×2=4つに増えたことになる[25]

進化史[編集]

顎口類の初期の化石は4億4,000万年前に現れ[25]、その後の2,000万年で急激に進化した[25]。現在まで生き残っている系統である軟骨魚類、条鰭類、肉鰭類はいずれも4億2,000万年前までに登場している[25]

最古の顎口類の化石は板皮類という鎧を持つ系統であるが[25]、この系統は3億5,900万年前頃に絶滅した[25]。ほぼ同時期に棘魚類という系統も出現したが[25]、板皮類の絶滅から7,000万年後には絶滅した[25]

軟骨魚類[編集]

特徴[編集]

軟骨を持つことに特徴があり[26]、1,000種近い板鰓亜綱サメエイ)と、数十種類の全頭亜綱ギンザメ類)からなる[26]

進化史[編集]

すでに述べたように脊椎動物は甲皮を持った無顎類のような初期の段階ですでに硬骨化が始まっているが、軟骨魚類はそれが2次的に軟骨化した系統である[26](すなわち軟骨→硬骨→軟骨という進化史をたどっている)。実際、石炭紀のサメ類の鰭の骨格には硬骨に似た構造があり、現生のサメにも鱗や歯の基部に硬骨組織の痕跡が残っている[26]

硬骨魚類[編集]

硬骨「魚」類という名称であるが、2016年現在は系統樹を反映して四肢動物も硬骨魚類に含めている[27](四肢動物を含めない場合、硬骨魚類は側系統である[27])。

特徴・進化[編集]

初期の硬骨魚類の系統には肺が存在し、鰓のガス交換の補助をしていた[27]。しかし四肢動物を除く多くの現生の硬骨魚類では肺は(うきぶくろ)へと進化している[27]。鰾には空気が詰まっており[27]、魚達は浮力の調整に鰾を使っている[27]。また四肢動物を除くほとんどの現生の硬骨魚類の表皮は鱗で覆われている[27]。表皮には分泌腺から粘液が分泌され、泳ぐときの抵抗を減らしている[27]

条鰭類[編集]

鰭を支える条鰭を持つことからその名が名付けられた[27]シルル紀に登場し[27]、その後多様化して現生では27,000種以上もいる[27]

肉鰭類[編集]

「肉鰭類の重要な派生形質は、胸鰭と腹鰭の間に筋肉層で囲まれた棒状の骨が存在することである」[27]。条鰭類と同様シルル紀に登場した[27]デボン紀には沿岸の湿地帯のような汽水域に多くの肉鰭類が生息しており、肉鰭を泳ぐためのみならず歩くためにも使っていた(現生種も同様)[27]。デボン紀の終わりまでには多様性が減少し、現生は3系統(シーラカンス類、ハイギョ類、四肢動物)のみが生き残っている[27]

四肢動物[編集]

特徴[編集]

胸鰭と腹鰭が指のある四肢に進化した肉鰭類[28]。四肢によって歩行する[28]。陸上生活に適応しており、頚(くび)が生じて頭部が分離されている[28]。完全に水生の種以外は鰓を持たず、代わりに耳や腺性器官を胚発生の際に作り出す[28]

進化史[編集]

デボン紀に生じた肉鰭類の中には泥の上を「歩いた」ものがいたものと思われる[28]。3億7,500万年前の肉鰭類であるティクタアリクは、鰭や鰓といった魚類の特徴を持つと同時に、肋骨(呼吸を助け、体を支える役目を担う)、頸・肩・肺があり、頭部を動かすことができるなど四肢動物の特徴も備えていた[28]。3億6,500万年前頃最初の四肢類が生じ[28]、その後の6,000万年間で著しい多様化が進んだ[28]

両生類[編集]

無尾目カエル類、5420種ほど[29])、有尾目サンショウウオ類、550種ほど[29])、無足目アシナシイモリ目、170種ほど[29])からなる[29]。 両生類は主に湿った表皮でガス交換しているため[29]、その生息域は沼地や雨林など湿ったところにあり[29]、乾燥に適応している種でも湿度の高い穴や湿った葉の下で過ごすことが多い[29]。また両生類の卵は殻がなく、空気中では水分を急速に失ってしまう為、両生類は水中ないし湿った陸地に産卵する[29]。多くの両生類は体外受精である[29]

両生類はカエルツボカビ症、気候変動、生息地の消失、環境汚染等が原因で、(2016年現在から見て)過去30年ほどの間に急速に減少している[29]

羊膜類の系統樹[編集]

次に羊膜類の系統樹を載せる[30][31]。下の系統樹は上のものと違い、絶滅種も含んでおり、絶滅種にはそれとわかるように「†」がつけられている。系統樹には「鳥類」と「哺乳類」を太字で書いた。この系統樹からこれら2つを除いたもののうち現生種が「爬虫類」となる。

羊膜類羊膜卵の獲得)
双弓類
主竜類

カメ目

ワニ目

翼竜類

恐竜類

鳥盤類

竜盤類

†鳥類以外の竜盤類

鳥類

魚竜類

首長竜類

鱗竜類

ムカシトカゲ目

有鱗類トカゲヘビ

単弓類

哺乳類

羊膜類[編集]

特徴[編集]

陸上生活に適応した四肢動物で、卵に以下の4種類の膜を持つという共通派生形質を持ち、このような卵を羊膜卵という[32]

ニワトリの卵。羊膜(Amnion)、胚(Embryo)、尿膜(Allantois)、殻(Shell Albumen)、 卵殻(Chorion) 卵黄(Vitellus)が見える。

乾燥した陸地に適した羊膜卵を得たことで羊膜類は両生類と違い、幼生期を水中で過ごす必要がなくなった[31]

進化史[編集]

現生の両生類と羊膜類の最直近の共通祖先は3億5,000万年前には生存していた[32]。初期の羊膜類は小型のトカゲのような動物で、捕食のためと思われる鋭い歯を備えていた[32]

双弓類[編集]

双弓類の頭蓋骨

双弓類は頭骨の側頭部に2つの穴を持つことを共通派生形質とする動物である[32](右図)。

鳥類以外の現生の双弓類はケラチンを主成分とする鱗に覆われているという共有派生形質を持ち[33]、この鱗で乾燥や摩擦から皮膚を守っている[33]。またほとんどの爬虫類の卵は殻で覆われている[33]。多くの爬虫類は陽射しのような体外の熱で体温調整を行う外温性の動物であり[33]、鳥類や哺乳類のような代謝により体温を維持する内温性の動物と区別される[33]

主竜類[編集]

カメ類[編集]

2億4,000万年前に腹側に甲状の骨を持っている種が現れ[33]、2億2,000万年前には背側にも不完全ながら甲を持つものが現れる[33]

なお、カメ類には双弓類の共通派生形質であるはずの2つの穴がないものの[33]、双弓類であることは系統解析の点からも、絶滅種の化石の頭骨に穴のあるものがあることからも支持される[33]

ワニ類[編集]

ワニ類の祖先は三畳紀後期まで遡る[33]。最古のものは陸生で小さかったが、その後大型化して水生に適応[33]

翼竜類[編集]

羽ばたいて飛行できた最初の四肢動物[32]。前肢の一本の指から胴または後肢にコラーゲンでできた膜が翼として伸びているが[32]、これは前肢から翼が伸びる鳥類や手に翼が伸びているコウモリとは構造が異なる。

三畳紀後期に出現し[32]、6600万年前までには絶滅した[32]

恐竜類[編集]

鳥盤類と竜盤類を含む[32]。鳥盤類は草食で[32]、多くの種では棍棒状の尾や頭の角などの防御機構を発達させていた[32]。竜盤類には獣脚類(ティラノサウルス・レックス等)と首の長い草食の竜脚類とが含まれる[32]。1970年代ごろの発見から機敏に動いていたことが示されている[32]。群れを作るもの[32]、巣作りや子育てを行うもの[32]、内温性のものなどがいたこと[32]なども示されている。

鳥類以外の恐竜類は白亜紀の終わりである6600万年前に絶滅した[32]。鳥類に関しては後述する。

鳥類[編集]

特徴[編集]

鳥類は飛行のための翼を備え、飛行の為に様々な適応している。まず体を軽量化する為、膀胱がなく[34]、卵巣が1つに減っており[34]、雌雄とも生殖腺は繁殖期以外は小さく[34]、嘴には歯もない[34]。また飛行に十分なエネルギーを確保する為、伸縮性のある肺の気嚢を持つ呼吸系と二心室二心房の循環系で高い代謝率を達成している[34]。飛行における必要性から視覚も発達しており[34]、相対的に大きな脳を持ち[34]、飛行に必要な視覚野と運動野が特に発達している[34]

鳥類は内温性で[34]、羽毛や(種によっては)脂肪により代謝熱が外にもれないようになっている[34]。羽毛は爬虫類の鱗と同様βケラチンというタンパク質からできている[34]。交尾は総排出口の接触により行われる[34]

平胸類は例外的に飛べない鳥からなっており[35]、ダチョウ、レア、キウイ、ヒクイドリ、エミュー等が属している[35]

進化史[編集]

1億6,000万年前までに羽毛を持つ獣脚類が誕生している[35]。2016年現在知られている中では始祖鳥が最古の鳥類であり[35]、始祖鳥は翼に羽毛を持つ[35]など現生鳥類と同様の特徴を持つが、一方で翼には爪もあり[35]、嘴に歯がある[35]など現生鳥類とは異なる特徴も残している。

新鳥類という現生28目を含むクレードは6600万年前より前から存在していた[35]

鱗竜類[編集]

鱗竜類は、現生のものは有鱗類(トカゲとヘビ)とムカシトカゲ類からなり[36]、有鱗類は爬虫類の中では最も種が多い系統である[31]。有鱗類のうちヘビ類は、四肢のあるトカゲ類から進化したものである[36]

ムカシトカゲ類は遅くとも2億2,000万年前には出現し[36]、白亜紀までは繁栄していたが[36]、2016年現在はニュージーランドに近い島々に住んでいるのみである[36]。寿命は100歳を超える[36]

単弓類・哺乳類[編集]

単弓類の頭蓋骨左から鼻孔眼窩側頭窓

単弓類は側頭窓が1つしかないという共通派生形質を持ち(右図参照)[37]、現生の単弓類はすべて哺乳類に属する[37]。なお側頭窓はヒトでは顎の筋肉と側頭部とを結ぶための穴に相当する[37]

哺乳類の特徴[編集]

乳腺を持ち、雌の乳腺から出る母乳により子を育てる[38]。相対的に大きな脳を持つ種が多い[38]。内温性で体表の毛により代謝熱を逃さないようにしている[38]腎臓の機能が発達している為、老廃物の排出の際の水分の損失が少ない[38]

進化史[編集]

初期の単弓類は体毛がなく卵生であった[37]。単弓類はペルム紀にその多様性を広げ[37]、四肢動物の中では優勢であったが[37]、ペルム紀末の大量絶滅の際にその多様性が減少した[37]

哺乳類の起源は獣歯類に属するキノドン類であり[39]、キノドン類は三畳紀後期の大量絶滅を乗り越え哺乳形類が誕生した[39]。小型[37]・夜行性[37]・昆虫食[37]であり、おそらく体毛があった[37]

ジュラ紀には哺乳類が登場[37]。白亜紀までには現生哺乳類の3つの系統(単孔類有袋類真獣類)が登場[37]。白亜紀後期における恐竜と爬虫類の多くが絶滅した後、哺乳類は適応放散した[37]。哺乳類の適応放散は大陸の分裂と密接に関係しており[39]ゴンドワナ大陸がジュラ紀後期に分裂した際、南アメリカ大陸で異節類、アフリカ大陸でアフリカ獣類ローラシア大陸北方真獣類が進化した[39]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 「前左右相称動物」というのは左右相称動物以外の動物門について述べるための便宜的な名称で、「前左右相称動物」という系統群があるわけではない[5]

出典[編集]

  1. ^ 藤田(2010), p.113.
  2. ^ a b The World Conservation Union. 2014. IUCN Red List of Threatened Species, 2014.3. Summary Statistics for Globally Threatened Species. Table 1: Numbers of threatened species by major groups of organisms (1996–2014).
  3. ^ 藤田(2010), p.113. pp.174-175.
  4. ^ 馬渡 (2013), p.2.
  5. ^ 藤田(2010), p.113.
  6. ^ 動物#cite note-Minelli20092-135[リンク切れ]
  7. ^ 動物#cite note-Brusca20162-136[リンク切れ]
  8. ^ a b 動物#cite note-Fujita10-122-132-131[リンク切れ]
  9. ^ Minelli, Alessandro (2009). Perspectives in Animal Phylogeny and Evolution. Oxford University Press. p. 53. ISBN 978-0-19-856620-5. https://books.google.com/books?id=jIASDAAAQBAJ&pg=PA53 
  10. ^ a b 動物#cite note-Brusca20162-136[リンク切れ]
  11. ^ 動物#cite note-Quillin2-137[リンク切れ]
  12. ^ 藤田(2010) p104
  13. ^ 藤田(2010) p108
  14. ^ Philippe, Hervé; Brinkmann, Henner; Copley, Richard R.; Moroz, Leonid L.; Nakano, Hiroaki; Poustka, Albert J.; Wallberg, Andreas; Peterson, Kevin J. et al. (2011-02). “Acoelomorph flatworms are deuterostomes related to Xenoturbella” (英語). Nature 470 (7333): 255–258. doi:10.1038/nature09676. ISSN 0028-0836. PMC 4025995. PMID 21307940. http://www.nature.com/articles/nature09676. 
  15. ^ 馬渡 (2013), p27-p29
  16. ^ Rouse, Greg W.; Wilson, Nerida G.; Carvajal, Jose I.; Vrijenhoek, Robert C. (2016-02). “New deep-sea species of Xenoturbella and the position of Xenacoelomorpha” (英語). Nature 530 (7588): 94–97. doi:10.1038/nature16545. ISSN 0028-0836. http://www.nature.com/articles/nature16545. 
  17. ^ Cannon, Johanna Taylor; Vellutini, Bruno Cossermelli; Smith, Julian; Ronquist, Fredrik; Jondelius, Ulf; Hejnol, Andreas (2016-02). “Xenacoelomorpha is the sister group to Nephrozoa” (英語). Nature 530 (7588): 89–93. doi:10.1038/nature16520. ISSN 0028-0836. http://www.nature.com/articles/nature16520. 
  18. ^ 分類学:珍無腸動物門はNephrozoaの姉妹群である”. ネイチャー (2016年2月4日). 2018年7月20日閲覧。
  19. ^ 藤田(2010), pp.174-175.
  20. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z キャンベル11版 pp.826-827.
  21. ^ a b c d e f キャンベル11版 pp.828-829.
  22. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p キャンベル11版 pp.831-832.
  23. ^ a b c d e f g h i キャンベル11版 pp.829-830.
  24. ^ キャンベル11版 p.826.
  25. ^ a b c d e f g h i j k l m キャンベル11版 pp.832-833
  26. ^ a b c d キャンベル11版 pp.833-834
  27. ^ a b c d e f g h i j k l m n o キャンベル11版 pp.834-836
  28. ^ a b c d e f g h キャンベル11版 pp.837-838
  29. ^ a b c d e f g h i j キャンベル11版 pp.838-841
  30. ^ キャンベル11版 p.841
  31. ^ a b c 日本動物学会2018 pp.98-99.
  32. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u キャンベル11版 pp.841-843
  33. ^ a b c d e f g h i j k キャンベル11版 pp.842-845
  34. ^ a b c d e f g h i j k l キャンベル11版 pp.845-846
  35. ^ a b c d e f g h キャンベル11版 pp.846-847
  36. ^ a b c d e f キャンベル11版 pp.843-845
  37. ^ a b c d e f g h i j k l m n キャンベル11版 pp.848-849.
  38. ^ a b c d キャンベル11版 p.848.
  39. ^ a b c d 日本動物学会2018 pp.102-103.

参考文献[編集]

  • キャンベル生物学 原書11版. 丸善出版. (2018/3/20). ISBN 978-4621302767 
    • 原著:Lisa A. Urry; Michael L. Cain; Steven A. Wasserman; Peter V. Minorsky; Jane B. Reece; Neil A. Campbell (2016/10/29). Campbell Biology (11th Edition). Pearson. ISBN 978-0134093413 
  • 藤田敏彦 著、太田次郎、赤坂甲治、浅島誠、長田敏行 編『動物の系統分類と進化』裳華房〈新・生命科学シリーズ〉、2010年4月28日。ISBN 978-4785358426 
  • 公益社団法人日本動物学会『動物学の百科事典』丸善出版、2018年9月28日。ISBN 978-4621303092 

さらなる理解のために[編集]

系統分類の詳細: