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担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0048432 定藤 規弘](自然科学研究機構生理学研究所 [[大脳皮質]]機能研究系)<br>*:責任著者 | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0048432 定藤 規弘](自然科学研究機構生理学研究所 [[大脳皮質]]機能研究系)<br>*:責任著者 | ||
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物理レベルでは、例として、観察者が、テーブルの上に、コーヒーカップと雑誌が置いてあるのを見ている光景を思い浮かべていただきたい。自己中心視点から記述すると、「右前方1メートルのところにコーヒーカップがあり、左前方のほぼ同じ距離に雑誌が置いてある」と説明できる。一方で、他者中心視点 (環境中心視点)から記述すると、「テーブルの上に2つの物体があり、テーブルの中心より右側にコーヒーカップがあり、中心より左側に雑誌がある」と説明できる<ref>'''乾 敏郎'''<br>イメージ脳<br>''岩波書店'', 2009</ref>。 | |||
対象を認識する際には、まず自己中心視点を用いることが多い。したがって、他者中心視点への視点転換を行う場合には、自己中心視点を用いることを抑制する必要があると考えられている<ref>'''乾 敏郎'''<br>脳科学からみる子どもの心の育ち: 認知発達のルーツをさぐる<br>''ミネルヴァ書房'', 2013</ref>。 | |||
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== 神経基盤 == | == 神経基盤 == | ||
視点転換には、[[前頭眼野]] (Frontal Eye field)と左の[[側頭頭頂接合部]] (TPJ: Temporal Parietal Junction)が関与する<ref>'''乾 敏郎'''<br>視点と参照枠<br>乾 敏郎・吉川 左紀子・川口 潤 (編) よくわかる認知科学<br>''ミネルヴァ書房'', 2010</ref><ref><pubmed> 24535033 </pubmed></ref><ref><pubmed> 23999082 </pubmed></ref><ref><pubmed> 25496670 </pubmed></ref>。[[自己視点]]を抑制して[[他者視点]]で判断するときに、右半球の[[45野]]が活動する<ref><pubmed> 15774506 </pubmed></ref>。物語を理解する際に必要な登場人物の空間的な視点転換(空間的他者視点取得)には、右の側頭頭頂接合部と[[楔前部]] (precuneus)が関与する<ref><pubmed> 19135072 </pubmed></ref>。心の理論を解明するために使用される誤信念課題を用いた研究では、信念課題と比較して誤信念課題を解いている際には、左の側頭頭頂接合部と楔前部が関与する<ref><pubmed> 25042446 </pubmed></ref>。 | |||
== 関連項目 == | == 関連項目 == |
2015年11月10日 (火) 04:06時点における版
*間野 陽子
京都大学文学研究科心理学研究室 日本学術振興会特別研究員(RPD)
米田 英嗣
京都大学白眉センター
DOI:10.14931/bsd.6218 原稿受付日:2015年8月3日 原稿完成日:201X年X月X日
担当編集委員:定藤 規弘(自然科学研究機構生理学研究所 大脳皮質機能研究系)
*:責任著者
英語名:changing perspectives 独:Perspektivenwechsel 仏:l'évolution des perspectives
同義語:他者視点取得 (perspective-taking)
視点転換は、自己中心視点および他者中心視点からなるものであり、物体の見え方などの物理レベルと、他者の意図や心的状態の推測に関わる社会レベルに分けられる。特に、社会レベルの視点転換では、他者視点取得 (perspective-taking)が必要となり、他者の信念や意図を推測する際に必要な能力である「心の理論」や共感と強く関与することが知られている。
視点転換とは
他者中心視点から自己中心視点、自己中心視点から他者中心視点に視点を切り替えることである。
物理レベルでは、例として、観察者が、テーブルの上に、コーヒーカップと雑誌が置いてあるのを見ている光景を思い浮かべていただきたい。自己中心視点から記述すると、「右前方1メートルのところにコーヒーカップがあり、左前方のほぼ同じ距離に雑誌が置いてある」と説明できる。一方で、他者中心視点 (環境中心視点)から記述すると、「テーブルの上に2つの物体があり、テーブルの中心より右側にコーヒーカップがあり、中心より左側に雑誌がある」と説明できる[1]。
対象を認識する際には、まず自己中心視点を用いることが多い。したがって、他者中心視点への視点転換を行う場合には、自己中心視点を用いることを抑制する必要があると考えられている[2]。
社会レベルでは、他者を受け入れて理解するための能力である他者視点取得が重要であり、他者の経験の知覚に対する自己の反応や共感にとって必要な要素となる[3]。 社会生活を円滑に送るためには、相手の気持ちを推察する際に必要な他者の感情認知と、他者と自己とが異なることを理解する際に必要な自己認知が重要である。他者の感情認知において、相手の立場に立って考えるという他者視点取得や「心の理論」の能力が必要である[4]。視点の変換は、「心の理論」を測定するための誤信念課題を解く際にも必要である[5]。また、物語を理解する際に登場人物の視点に立つことにより登場人物の時間的・空間的な移動を理解する際や、登場人物の心の動きを理解する際にも必要である[6][7]。
神経基盤
視点転換には、前頭眼野 (Frontal Eye field)と左の側頭頭頂接合部 (TPJ: Temporal Parietal Junction)が関与する[8][9][10][11]。自己視点を抑制して他者視点で判断するときに、右半球の45野が活動する[12]。物語を理解する際に必要な登場人物の空間的な視点転換(空間的他者視点取得)には、右の側頭頭頂接合部と楔前部 (precuneus)が関与する[13]。心の理論を解明するために使用される誤信念課題を用いた研究では、信念課題と比較して誤信念課題を解いている際には、左の側頭頭頂接合部と楔前部が関与する[14]。
関連項目
外部リンク
参考文献
- ↑ 乾 敏郎
イメージ脳
岩波書店, 2009 - ↑ 乾 敏郎
脳科学からみる子どもの心の育ち: 認知発達のルーツをさぐる
ミネルヴァ書房, 2013 - ↑
Blair, R.J. (2005).
Responding to the emotions of others: dissociating forms of empathy through the study of typical and psychiatric populations. Consciousness and cognition, 14(4), 698-718. [PubMed:16157488] [WorldCat] [DOI] - ↑ 板倉 昭二
「他者の心:メンタライジングを中心に」
大津 由紀雄・波多野 誼余夫 (編)『認知科学への招待』
研究社, 2004 - ↑
Frith, C.D., & Frith, U. (2006).
The neural basis of mentalizing. Neuron, 50(4), 531-4. [PubMed:16701204] [WorldCat] [DOI] - ↑
Zwaan, R.A., & Radvansky, G.A. (1998).
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Komeda, H., & Kusumi, T. (2006).
The effect of a protagonist's emotional shift on situation model construction. Memory & cognition, 34(7), 1548-56. [PubMed:17263078] [WorldCat] [DOI] - ↑ 乾 敏郎
視点と参照枠
乾 敏郎・吉川 左紀子・川口 潤 (編) よくわかる認知科学
ミネルヴァ書房, 2010 - ↑
van Veluw, S.J., & Chance, S.A. (2014).
Differentiating between self and others: an ALE meta-analysis of fMRI studies of self-recognition and theory of mind. Brain imaging and behavior, 8(1), 24-38. [PubMed:24535033] [WorldCat] [DOI] - ↑
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Schaafsma, S.M., Pfaff, D.W., Spunt, R.P., & Adolphs, R. (2015).
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Samson, D., Apperly, I.A., Kathirgamanathan, U., & Humphreys, G.W. (2005).
Seeing it my way: a case of a selective deficit in inhibiting self-perspective. Brain : a journal of neurology, 128(Pt 5), 1102-11. [PubMed:15774506] [WorldCat] [DOI] - ↑
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Schneider, D., Slaughter, V.P., Becker, S.I., & Dux, P.E. (2014).
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