「先天性大脳白質形成不全症」の版間の差分

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 数多くの動物モデルがPMDの病態解明と治療法開発のために用いられていおり、実際に主要な分子細胞機序はこれらの動物モデルを用いた解析から明らかになっている。自然発生モデルと遺伝子改変モデルの両方が確立しており、マウスをはじめ、イヌ、ウサギ、ラットなどのモデル動物が知られている。
 数多くの動物モデルがPMDの病態解明と治療法開発のために用いられていおり、実際に主要な分子細胞機序はこれらの動物モデルを用いた解析から明らかになっている。自然発生モデルと遺伝子改変モデルの両方が確立しており、マウスをはじめ、イヌ、ウサギ、ラットなどのモデル動物が知られている。


 自然発生モデルの多くは、タンパク質をコードするエクソンやスプライス・ジャンクションの変異によって、アミノ酸置換やエクソン欠失など構造変化を引き起す。これらのうちjimpy(jp)とmyelin synthesis deficit(msd)は、重症型PMDのモデルとして用いられている<ref><pubmed> 2425262 </pubmed></ref><ref><pubmed> 1688931 </pubmed></ref>。どちらも重度の神経症状を呈し、生後1ヶ月ほどで死亡する。脳ではオリゴデンドロサイトのアポトーシスの増加により、成熟オリゴデンドロサイトの数は減少し、ミエリン鞘がほとんど形成されていない。一方、軽症型PMDあるいはSPG2のモデルとして、rumpshaker(rsh)マウス、shaking(sh)イヌ、paralytic tremor(pt)ウサギなどが知られている<ref><pubmed> 1694232 </pubmed></ref><ref><pubmed> 8894446 </pubmed></ref><ref><pubmed> 8275312 </pubmed></ref>。これらのモデル動物は、症状は比較的軽度で、成体まで生存する。脳ではミエリン形成不全の程度は軽く、成熟オリゴデンドロサイトも存在する。これらのモデル動物のうち、jp、msd、rshマウスの変異は、ヒトPMD/SPG2患者で全く同じ変異が見つかっており、表現型もこれらヒト患者の重症度にそぐうものであるため、これらのモデルマウスはヒト患者における重症度の多様性の分子細胞機序の研究のためのツールとして適している。
 自然発生モデルの多くは、タンパク質をコードするエクソンやスプライス・ジャンクションの変異によって、アミノ酸置換やエクソン欠失など構造変化を引き起す。これらのうちjimpy(jp)とmyelin synthesis deficit(msd)は、重症型PMDのモデルとして用いられている<ref><pubmed> 2425262 </pubmed></ref><ref><pubmed> 1688931 </pubmed></ref>。どちらも重度の神経症状を呈し、生後1ヶ月ほどで死亡する。脳ではオリゴデンドロサイトのアポトーシスの増加により、成熟オリゴデンドロサイトの数は減少し、ミエリン鞘がほとんど形成されていない。一方、軽症型PMDあるいはSPG2のモデルとして、rumpshaker(rsh)マウス、shaking(sh)イヌ、paralytic tremor(pt)ウサギなどが知られている<ref><pubmed> 1694232 </pubmed></ref><ref><pubmed> 8894446 </pubmed></ref><ref><pubmed> 8275312 </pubmed></ref>。これらのモデル動物は、症状は比較的軽度で、成体まで生存する。脳ではミエリン形成不全の程度は軽く、成熟オリゴデンドロサイトも存在する。これらのモデル動物のうち、jp、msd、rshマウスの変異は、ヒトPMD/SPG2患者で全く同じ変異が見つかっており、表現型もこれらヒト患者の重症度にそぐうものであるため、これらのモデルマウスはヒト患者における重症度の多様性の分子細胞機序の研究のためのツールとして適している。


 トランスジェニックおよびノックアウトマウスは、遺伝子改変モデルとして報告されている<ref><pubmed> 7520255 </pubmed></ref><ref><pubmed> 7512350 </pubmed></ref><ref><pubmed> 9010205 </pubmed></ref><ref><pubmed> 9616125 </pubmed></ref>。トランスジェニックマウスは、PMDの遺伝子重複変異のモデルとなる。コスミドクローンを用いたゲノム重複モデルは、PLP1とDM20の両方の転写産物の過剰発現を再現しているが、トランスジーンは常染色体からの発現となる。最近、リコンビニアリングの技術を用いたマウスPlp1遺伝子座のゲノム重複をもつマウスも作られている<ref><pubmed> 23864668 </pubmed></ref>。これら過剰発現マウスの表現型は、発現量の多いホモ接合体の方が発現量の低いヘテロ接合体よりも重症であることから、遺伝子量効果gene dosage effectを呈していることが分かる。一方、ノックアウトマウスでは、正常に近いミエリン形成の量とオリゴデンドロサイトの数が観察されており、PLP1欠失あるいは機能欠損変異の疾患モデルとなる。ノックアウトマウスで他の他の疾患モデルと大きく異なる点は、ミエリン形成不全を伴わずに、遅発性軸索変性を来すことである。これはPLP1が軸索の維持に必要であることを示唆するが、その分子機序は依然不明である。
 トランスジェニックおよびノックアウトマウスは、遺伝子改変モデルとして報告されている<ref><pubmed> 7520255 </pubmed></ref><ref><pubmed> 7512350 </pubmed></ref><ref><pubmed> 9010205 </pubmed></ref><ref><pubmed> 9616125 </pubmed></ref>。トランスジェニックマウスは、PMDの遺伝子重複変異のモデルとなる。コスミドクローンを用いたゲノム重複モデルは、PLP1とDM20の両方の転写産物の過剰発現を再現しているが、トランスジーンは常染色体からの発現となる。最近、リコンビニアリングの技術を用いたマウスPlp1遺伝子座のゲノム重複をもつマウスも作られている<ref><pubmed> 23864668 </pubmed></ref>。これら過剰発現マウスの表現型は、発現量の多いホモ接合体の方が発現量の低いヘテロ接合体よりも重症であることから、遺伝子量効果gene dosage effectを呈していることが分かる。一方、ノックアウトマウスでは、正常に近いミエリン形成の量とオリゴデンドロサイトの数が観察されており、PLP1欠失あるいは機能欠損変異の疾患モデルとなる。ノックアウトマウスで他の他の疾患モデルと大きく異なる点は、ミエリン形成不全を伴わずに、遅発性軸索変性を来すことである。これはPLP1が軸索の維持に必要であることを示唆するが、その分子機序は依然不明である。