「有芯小胞」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/sadakata 定方 哲史]</font><br>
''群馬大学 先端科学研究指導者育成ユニット''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年3月16日 原稿完成日:2012年3月30日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br>
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英語名:dense-core vesicle (DCV)
英語名:dense-core vesicle (DCV)


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 有芯小胞(dense-core vesicle)は直径50~200 nmほどの球状の[[wikipedia:ja:オルガネラ|オルガネラ]]であり、[[wikipedia:ja:ホルモン|ホルモン]]や[[神経ペプチド]]などを内包している。[[電子顕微鏡]]による観察では、電子密度の高い像を示すが、これは内容物であるホルモンやペプチドによると考えられている。[[wikipedia:ja:副腎|副腎]]、[[wikipedia:ja:すい臓|すい臓]]、[[下垂体]]、[[脳]]といったホルモンを産生する組織に多く見られる。
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== 有芯小胞の成熟過程 ==
== 有芯小胞の成熟過程 ==
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 分泌細胞は数千の有芯小胞を持っているが、有芯小胞の半減期は数日である。一方、成熟化は早く、半数の有芯小胞は45分以内で成熟化することが分かっている。
 分泌細胞は数千の有芯小胞を持っているが、有芯小胞の半減期は数日である。一方、成熟化は早く、半数の有芯小胞は45分以内で成熟化することが分かっている。


 まず未成熟な有芯小胞が[[wikipedia:ja:ゴルジ体|トランスゴルジネットワーク]]で形成され、線維状[[アクチン]]ネットワーク上を[[ミオシン]]Va依存的に[[細胞膜]]へと運ばれる。成熟化の過程において有芯小胞は、[[シンタキシン]]6や[[シナプトタグミン]]IVなどとの融合のステップを経て、より大きな芯を形成するようになる。また、小胞内においては酵素によって内容物のプロセシングなどが行われる。未成熟な有芯小胞特異的なタンパク質は、成熟した有芯小胞になる過程で[[クラスリン]]依存的な膜再構成によって除かれる。
 まず未成熟な有芯小胞が[[wikipedia:ja:ゴルジ体|トランスゴルジネットワーク]]で形成され、線維状[[アクチン]]ネットワーク上を[[ミオシン]]Va依存的に[[wikipedia:ja:細胞膜|細胞膜]]へと運ばれる。成熟化の過程において有芯小胞は、[[シンタキシン]]6や[[シナプトタグミン]]IVなどとの融合のステップを経て、より大きな芯を形成するようになる。また、小胞内においては酵素によって内容物のプロセシングなどが行われる。未成熟な有芯小胞特異的なタンパク質は、成熟した有芯小胞になる過程で[[クラスリン]]依存的な膜再構成によって除かれる。


 同時に有芯小胞内腔の酸性化も行われる。ゴルジ体内腔のpHは6.5であるが、成熟した有芯小胞の内腔は5.0-6.0である。この酸性化は[[wikipedia:ja:ラット|ラット]]の[[wikipedia:ja:副腎髄質|副腎髄質]]由来の[[wikipedia:ja:褐色細胞腫|褐色細胞腫]]である[[wikipedia:PC12_cells|PC12]]細胞においては90分ほどで行われる。酸性化は、酵素による内容物のプロセシングや内容物の凝集に必要と考えられている<ref><pubmed>20074059</pubmed></ref>。
 同時に有芯小胞内腔の酸性化も行われる。ゴルジ体内腔のpHは6.5であるが、成熟した有芯小胞の内腔は5.0-6.0である。この酸性化は[[wikipedia:ja:ラット|ラット]]の[[wikipedia:ja:副腎髄質|副腎髄質]]由来の[[wikipedia:ja:褐色細胞腫|褐色細胞腫]]である[[wikipedia:PC12_cells|PC12]]細胞においては90分ほどで行われる。酸性化は、酵素による内容物のプロセシングや内容物の凝集に必要と考えられている<ref><pubmed>20074059</pubmed></ref>。
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== 有芯小胞の分泌 ==
== 有芯小胞の分泌 ==


[[Image:有芯小胞図.jpg|thumb|400px|'''図.様々な細胞種におけるエキソサイトーシスの時定数''']]
[[Image:有芯小胞図.jpg|thumb|400px|'''図 タイトルを御願いします'''<br>説明を御願いします]]


 有芯小胞は細胞膜近傍に運ばれ、細胞膜にドックした有芯小胞は、[[wikipedia:ja:アデノシン三リン酸|ATP]]依存的なプライミングという過程を経て、即時[[放出可能プール]](immediately releasable pool)へと移行する。その後、細胞内への[[カルシウム]]流入により放出可能プールは細胞膜と融合し、内容物を細胞外に放出する。プライミングやカルシウム濃度を関知する分子機構としては様々な候補分子が報告されているが、未だに議論が続いている。
 有芯小胞は細胞膜近傍に運ばれ、細胞膜にドックした有芯小胞は、[[wikipedia:ja:アデノシン三リン酸|ATP]]依存的なプライミングという過程を経て、即時[[放出可能プール]](immediately releasable pool)へと移行する。その後、細胞内への[[カルシウム]]流入により放出可能プールは細胞膜と融合し、内容物を細胞外に放出する。プライミングやカルシウム濃度を関知する分子機構としては様々な候補分子が報告されているが、未だに議論が続いている。


 [[シナプス小胞]](synaptic vesicle, SV)は[[カルシウムチャネル]]近傍に分布しているが、有芯小胞はカルシウムチャネルから数百nm離れたところに分布していることが知られている。そのため、シナプス小胞が分泌されるには100μM以上のカルシウム濃度上昇が必要だが、有芯小胞の分泌は10μM程度のカルシウム濃度上昇に応じて細胞膜と融合することが知られている<ref><pubmed>10856612</pubmed></ref>。また、caged-Ca<sup>2+</sup>を用いた実験によって、有芯小胞分泌の時定数が明らかになってきているが、シナプス小胞より遅く、細胞種ごとに分泌の速度が大きく異なることが分かっている(図)<ref><pubmed>10092049</pubmed></ref>。
 [[シナプス小胞]](synaptic vesicle, SV)は[[カルシウムチャネル]]近傍に分布しているが、有芯小胞はカルシウムチャネルから数百nm離れたところに分布していることが知られている。そのため、有芯小胞は比較的微量の細胞内カルシウム濃度上昇に応じて細胞膜と融合することが知られている<ref><pubmed>10856612</pubmed></ref>。また、caged-Ca<sup>2+</sup>を用いた実験によって、有芯小胞分泌の時定数が明らかになってきているが、細胞種ごとに分泌の速度が大きく異なることが分かっている(図)<ref><pubmed>10092049</pubmed></ref>。


== 参考文献 ==
== 参照文献 ==


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(執筆者:定方哲史 担当編集委員:柚崎通介)

2012年3月23日 (金) 14:41時点における版

英語名:dense-core vesicle (DCV)

 有芯小胞(dense-core vesicle)は直径50~200 nmほどの球状のオルガネラであり、ホルモン神経ペプチドなどを内包している。電子顕微鏡による観察では、電子密度の高い像を示すが、これは内容物であるホルモンやペプチドによると考えられている。副腎すい臓下垂体といったホルモンを産生する組織に多く見られる。


有芯小胞の成熟過程

 分泌細胞は数千の有芯小胞を持っているが、有芯小胞の半減期は数日である。一方、成熟化は早く、半数の有芯小胞は45分以内で成熟化することが分かっている。

 まず未成熟な有芯小胞がトランスゴルジネットワークで形成され、線維状アクチンネットワーク上をミオシンVa依存的に細胞膜へと運ばれる。成熟化の過程において有芯小胞は、シンタキシン6やシナプトタグミンIVなどとの融合のステップを経て、より大きな芯を形成するようになる。また、小胞内においては酵素によって内容物のプロセシングなどが行われる。未成熟な有芯小胞特異的なタンパク質は、成熟した有芯小胞になる過程でクラスリン依存的な膜再構成によって除かれる。

 同時に有芯小胞内腔の酸性化も行われる。ゴルジ体内腔のpHは6.5であるが、成熟した有芯小胞の内腔は5.0-6.0である。この酸性化はラット副腎髄質由来の褐色細胞腫であるPC12細胞においては90分ほどで行われる。酸性化は、酵素による内容物のプロセシングや内容物の凝集に必要と考えられている[1]

有芯小胞の分泌

図 タイトルを御願いします
説明を御願いします

 有芯小胞は細胞膜近傍に運ばれ、細胞膜にドックした有芯小胞は、ATP依存的なプライミングという過程を経て、即時放出可能プール(immediately releasable pool)へと移行する。その後、細胞内へのカルシウム流入により放出可能プールは細胞膜と融合し、内容物を細胞外に放出する。プライミングやカルシウム濃度を関知する分子機構としては様々な候補分子が報告されているが、未だに議論が続いている。

 シナプス小胞(synaptic vesicle, SV)はカルシウムチャネル近傍に分布しているが、有芯小胞はカルシウムチャネルから数百nm離れたところに分布していることが知られている。そのため、有芯小胞は比較的微量の細胞内カルシウム濃度上昇に応じて細胞膜と融合することが知られている[2]。また、caged-Ca2+を用いた実験によって、有芯小胞分泌の時定数が明らかになってきているが、細胞種ごとに分泌の速度が大きく異なることが分かっている(図)[3]

参照文献

  1. Kögel, T., Bittins, C.M., Rudolf, R., & Gerdes, H.H. (2010).
    Versatile roles for myosin Va in dense core vesicle biogenesis and function. Biochemical Society transactions, 38(Pt 1), 199-204. [PubMed:20074059] [WorldCat] [DOI]
  2. Mansvelder, H.D., & Kits, K.S. (2000).
    Calcium channels and the release of large dense core vesicles from neuroendocrine cells: spatial organization and functional coupling. Progress in neurobiology, 62(4), 427-41. [PubMed:10856612] [WorldCat]
  3. Kasai, H. (1999).
    Comparative biology of Ca2+-dependent exocytosis: implications of kinetic diversity for secretory function. Trends in neurosciences, 22(2), 88-93. [PubMed:10092049] [WorldCat] [DOI]


(執筆者:定方哲史 担当編集委員:柚崎通介)